現地時間5月3日に行なわれたDFBポカールの準決勝で、フランクフルトは3-2でシュツットガルトを3-2で下し、5シーズンぶりの9回目の決勝進出を果たした。

 敵地での一戦、フランクフルトは19分にGKとポストのわずかな隙間を撃ち抜かれて先制を許したが、51分にランダル・コロ・ミュアニの折り返しをエバン・エヌディカが合わせて追いつくと、その4分後には長谷部誠からのパスを受けた鎌田大地がドリブルで突き進み、カットインからタイミングとコースの良いグラウンダーのシュートでニアを破って逆転。77分にコロ・ミュアニのPKで加点したアウェーチームは、83分に1点差に迫られるも、リードを守り抜き、RBライプツィヒが待つ6月5の決勝に駒を進めた。

【動画】長谷部誠を起点に鎌田大地が二人をかわして決勝弾! この試合では、フランクフルトは長谷部、鎌田、シュツットガルトが伊藤洋輝、遠藤航という日本人4選手がスタメンに名を連ねたが(後者では原口元気がベンチ入りも出番なし)、その中で最も目立った活躍を披露したのが鎌田だ。今年2月7日のポカール3回戦ダルムシュタット戦(4-2)の決勝点以来となる公式戦でのゴールを決め、さらにカウンターからのドリブルでコロ・ミュアニに丁寧なラストパスを通して相手GKのファウル(=PK)を誘発するなど、結果に直接的に影響を与えるプレーを披露してみせた。

 試合後、自身のSNSでゴールと勝利の喜びを示した日本代表MFは、今年に入って精彩を欠く試合が多かったことについて、現地メディアから今季限りの退団が決まったことで「心ここにあらず」の状態にあると批判をされたことに反論。「ジャーナリストは、僕がここにいないと言ったが、僕は間違いなくシーズンを通して、フランクフルトのために全力を尽くしている」と投稿し、「新たな歴史を創ろう」とファンに訴えかけた。

 また彼は、インタビューで「長い間、ブンデスリーガではゴールを決めていませんが、この重要な試合でクラブにとって重要なゴールを決められたのは、何よりもハードワークの賜物です。クラブにとっても、僕にとっても、全ては日々のトレーニングから始まっており、これを続けなければなりません」(クラブ公式サイトより)と語っている。

 これに対し、オリバー・グラスナー監督は「鎌田とエヌディカは、気持ちがチームから離れていると批判されてきたが、今日は彼らが1-1、2-1にするゴールを決めた。誰もが目にしたように、このチームは素晴らしい。常に全てが上手くいくわけではないが、誰もが最初から最後の1秒までアイントラハトのために全てを捧げている。そうでなければ、2年間で2度のファイナル(昨季はヨーロッパリーグ優勝)に進出するのは不可能だ」と、自チームの殊勲者たちを称賛した。
  DFB(ドイツ・サッカー連盟)は鎌田を「マン・オブ・ザ・マッチ(MOM)」に選定し、SNSで「ヒーロー」「今季、ポカールでの自身4点目のゴールを、これ以上ないタイミングで決めた」「アイントラハトからの速射砲による2点目。鎌田はボックスの端から一か八かのシュートを放ち、逆転に成功した」などと賛辞。クラブはMOM選定をSNSで伝え、「文句なし」と綴っている。
  現地メディアの報道では、日刊紙『BILD』が「ダイチが試合をひっくり返した! 中盤でボールを受けた日本人は、寄せてきたヴァルデマール・アントンに対して自分自身を主張(競り勝った)。ペースを上げてからカットインし、2人の相手選手をかわして引き金を引くと、18メートルの距離から右足からのシュートはニアのポストをヒットしながらゴールへ」と、逆転のゴールを報じた。

 一方、スポーツ紙『Kicker』は「コロ・ミュアニ、エヌディカ、鎌田がフランクフルトを決勝に導く」と綴り、MFジブリル・ソウが鎌田とエヌディカについて「多くのことを成し遂げた」と称賛したことを紹介。採点ではコロ・ミュアニとともに「2.0」(1〜6で低いほど良い)の最高評価を下している。

 フランクフルトの地元紙『Frankfurter Rundschau』は、「この日本人はベストプレーヤー」と絶賛し、個別評価では「前半は何がなんだか分からないという感じでピッチを歩き回っていたが、その後、2度の爆発を見せた。2-1とするゴールはダルムシュタット戦以来、2023年に入ってわずか2得点目のもの。そして(3-1の場面では)、ペナルティエリアの手前でコロ・ミュアニにクロスパスを供給。このカップ戦はダイチが輝く場所なのか? いずれにせよ、彼はこの試合の勝者のようなものだ」と、ポジティブに評した。

 そして、ヘッセン州の日刊紙『Hessenschau』は、このところ鳴りを潜めていた鎌田が活躍したことで、「問題児から勝者へ」と表現し、「日本人選手は思い切って左サイドから中央に移って重要なゴールを決めると、交代選手を含む全選手が彼の元に駆け付けた」「続いて、(カウンターから)鎌田は全力疾走したが、彼はコロ・ミュアニに対して賢いプレーを見せ、思慮深くパスを送った」「日本人はこの試合の勝者になった」と綴っている。

 なお、この試合では長谷部が39歳と105日でポカールでの(鎌田に対する)アシストを記録。これは2010年にオリバー・ノイビルが記録した37歳104日を大幅に更新するものであり、『Frankfurter Rundschau』紙はこの大ベテランについても「ベストのひとり」に挙げ、前半は身体能力で上回るシュツットガルトのFWセル・ギラシーに苦労するも、「後半はいつも通りに守備の支配者となった」と評した。

構成●THE DIGEST編集部
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