「なぜスリーを打とうとするんだ?」名手オラジュワンがエンビードに苦言。ヨキッチには「すごく効率的」と称賛<DUNKSHOOT>
オラジュワンは1984年のドラフトでマイケル・ジョーダンを抑え、1巡目全体1位でロケッツから指名された213cm・115kgのビッグマンはNBAで18シーズンをプレー。キャリア平均35.7分の出場で、21.8点、11.1リバウンド、2.5アシスト、1.7スティール、3.1ブロックにフィールドゴール成功率51.2%を残したナイジェリア出身のレジェンドは、94年にロケッツを初のNBAチャンピオンへ導き、翌年タイトルを獲得して2年連続でファイナルMVPに選出された。
最優秀守備選手賞に2度、シーズンMVP1度、オールスターとオールNBAチームに各12度、オールディフェンシブチームにも9度名を連ねており、レギュラーシーズンでNBA史上最多の3830ブロックという大記録も残してきた。
そんなオラジュワンの最も印象的なプレーと言えば、“ドリームシェイク”だ。持ち前のスピードとクイックネス、ボールハンドリングと絶妙なフェイクやスピンムーブなどを織り交ぜたプレーで相手ビッグマンを翻弄し、90年代のNBAで一際眩い光を放ってきた。
引退後もバスケットボール界に多大な影響を与えており、2009年にはコビー・ブライアント、11年にはレブロン・ジェームズへ自身のポストプレーを教えており、スーパースターたちを新たなレベルへと引き上げる手助けをしてきた。
オラジュワンの現役時と比較すると、現代のNBAでは明らかにポストプレーが激減しセンターの影響力も低下。ハンドチェックルールの廃止、さらには3ポイント全盛でポジションレスなバスケットボールが展開されており、スーパースターと呼べるビッグマンは数えるほどしかいない。
もっとも、過去2シーズンでは外国籍出身のセンターたちがシーズンMVPの投票数でトップ2を占めている。デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチ(セルビア出身)と、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのジョエル・エンビード(カメルーン出身)だ。
両選手はビッグマンながらいずれもオールラウンドなスキルを持ち、ゲームの中で多才な能力を発揮している。14日に『NBA.com』へ公開された最新版のMVP候補ランキングでも、ヨキッチがトップ、エンビードは5位と、今季もリーグ最高級の実力者として活躍を続けている。
記事のなかで、オラジュワンはアフリカ出身のエンビードについて「彼は様々なムーブを持っている」と評すも、「でもそれらすべてをうまく活用してるとは言い切れないね。なぜスリーを打とうとするんだ? 彼は毎晩アドバンテージがあるんだ。私だったら、それを使い尽くすだろうね」と、もっと支配力を発揮できると、今後に向けた期待を込めて苦言。
一方のヨキッチについてはこのように話していた。
「彼は自分のスタイルでプレーしている。真面目ではないと思うかもしれないが、ものすごく効率的だ」
「彼は強そうには見えないが、ポストでうまくポジション取りをしているように見える。そこでミスマッチになるんだと思う。それに彼は大柄な相手でも同じことをしてしまう。彼のショットやフェイクの数々は、(相手にとって)合わせることが非常に難しい。彼がフェイクしているか本当にショットを打とうとしているか、見分けがつかない。彼には数々のトリックがあるんだ!」
18日を終えた時点で、ヨキッチは平均25.1点、11.0リバウンド、9.9アシスト、1.4スティールにフィールドゴール成功率62.6%で、リーグトップの13度のトリプルダブルを達成。エンビードはリーグ2位の平均33.6点に9.8リバウンド、4.2アシスト、1.7ブロックと、いずれもリーグ有数の成績を記録。
さらにヨキッチの所属するナゲッツは32勝13敗(勝率71.1%)でウエスタン・カンファレンス1位、エンビードのシクサーズも28勝16敗(勝率63.6%)でイースタン・カンファレンス3位と好成績を残している。
現役時代オラジュワンは、ファイナルでパトリック・ユーイング(ニューヨーク・ニックス)、シャキール・オニール(オーランド・マジック)とリーグ最高峰のビッグマンと対戦した。
当時と現在ではセンターのプレースタイルも大きく変わったが、今季はファイナルの舞台でヨキッチとエンビードという本格派ビッグマンのマッチアップが見られるかもしれない。
文●秋山裕之(フリーライター)