プロ野球のキャンプも後半に差し掛かり、実戦形式の練習や練習試合の話題も多い時期となってきた。そのなかでも注目度が高いのは、やはりドラフト1位ルーキーである。昨年は大勢(巨人)が一躍スターダムへと駆け上がったが、逆に2年目以降が勝負となる選手も少なくない。

 そこで今年のドラフト1位ルーキー12人について、それぞれ1年目の目安となる数字はどの程度かを、アマチュア時代のプレーぶりから考えてみたいと思う。今回はセ・リーグの6球団の新人たちを見ていく。

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<ヤクルト>
●吉村貢司郎(投手/東芝)
目指すべき目標=先発ローテーション入り。一軍で5〜8勝

 即戦力として期待がかかる本格派右腕。昨年の春先は圧倒的な投球を見せており、3月のJABA東京スポニチ大会でもチームを優勝に導いている。夏場にやや調子を落としたが、10月に行なわれたヤクルトとの練習試合、その後の日本選手権ではしっかり立て直したところに、ポテンシャルの高さが見てとれた。

 オーソドックスな投球スタイルのため、ストレートが走らないと長打を浴びそうな心配はあるが、変化球と制球力も高レベルで試合を作る能力は高い。2桁とまではいかなくても、先発としてある程度の数字は期待したい。
 <DeNA>
●松尾汐恩(捕手/大阪桐蔭高)
目指すべき目標=二軍で80試合、打率.250、10本塁打

 松川虎生(ロッテ)が1年目から一軍で戦力となっただけに期待も大きいが、チーム事情を考えるとまずは二軍のレギュラー定着が現実的な目標となる。ベンチマークとしたいのが内山壮真(ヤクルト)の1年目の二軍成績(74試合、打率.231、8本塁打)だ。

 捕手だけに、まずは守備が重要にはなるが、高い評価でプロ入りしたのはやはり打力があってこそ。特に飛ばすコツを心得ているのは大きな魅力で、甲子園でも度々見事なホームランを放っているだけに、「打てる捕手」を目指して二軍でじっくりと成長してもらいたい。

<阪神>
●森下翔太(外野手/中央大)
目指すべき目標=二軍で10本塁打以上。後半戦を目途に一軍でも本塁打を

 ヘッドスピードととらえた時の打球の勢いは今年のルーキーの中でも1、2を争う存在だ。ただ、一方で4年間のリーグ戦通算打率は.240と確実性には課題が残る。チームの外野陣と大学でのプレーを考えると、即レギュラーというのはやや考えにくい。

 課題である確実性の向上はもちろんだが、期待したいのはやはり長打力。二軍では最低でも2桁本塁打は期待したい。また後半戦には一軍昇格を果たして、プロ初ホームランを記録できれば、2年目以降に向けた大きな弾みとなるだろう。<巨人>
●浅野翔吾(外野手/高松商)
目指すべき目標=二軍で80試合、300打席、打率.260、10本塁打

 ドラフト1位の抽選を外し続けてきたチームにとって待望の大物野手ということで期待も大きいが、キャンプで二軍スタートとなった事実からも分かるように、まずはプロのレベルに慣れるのが先決と言える。

 期待値的には、同じ高卒野手である松尾と同程度が妥当だが、捕手に比べると守備の負担は少ないと考え、打率は少し上に設定した。またこだわりたいのは打席数だ。同じチームの先輩の1年目を見ると岡本和真が257打席、秋広優人が302打席となっているだけに、浅野も300打席を目指してもらいたい。

<広島>
●斉藤優汰(投手/苫小牧中央高)
目指すべき目標=二軍で10試合、50イニング登板

 今年のドラフト1位ルーキーで唯一の高校生投手である斉藤。高校時代に大舞台での経験はなく、まずは体力作りからのスタートとなるが、最終学年での成長は目覚ましいものがあり、二軍キャンプでの投球練習でも首脳陣から高い評価を得ているのはプラス材料だ。

 昨年は小園健太(DeNA)が慎重に起用されたが、ある程度、実戦での登板を重ねながらレベルアップを目指すのが、彼の場合は妥当ではないだろうか。森木大智(阪神)が、昨年に二軍で14試合、53回を投げているだけに、斉藤もそれに近い数字が基準となりそうだ。
 <中日>
●仲地礼亜(投手/沖縄大)
目指すべき目標=二軍で先発として5勝。後半に一軍デビュー

 大学卒の投手だが、全国での投球は3年春の全日本大学野球選手権だけで、高いレベルの打者との対戦経験が少ないことを考えても、本格的なデビューは2年目以降と考えておくのが妥当だろう。それでも初の対外試合登板となった2月15日の沖縄電力との練習試合では見事な投球を見せており、ポテンシャルの高さを示している。

 まずは二軍でしっかりと先発として結果を残し、オールスター明けから後半戦にかけて、来季以降を見据えて何試合か先発としてテスト登板するという流れに持っていきたい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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