森友哉と近藤健介の“FA”が評価のカギに。3連覇を目指すオリックスは山本由伸の流出に備えた動きを高評価【パ6球団補強採点】
今オフのFA市場における目玉となった森(左)と近藤(右)。この球界屈指の好打者がそれぞれパ・リーグ内で動いたために、各球団の補強採点にも影響が出た。(C)THE DIGEST写真部
―――◆―――◆―――
オリックス:70点(即戦力:30点・将来性:40点)
やはり吉田正尚のメジャー移籍は大きな痛手だが、フリーエージェント(FA)で西武から森友哉を獲得でき、主砲離脱のマイナス分を補えた印象だ。1月20日時点で新外国人選手獲得の情報が出てこないのは気がかりだが、ドラフトでも大学ナンバーワンサウスポーの曽谷龍平と、大学屈指の外野手である杉澤龍を獲得しており、総合値は30点とした。
将来性はドラフト2位で大砲候補となる内藤鵬獲得は大きい。中日も3位で狙っていたという報道があったが、スケールを考えれば、2位という順位に全く違和感はない。また支配下、育成含めて将来性豊かな投手を多く指名しており、近い将来に可能性がある山本由伸のメジャー移籍にも備えている印象を受けた。
ソフトバンク:80点(即戦力:45点・将来性:35点)
このオフの主役とも言える大型補強を見せたソフトバンク。FAで嶺井博希と近藤健介、外国人では日本で実績のあるロベルト・オスナとジョー・ガンケル、そしてアメリカ帰りの有原航平と次々とビッグネームを獲得してファンを驚かせた。それだけ優勝への本気度が伝わってくるが、満点としなかったのはエースの千賀滉大の抜けた点を考慮したからだ。メジャー通算防御率7.57と精彩を欠いた有原の調子が戻らないようであれば、その穴を埋めるのは簡単ではないだろう。
ドラフトでは1位のイヒネ・イツアを筆頭に将来性を考えた指名に振り切った印象を受ける。ただ、ある程度の完成度を備えているのは2位の大津亮介くらいで、全体的に未完の大器が多い印象は否めない。育成への自身の表れとも受け取れるが、ここ数年なかなか世代交代が進まない実情を見ると不安も大きく、35点とした。西武:50点(即戦力:20点・将来性:30点)
大きな痛手はFAでオリックスへ移籍した森友哉だ。流出に備えて一昨年のドラフトで古賀悠斗を獲得しているが、攻撃面でのマイナス要素は計り知れない。人的補償で獲得した張奕、現役ドラフトで獲得した陽川尚将、ドラフト1位ルーキーの蛭間拓哉など楽しみな素材はいるが、トータルで考えれば、やはり低評価とせざるを得ない。
将来性という側面で見ると、古川雄大、野田海人、山田陽翔といった高校生をドラフトで獲得したのは興味深い。とくに重要になりそうなのが2位の古川。甲子園や九州大会といった大きな大会の出場経験はなく、確実性には課題が残るものの、長打力と高い運動能力が魅力の大型外野手で、狙っている球団は非常に多かったと言われている。時間はかかるタイプだが、今のチームに不足している大型野手だけに大きく育ててもらいたいところだ。
楽天:60点(即戦力:35点・将来性25点)
ここ数年のような大型補強はなかったものの、トレードで中日から阿部寿樹を獲得。浅村栄斗以外の中軸は左打者が多いだけに、パンチ力がありセカンドとサードを守れる阿部はプラスになりそうだ。またドラフト2位で獲得した小孫竜二の存在も大きい。コンスタントに150キロを超えるパワーピッチャーで、短いイニングなら球威で圧倒できる。起用法はまだ分からないが、リリーフであれば松井裕樹につなぐセットアッパーとして期待できそうだ。
将来性は高校生が育成2位の古賀康誠だけということもあって低い評価に。1位指名の荘司康誠はスケールが大きく、大学卒でも即戦力というより数年後のエースとしての期待がかかるが、全体的に早く使える投手の補強に終始したという印象は否めない。一昨年のドラフトでは高校生の野手を上位で指名しているが、二軍は投手も野手も主力となっている若手が少ないだけに、もう少し将来性にも目を向けたいところだ。
ロッテ:65点(即戦力:35点・将来性:30点)
シーズン終盤に抑えを担ったオスナの退団は痛いが、外国人選手では、巨人を退団していたC.C.メルセデス、グレゴリー・ポランコを獲得。ともに日本での実績があり、前者は先発ローテーションの一角、後者は打線の中軸としての活躍に期待がかかる。
ドラフトでも1位で菊地吏玖、2位で友杉篤輝と大学生の実力者2人を獲得。菊地は先発もリリーフもこなせる万能タイプで、友杉の守備と走塁はすでに一軍クラスと言える。派手さこそないものの、トータルで上積みはできた印象だ。
将来性に関しては野手の補強が少し不足している印象だが、一方で投手は3位の田中晴也と育成の吉川悠斗、白濱快起とスケールのある高校生を獲得。また4位の高野脩汰も社会人出身だが、即戦力というよりも数年後の戦力という投手であり、投手陣は良い補強ができたと言えるだろう。
日本ハム:45点(即戦力:25点・将来性20点)
大きなマイナスはやはりFAでソフトバンクに移籍した近藤健介だ。伸びてきている若手野手は多く、2年目を迎える新庄剛志監督の意向もあってドラフトでは即戦力重視の指名に振り切ったが、確実に4割以上の出塁率をマークできる選手の穴は簡単に埋まるものではない。
投手では2位で金村尚真を、野手では昨年メジャーでもプレーした加藤豪将を3位、そして「二刀流」の活躍が見込める矢澤宏太を1位で引き抜いたが、1年目からレギュラークラスになり得るという期待はかけづらく、総合的な即戦力の評価は25点とした。
そして、ドラフトで即戦力を重視したために影響が出ているのが将来性だ。支配下で指名した高校生は安西叶翔だけ。昨年の二軍の成績を見ても有望な若手は非常に少ない。一昨年のドラフトで指名した達孝太、有薗直樹の成長は興味深いが、今年のドラフトではもう少し将来性に目を向ける必要がありそうだ。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
【関連記事】やはり大谷翔平の流出は不可避? 米メディア「エンジェルスはプレッシャーを抱えている」と見解。好結果が求められる新シーズンを展望
【関連記事】侍ジャパンの4番は誰が適任? 最強打者は何番を打つべき? 強打者揃いの日本が世界一を狙うには――【WBC打順予想】
【関連記事】「とても光栄」ヌートバーが地元紙にWBCへの思いを激白!大谷翔平通訳からの侍ジャパン打診の秘話明かす「興味はあるか」