“MVP予想3番手”のアデトクンボがタイトルについて持論「ベストプレーヤーがチームで最も価値ある選手ではないこともある」<DUNKSHOOT>
それでも、この日を終えてバックスは50勝20敗(勝率71.4%)でイーストならびにリーグトップの座をキープしている。
各チームが82試合のうち70試合前後を終えた現在、シーズンのMVP候補は3選手に絞られたと見ていい。10日に『NBA.com』へ公開されたランキングでは1位がナゲッツのニコラ・ヨキッチ、2位がフィラデルフィア・セブンティシクサーズのジョエル・エンビード、3位がバックスのヤニス・アデトクンボとなっている。
今季62試合の出場で平均24.8点、11.9リバウンド、9.9アシストにフィールドゴール成功率63.3%をマークしているヨキッチは、過去2年連続でMVPを獲得。現役最高級の万能センターは平均トリプルダブル級の成績でチームを牽引しており、NBA史上4人目となる3年連続MVPの可能性も高まっている。
その対抗馬の筆頭がエンビード。カメルーン出身のビッグマンは昨季に外国籍選手として初の得点王となり、今季もリーグトップの平均33.5点に10.2リバウンド、4.1アシスト、1.11スティール、1.69ブロック、フィールドゴール成功率54.1%と圧巻の数字を残し、チームも46勝22敗(勝率67.6%)でイースト3位の好位置にいる。
一方、2019、20年に2年連続でMVPを手にしたアデトクンボも見事な活躍を続けている。キャリア10年目の今季、自己最多の平均31.4点に11.9リバウンド、5.5アシスト、フィールドゴール成功率54.2%をあげ、リーグベストの戦績を誇るバックスを牽引している。
そんななか、アデトクンボは16日に『The Athletic』へ公開された記事のなかで、自身とヨキッチ、エンビードがトップ3候補にいることを把握した上で“MVPを勝ち取るための基準”について持論を展開した。
「俺は信じているし、分かっているよ。俺たちが(MVPレースを)支配しているということをね。ではMVPとは何なのか。最も点を取った男か? 最も効率的な男なのか? それとも最も支配的な男になるのか? あるいは最も価値がある男なのか?
ベストプレーヤーがそのチームにおける最も価値のある選手ではないこともある。例えば、ブルック(ロペス)は俺たちのチームで価値のある選手なんだ。でも(MVPの基準だと)そうはならない。これは選手自身ではコントロールできない。自分にできるのは、試合へ向けてどのようにして準備し、試合に臨んでいくかなんだ」 MVPはオールスターのようなファン投票や選手投票はなく、メディアと放送関係者による投票で決定する。例年、選手のパフォーマンスはもちろん、所属チームの戦績も重視されるが、過去にMVPを受賞した経験のある選手は、そのシーズンに残した個人成績が基準になるため、連続で選ばれるためには自然とハードルも高くなる。
アデトクンボは初めてMVPに選ばれた2019年以降、4シーズン連続でオールNBAとオールディフェンシブの1stチームに名を連ねており、攻守両面に秀でたベストプレーヤーと評されてきた。
自らを「最も負けず嫌いな男」と語る28歳は、ベストプレーヤーについても持論を述べている。
「トレーニングキャンプから何度も言ってきたことだけど、ベストプレーヤーというのは自分のチームを偉大にすることができる選手なんだ。俺は自分のチームを偉大なチームへし続けていきたい」
そのアデトクンボ率いるバックスは、今季一番乗りで50勝に到達し、リーグ最速でプレーオフ進出を決めている。一昨季に頂点に立ったチームには、アデトクンボとロペスに加え、ドリュー・ホリデーにクリス・ミドルトン、ボビー・ポーティス、パット・カナトンといった長年一緒にプレーしてきた好選手が揃っている。
さらに今季はジョー・イングルズ、ジェイ・クラウダー、ゴラン・ドラギッチ、マイヤーズ・レナードといったベテラン陣が新たに加入。優勝シーズンをも上回る豪華戦力が完成した。
アデトクンボとバックスにとって、4月15日からスタートするプレーオフの目標はもちろん覇権奪回だ。
「(優勝は)人生で最高の気分だった。もちろん、またあの気分を味わいたい。チームメイトたちと成し遂げたいんだ。このチームを最後まで勝たせたい。そして夏の間、自分は世界のベストプレーヤーなんだという気持ちを味わいたいね」
文●秋山裕之(フリーライター)