5月7日、春の3歳マイル王を決める第28回NHKマイルカップ(GⅠ、東京・芝1600m)が行なわれ、単勝9番人気のシャンパンカラー(牡3歳/美浦・田中剛厩舎)が優勝。8番人気のウンブライル(牝3歳/美浦・木村哲也厩舎)が入り、3番人気のオオバンブルマイ(牡3歳/栗東・吉村圭司厩舎)が3着に入線。3連単は26万760円の好配当となった。

 一方、1番人気のカルロヴェローチェ(牡3歳/栗東・須貝尚介厩舎)は5着、2番人気のエエヤン(牡3歳/美浦・伊藤大士厩舎)は直線で伸びあぐねて9着に敗れた。

 日曜に日付が替わる頃に降り出した雨はレースまで止むことはなく、断続的に強弱を繰り返した。関係者やファンも気を揉んだだろうが、幸いにして雨量じたいはさほど多くはなかった。そのため、第9レースまでは「良」での施行となり、第10レースになってようやく「稍重」に変更。メインレースもそのまま「稍重」にとどまった。
  ただでさえ絶対的な存在がいない今年は人気が分散したが、それに道悪という要素も加わったため、さらに予想が難解となり、レース史上で前例がないほど人気は割れに割れた。

 単勝1番人気は「重」で行なわれたファルコンステークス(GⅢ)で2着に食い込んだカルロヴェローチェで、オッズは5.7倍。2番人気のエエヤンは5.8倍。以下、オオバンブルマイが6.1倍、ドルチェモア(牡3歳/栗東・須貝尚介厩舎)が7.6倍、モリアーナ(牝3歳/美浦・武藤善則厩舎)が8.0倍、ダノンタッチダウン(牡3歳/栗東・安田隆行厩舎)が9.5倍と、オッズ10倍以下の馬たちが僅差でせめぎ合っているような状況だった。

 その様相を反映したレースは、最後の直線で先団と後方待機の馬がガラリと入れ替わる激戦となった。ゲートが開くと1番枠から飛び出したフロムダスク(牡3歳/栗東・森秀行厩舎)が先手を取り、オールパルフェ(牡3歳/美浦・和田雄二厩舎)がそれに競りかけた。ドルチェモアは先団を追走し、エエヤン、ダノンタッチダウン、カルトヴェローチェは中団をキープ。一方、オオバンブルマイなどは後方からレースを進めた。 傍目にも流れが速いことは分かったが、実際1000mの通過ラップは58秒4と、稍重の馬場状態を考えればかなりのハイペースで進んでいった。そして、後方の馬たちもポジションを押し上げながら、府中の長い直線を迎える。

 逃げ・先行馬が苦しむところへオオバンブルマイが馬群を抜け出したが、そこへ9番人気のシャンパンカラーが襲い掛かって先頭に躍り出る。だが、それを許すまじと大外から猛追してきたのが8番人気のウンブライル。ゴール前は2頭の激しい叩き合いとなったが、シャンパンカラーが猛追したウンブライルをアタマ差抑えて勝利の凱歌を上げた。

 3番人気のオオバンブルマイは3着に粘ったものの、他の人気馬は総崩れ。カルロヴェローチェが5着、エエヤンが9着、ドルチェモアは12着と、中団より前でレースを進めてハイペースに巻き込まれた馬たちは、いずれも直線で伸び脚を欠いて敗れ去った。
  シャンパンカラーは、4月の桜花賞(GⅠ)を制したリバティアイランドと同じく、父ドゥラメンテ産駒。このほかにもタイトルホルダー、スターズオンアース、ドゥラエレーデと、こうして続けざまにGⅠ馬を輩出しただけに、ドゥラメンテの急死(2021年8月31日)が余計に惜しまれる。

 休養明けのニュージーランドトロフィー(GⅡ)を3着し、ひと叩きされたことで調子を上げていたシャンパンカラー。東京コース2戦2勝と得意にしていた舞台でそのポテンシャルを爆発させ、人気の盲点を突くように戴冠を果たした。

 殊勲の内田博幸騎手は本レース2勝目。単勝17番人気(オッズ76.0倍)のピンクカメオで勝った2007年、内田騎手はまだ地方の大井競馬に所属していたが、くしくもその時と同じ「稍重」馬場での勝利だった。

 プレビュー記事で”イチ推し”としたウンブライルは、惜しくも僅差で勝利こそ逸したが、末脚の切れ味は一級品であることを改めて証明した。手綱を取った横山武史騎手は「馬(の状態)は最高でした。前走からブリンカーを付けて好走したように(前に乗った)阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ、15着)とは全然メンタルが違いました。結果だけが残念でした」と納得の走りだったことを明かした。

 オオバンブルマイは、前走のアーリントンカップ(GⅢ)の優勝後、武豊騎手が「3歳のマイル路線ではトップクラスの1頭」と語っただけの実力は見せた。ただ、上位2頭とは差を付けられたように、これからの成長が待たれるところだ。

 人気上位を占めた馬たちは、稍重のなかでのハイペースという予想外のレース展開と、道悪の巧拙が主な敗因になったと言えるだろう。こちらも秋までにどのような変貌を見せるかに注目していきたい。

文●三好達彦

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