元アズーリのD・バッジョがヴィアッリの死を「90年代のドーピングの影響」と指摘…「私自身も怖い」と当時の摂取物の調査を要求
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得点力の高いストライカーとしてクレモネーゼ、サンプドリア、ユベントス、チェルシーでプレーし、現役引退後はチェルシー、ワトフォードといったイングランドのクラブを率いた他、イタリア代表のアドバイザー、代表団長も務めたヴィアッリは、2017年にすい臓がんが発覚し、2020年4月に一度は完治したとされていたが、翌年12月に再発、以降はロンドンの病院で病との戦いを続けていたが、年明け早々に悲報が世界を駆けめぐった。
葬儀に出席したのは30人余りと、彼の愛する家族(両親、兄弟、キャスリン夫人、娘のソフィアさんとオリビアさん)や近しい親族、友人に限られたが、その中にはサンプドリア時代からの大親友である現イタリア代表監督のロベルト・マンチーニの他、同じく親友でユベントス、ナポリなどでプレーしたマッシモ・マウロ、イタリア・サッカー連盟のガブリエレ・グラビーナ会長らが含まれ、大切な人に最後の別れを告げた。
病に屈することなく、最後まで戦い続けたレジェンドの勇敢さには多くの人々が敬意を表し、その冥福を祈ったが、その中で、かつてユベントス、イタリア代表で共闘したことがあるディノ・バッジョが、ヴィアッリの死について「現役時代のドーピングが影響している疑いがある」と発言したことが、物議を醸しているという。
現在51歳で、現役時代は運動量豊富で多様なプレーをこなし、得点力も備えたMFとして、ユベントス、インテル、パルマ、ラツィオ、ブラックバーンなどでプレーし、代表では1994年アメリカ大会、98年フランス大会という2つのワールドカップで活躍した経歴を持つ“もうひとり”のバッジョは、『TV7』のインタビューで、「私が21歳の時、ユベントスでチームメイトになったが、ヴィアッリはいつも良い言葉をかけ、成長を手助けしてくれた」と、偉大な先輩の思い出を回想するとともに、以下のようにも語っている。
「彼はあまりにも早く、我々の元から去ってしまった。私は、彼が現役時代に摂取した物質を調査する必要があると思う。1990年代は、ドーピングは常に我々の周囲に存在したからだ。一部のサプリメントが、時間の経過とともに害を及ぼす可能性があるのかどうかを理解する必要がある。彼に起こったことは、他にもあまりに多くの選手に起こっており、私自身も怖い」 ユベントスは1998年にズデネク・ゼーマンの告発によって、組織ぐるみでドーピングを行なっていたことが明らかとなったが、当時のクラブのロッカールームのテーブルには、筋肉増強剤や運動能力を向上させる薬、そして様々なサプリメントなどが所狭しと並べられていたという証言もあるように、日常的に選手は「薬漬け」にされていたという。
「私は奇妙なものには手を出さず、普通のサプリメントを摂取していたが、その後、ドーピングの問題が明らかになり、ピッチの芝に使われている化学薬品などの悪影響などについても語られるようになった」として、かつての名MFは当時の多くの選手の健康が害されている可能性を指摘する。
これには、ラツィオ、パレルモ、ローマ、インテルといったクラブのディレクターを歴任してきたヴァルテル・サバティーニが、『La Presse』紙で「(バッジョの)疑念は正当なものだ。このようなことはかなり以前からあり、疑わしい選手の死は少なくない」とコメント。ただ、彼はこれをドーピングというよりは、薬物などの過剰摂取によるものと考えており、「サッカー界に不安や疑惑を与えるもの」だとしながらも、「ドーピングとヴィアッリの件は別のものであり、彼を調査の対象とすべきだとは考えていない」との見解を示した。
一方、バッジョとはパルマでチームメイトだったアルベルト・ディ・キアラ(中田英寿が在籍時のペルージャの広報部長)は、「ディノは私のとても親愛なる友人であり、発言に理解できる部分もあり、疑念は事実かもしれないが、仮説に根拠がない場合、その発言は良いことではない」と批判的に語っている(スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』より)。
対して、当時のストライカーだったアレッサンドロ・メッリ(中田とは1998-99シーズンにペルージャでチームメイト)は、「ディノは、実際に彼が目にしたことを語っているのだろう。彼自身がドーピングを行なっていなかったことを願っているし、当時選手が摂取した物質に対する調査はするべきだろう」と、こちらはかつての同僚の意見を尊重する姿勢を示した。
引退後の選手については、ドーピングの影響だけでなく、ヘディングの後遺症など、様々な形で健康を害されるケースが報告されており、これらは防止されなければならないものだが、今回のバッジョの主張はイタリア・サッカー界に良い変化をもたらすことになるだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
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