春のマイル女王決定戦、ヴィクトリアマイル(GⅠ、東京・芝1600m)が14日に行なわれる。先週のNHKマイルカップでも悩まされたが、今週もまたお天道様のご機嫌をうかがわなくてはならない。

 天気予報では土曜の午後から降り出し、夜は小止みになるものの、日曜は夜まで降水確率が30〜70%というのが現況。良馬場を望むのは到底無理で、降雨量によって程度が変わるが、道悪での競馬になるのは間違いない。その点も含めて、このレースの展望をしてみよう。

 出走馬のなかにGⅠタイトルを取った馬が4頭いる。3歳時に桜花賞に優勝し、昨年の本レースを制した白毛のアイドルホース、ソダシ(牝5歳/栗東・須貝尚介厩舎)。昨年の桜花賞、オークスを制したスターズオンアース(牝4歳/美浦・高柳瑞樹厩舎)。昨年の安田記念でシュネルマイスター、サリオスという牡馬の強豪を相手にして激闘を制したソングライン(牝5歳/美浦・林徹厩舎)。そして、昨年の秋華賞を制したスタニングローズ(牝4歳/栗東・高野友和厩舎)である。

 実績面で見るならば上記の4頭が”抜けて”いるべきだろう。あと、昨年はオークスで3着、秋華賞で2着とGⅠで上位争いに加わり続けたナミュール(牝4歳/栗東・高野友和厩舎)も加え、『4強+1』というのが今年の図式だと思う。
  まず、この5頭のなかでどの馬を主軸とするかだが、ここは人気でもスターズオンアースを取らざるを得ないだろう。牝馬クラシック二冠を制覇した3歳時の実績はもちろんだが、繋靭帯炎による休養をはさんで出走した今年の大阪杯では、逃げるジャックドールを爆発的な末脚でハナ差の2着に健闘。牡馬相手でもまったく引けを取らない能力の高さを証明した。

 それに加えて、本馬の東京競馬場での実績は〔2・1・1・0〕とすべて馬券に絡んでいるのは心強い。また今年、父ドゥラメンテの産駒が猛威を振るっているのはご存じの通り。リバティアイランド(桜花賞)シャンパンカラー(NHKマイルカップ)と、続けざまにマイルGⅠを制しているのも好材料だ。

 大阪杯後は育成牧場へ短期放牧に出してリフレッシュさせており、「ここを目標にして順調に調整できました。大阪杯はかなり良い状態でしたが、今回もそれと同じぐらい良い状態で臨めそうだと思っています」とコメントした高柳調教師は、直線が長く広々とした東京コースは「(追い込み脚質の)スターズオンアースに向いているはずだ」と自信を見せている。 課題であるゲートさえ遅れずに出れば、牝馬クラシック二冠の女王が再度、頂点に立つ姿が見られるだろう。 続く対抗格は前出の3頭に手を伸ばしたくなるが、ここはナミュールを推したい。同馬はGⅠ未勝利ながら東京コースでの実績が〔1・1・1・0〕と優秀で、マイル戦の実績も〔3・1・0・2〕と良好。今年初戦の東京新聞杯で牡馬を相手に僅差の2着した能力の高さを認めて、対抗格のトップに置きたい。

 逆に、海外遠征から帰国しての初戦となるソングラインと、芝での道悪経験が全くないソダシは幾分か評価を割り引くべきかもしれない。

 連下として考えたいのが、ララクリスティーヌ(牝5歳/栗東・斉藤崇史厩舎)、ナムラクレア(牝4歳/栗東・長谷川浩大厩舎)、サウンドビバーチェ(牝4歳/栗東・高柳大輔厩舎)の3頭。なかでも、昨秋のスワンステークスを10番人気で2着しファンを驚かせ、今年は京都牝馬ステークス(GⅢ)で競り合った相手をハナ差抑えて制したララクリスティーヌを強調したい。
  最後に、筆者が狙ってみたい”穴馬”に触れておくと、おそらく単勝万馬券になるであろうクリノプレミアム(牝6歳/美浦・伊藤伸一厩舎)である。昨年の中山牝馬ステークス(GⅢ)を制し、その後も今年の中山金杯がハナ差の2着、前走の福島牝馬ステークス(GⅢ)でもタイム差なしの3着と重賞実績は十分。また東京芝コースでは〔0・4・1・3〕と半数以上が馬券圏内というデータもある。

 手綱をとる松岡正海騎手は本馬について、オルフェーヴル産駒らしい気の強さを持っていて、それが爆発力につながることがあると言う。そして、「折り合いがカギにはなるが、この馬の折り合いを付けるのは得意」と手綱を取る松岡騎手も大舞台を前に腕を撫している。超穴馬、クリノプレミアムを押さえに一考してみるのも面白いだろう。

文●三好達彦

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