F1での3年目となるシーズンを前に準備に余念がないアルファタウリの角田裕毅。昨季は車の性能や信頼性の問題もあって成績はデビューシーズンよりも落としたが、随所でドライバーとしての成長は窺わせ、今季に期待を持たせた。

 とはいえ、やはり結果が全ての世界では、昨季のパフォーマンスは各国のメディアに懐疑的な見方を強いり、やや厳しい展望を示すところも少なくない。カート歴の長いニック・デ・フリースという実績十分な年上のルーキーとの競争については予想が難しいものの、レッドブルのヘルムート・マルコ顧問が「デ・フリースはリーダーに相応しい」と語ったために、日本人ドライバーの「不利」という人々の見方に繋がってしまっている感は否めない(アルファタウリのフランス・トスト代表はこれを否定しているが)。

 英国のモータースポーツ専門サイト『THE RACE』は、「ピエール・ガスリーのアルピーヌへの移籍は、2023年のツノダの進歩を判断するのがさらに難しくなることを意味する」と主張。昨季まではガスリーというF1での経験も実績もあるドライバーと組むことで、その対戦成績が角田の成長ぶりをジャッジするうえで、ルーキー相手には困難であるという。

 同メディアに寄稿するF1ジャーナリストのスコット・ミッチェル=マルム氏は、デ・フリースを迎えたのは角田にとって“負け戦”に等しいと指摘。「ツノダがデ・フリースを倒したとしても、誰もさほど気にしないだろう。F1に昇格できないことが気にもされなかった二十代後半のルーキーを倒したとして、彼の印象が大きく変わることはない」と語り、以下のように続けている。
 「逆にもしもツノダが負ければ、大きな非難に晒されるだろう。現職のドライバーとして、“初心者”に敗れることは、彼にとって最悪の事態になる。彼は今季、チームメイトを圧倒しなければならない。予選では、0.3秒とは言わないが、平均0.1秒か0.2秒のアドバンテージを示し、明らかに優位に立つ必要がある」

 一方、英国のスポーツ専門サイト『sportskeeda』は、「ドライバーを変更する必要がある3つのチーム」と題した記事において、アストンマーティン(ランス・ストロール)、アルファロメオ(ヴァルテリ・ボッタス&ジョウ・グァンユ)とともに、アルファタウリの名前も挙げた。

「ルーキーイヤーに聞かれた高い評価がぱったりと止んだ」角田と「せいぜい堅実なだけ」のデ・フリースとのコンビは、同メディアから見れば、「F1において最も刺激に欠けるコンビ」で、「何か特別なことを見越した編成でなく、誰もが待望したものでもない」と、非常に厳しい評価が記されている。 また、アルファタウリがレッドブルの“ジュニアチーム”であるという見地から、同メディアは「ツノダはいつの日か、レッドブルのドライバーになるのだろうか? とても、それはありそうにない。同様にデ・フリースも、レッドブルが自分たちの車に乗せたいと思えるドライバーであるとは言い難い」と2人のドライバーに現時点で“失格”の烙印を押し、「レッドブルがなすべきは、十分に強力なドライバーを見つけることだ」と記事を締めている。

 あまりに辛辣な指摘であり、それが100%正当なものとは言い難い。だが、同メディアの「ツノダもデ・フリースも、まだ信頼を示していない」との記述は完全な間違いとは言えない。そして、その状況を変えるのは今季ということになる。

 角田に関して言えば、昨季はポテンシャルの低い「AT03」から最大限に力を引き出すことはできており、今季はこれに加えて一貫性、感情のコントロールなどの面での成長が求められる。
  デ・フリースとの競争については、昨季のようにチームが下位を争うことになれば、『THE RACE』が指摘するような不利な立場に置かれるかもしれないが、チームに多くのポイントをもたらすことができれば、状況は変わるだろう。その意味では、角田自身の成長だけでなく、アルファタウリの2023年型車「AT04」の性能は、全ての命運の鍵を握ると思われる。

 トスト代表はF1の予算制限が今季は良い方向に作用するとして、昨季よりもアルファタウリが良いシーズンを迎えられると予想するが、果たして。

 なお、英国のモータースポーツ専門サイト『MOTORSPORT WEEK』は、今季、レッドブルのジュニアチームから、アイザック・ハジャル、ゼイン・マロニー、エンツォ・フィッティパルディ、デニス・ハウガー、岩佐歩夢、ジャック・クロフォードの6人がF2に参戦することを伝え、「彼らは、ツノダ、デ・フリースからF1のシートを奪って輝けるためのチャンスを手に入れようとしている」と綴っている。下からの突き上げもあるなか、角田がいかにプレッシャーを克服するか、その戦いぶりには要注目である。

構成●THE DIGEST編集部

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