プロ注目の左腕・前田を擁する大阪桐蔭、夏春連覇を目指す仙台育英、“親子V”を目指す沖縄尚学…群雄割拠のセンバツを制するのは?<SLUGGER>
昨秋の明治神宮大会決勝は、2年連続で同カードとなった。結果は大阪桐蔭が大会連覇を果たし、準優勝は広陵。今センバツでもこの2校が中心となりそうだ。
大阪桐蔭は昨年のセンバツ優勝にも貢献した148キロ左腕・前田悠伍が主将となり、エースとしてもチームを引っ張る。昨年秋の近畿大会は3試合で防御率1.67、神宮大会も3試合で2.14。前年より数字を落としたとはいえ、各チームが前田対策を講じるなかで好投し、勝ち切った勝負強さは抜きんでている。
左腕独特の牽制のうまさも光り、今年のドラフト1位候補としても注目を集めそうだ。控えは昨春センバツを経験した右腕・南恒誠を筆頭に、近畿大会で登板した5投手すべてが140キロ超え。一冬を越えての成長を考えれば、末恐ろしい投手陣と言える。あとは前田抜きでも勝てる投球術さえ備われば、他校が打ち崩すのは容易ではないだろう。
野手で昨年夏の甲子園を経験したのは二塁手の村本勇海だけだが、智弁和歌山で4番を打った徳丸天晴(現NTT西日本)の弟・徳丸快晴や、スリランカ人の両親を持つラマル・ギービン・ラタナヤケと、大砲の期待を受ける1年生が神宮大会で全国制覇を経験した。昨秋の段階では前田が際立っていたが、春になって総合力を兼ね備えたチームとなり、史上初となる「2度目のセンバツ連覇」を目指す。
広陵は新チーム結成から神宮大会準決勝まで、練習試合を含めて負け知らず。決勝の大阪桐蔭戦が初黒星だった。今年のドラフトですでに上位候補と名高い“広陵のボンズ”こと真鍋慧は高校通算49本塁打。中国大会は打率.250と苦しんだが、神宮では3試合で.455、2本塁打と復調し、「良い感触だった」と手応えを口にした。
この他、中国大会では田上夏衣、谷本颯太の1・2番コンビが打率5割を超え、3番・真鍋、4番・小林隼翔へとつなぐ。投手陣は怪我で中国大会の登板が少なかった1年生右腕・髙尾響が神宮大会では3試合で防御率0.75と復調し、左腕・倉重聡とのダブルエースを形成する。2回戦で敗れた昨年のセンバツや、県大会3回戦で姿を消した夏の悔しさを晴らし、日本一を目指す。
2強を追うのは、こちらも神宮大会で熱戦を繰り広げた仙台育英と沖縄尚学だ。
昨年夏の甲子園で初優勝を果たした仙台育英は、胴上げ投手となった右腕・高橋煌稀をはじめ、右の湯田統真、左の仁田陽翔と、夏のマウンドを経験した投手が3人残っているのが強み。左の田中優飛も140キロ台中盤のストレートを誇り、冬を越えて投手陣に加わる選手も多そうだ。展開次第だが、ローテーションを組んで決勝から逆算する投手起用が春も見られるかもしれない。
野手も1番・センターの橋本航河、2番・ショートの山田脩也、4番・ライトの齊藤陽、5番・キャッチャーの尾形樹人と中軸がそのまま残り、1年生二塁手の湯浅桜翼が3番に台頭するなど、新戦力も育っている。「東北大会までは守備優先でメンバーを決めた」と須江航監督は話しており、冬の競争で秋とはガラッとメンバーが変わってくることが予想される。史上5校目の夏春連覇を狙うチームとして、今春も注目を集めそうだ。
9年ぶりに九州大会を制した沖縄尚学は、145キロ右腕の東恩納蒼が大黒柱。神宮大会の仙台育英戦では9回に5点を奪われ逆転サヨナラ負けを喫したが、8回までは無失点と好投しており、収穫も多い秋だったと言えるだろう。控えの照屋希空の父は、比嘉公也監督とともに99年のセンバツで優勝した時、マウンドに立っていた正悟さん。親子でセンバツ優勝を目指すという話題性にも注目だ。
打者では1番センターの知花慎之助が九州大会4試合で打率.714と大暴れ。神宮でも仙台育英の投手陣を相手に3打数2安打2四死球と打線を牽引し、高校日本代表関係者からも絶賛の声が聞かれた。東浜巨(現ソフトバンク)がエースだった08年以来、15年ぶりの春優勝を狙う。
この他にも、19年の平成最後のセンバツで優勝高となった東邦も、最速149キロを誇る本格派・宮國凌空を擁している。神宮大会では大阪桐蔭に完敗したが、巻き返すだけの力は持っている。石川瑛貴主将の兄は19年優勝時の4番エースでキャプテンだった昂弥(現中日)で、兄弟で紫紺の優勝旗を手にできるだろうか。
関東ナンバーワンと評判の右腕・平野大地を擁する専大松戸にも注目したい。最速は151キロを記録し、ドラフト上位候補に名が挙がる。秋は県大会で肋骨を痛めた影響が心配されたが、関東大会では力をセーブした投球術で準優勝へと導いた。万全の状態で臨めれば、全国の強打者相手にどんなピッチングを披露するかが楽しみだ。
高校ナンバーワン捕手・堀柊那を要するのが報徳学園。二塁送球1.8秒台前半を記録する強肩が武器で、近畿大会準々決勝で履正社に1つだけ盗塁を許した以外はすべて阻止している。松川虎生(ロッテ)、松尾汐恩(DeNA)と、過去2年続いた”高校生捕手ドラ1”に、堀も名を連ねることができるかに注目したい。
組み合わせ抽選会は3月10日、大会は同18日から14日間にわたって開催される。果たして今年はどんな熱戦が繰り広げられるのか、今から楽しみだ。
文●松倉雄太(スポーツライター)
【著者プロフィール】
まつくら・ゆうた/1980年12月5日生まれ。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『報知高校野球』などに寄稿している。ABCテレビ『速報甲子園への道』、『熱闘甲子園』、スカイA『明治神宮大会中継』などのリサーチャーとしても活動中。