絶対的な存在ではない!? 桜の女王・リバティアイランドの“二冠”が最有力も不安視させるデータとは?【オークス】
今年のオークスの主役は、言うまでもなくリバティアイランド(牝3歳/栗東・中内田充正厩舎)だ。まず、彼女が桜花賞で見せたパフォーマンスは凄まじいものだった。ゲートでやや出負けしたこともあって最後方から追走する展開になった。
1000mの通過ラップが57秒6というハイペースの助けがあったのは確かだが、直線に向いて絶望的な位置にありながら、そこから大外一気の豪脚を繰り出し、15頭を飲み込んで快勝。上がり3ハロンは32秒9で、2番目に速かったキタウイング(牝3歳/美浦・小島茂之厩舎)の33秒6を0秒7も上回っていたのだから驚くしかない。
レース後はいったん放牧に出された。トレセンに戻ってからは、1週前追い切りは軽かったものの、最終追い切りではウッドコースの3頭併せで68秒0→36秒7→10秒8という好時計を迫力あるフットワークで叩き出し、桜花賞のときよりも一段とパワーアップした姿を披露した。
こうして見ていくと、リバティアイランドの”一強”は盤石なものと言えるだろうし、単勝オッズ1倍台という極めて高い支持も頷ける(土曜の午前現在)。ただし、筆者にはひとつ引っかかる要素がある。中内田厩舎の重賞での成績において、勝ち鞍が1400mから2000mに集中しており(特に1600mは17勝を挙げている)、逆に2200m以上となると1勝も挙げていないという不安データだ。
直近のGⅠで言うと、2018年にクラシックを戦ったダノンプレミアムを覚えている方も多いだろう。弥生賞まで4戦4勝と無敗で来て、日本ダービー(GⅠ)で単勝オッズ2.1倍の1番人気に推されたが、先行して粘ったものの、ワグネリアンの差し切りに屈して6着に敗れている。
もちろん馬は1頭ずつ別個の生き物なので、すべてを同じフィルターを通して語れないことは承知している。しかし、だ。それでも先述のデータは無視できないし、リバティアイランドの切れすぎる末脚はマイラー特有のものではないか、という疑念も筆者は持っている。ゆえに、リバティアイランドが主役であることは認めながらも、絶対的な存在だとは言えないと思う。”打倒リバティアイランド”の先頭に立つのは、桜花賞4着のハーパー(牝3歳/栗東・友道康夫厩舎)と、前走のフローラステークス(GⅡ)で2着に食い込んで出走に漕ぎつけたソーダズリング(牝3歳/栗東・音無秀孝厩舎)の2頭だ。
ハーパーを管理する友道調教師は日本ダービーで3勝を挙げているように、中長距離馬の育成に長けているのは衆知のところ。今回の共同記者会見でも「この馬は預かった時から父がハーツクライということで、オークスを第一目標に考えていました」と述べている。実際、これまでのレースぶりを見てもハーパーの特長は、いわゆる”長くいい脚を使える”ところ。距離延長はもちろん、東京の長い直線も味方につけられそうだ。
ソーダズリングはハーツクライ産駒で、管理するのは来年2月に定年を控え、本年がクラシックを戦うラストイヤーとなる音無調教師。同馬は今年2月にデビューし、2戦目の未勝利戦(芝1800m)で勝ち上がり、3戦目のフローラステークスの2着で賞金を上積みしてオークスへ臨んできた。前走で東京コースを経験したこと、武豊騎手に手綱が戻るプラス材料があり、まだ能力の底を見せていないのも魅力だ。
リバティアイランドを軸に取るなら相手を絞り込む必要があるが、ハーパーやソーダズリングから買うなら、その他の相手は広めに取っておきたい。
桜花賞2着に食い込んだコナコースト(牝3歳/栗東・清水久詞厩舎)の父はキタサンブラックで、GⅠ7勝のうち天皇賞・春2連覇をはじめ、中長距離のGⅠ実績は十分。距離延長にも対応可能で、相手なりに走る堅実さを持つことから押さえの一番手になるだろう。
ディープインパクト産駒のライトクオンタム(牝3歳/栗東・武幸四郎厩舎)も面白い存在だ。2連勝でシンザン記念(GⅢ)を制し、休養明けの桜花賞は不利もあって8着に終わったが、ひと叩きされて状態は順調に上向いている。田辺裕信騎手の思い切った手綱さばきにも期待したい。
その他では、桜花賞5着のドゥアイズ(牝3歳/栗東・庄野靖志厩舎)に注目。父はルーラーシップで、直線が長い東京コースは鋭い末脚が向く。昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)2着が光るシンリョクカ(牝3歳/美浦・竹内正洋厩舎)、フラワーカップ(GⅢ)でしぶとい勝負根性が印象に残ったヒップホップソウル(牝3歳/美浦・木村哲也厩舎)なども一考だろう。
最後に桜花賞3着と好走したペリファーニア(牝3歳/美浦・鹿戸雄一厩舎)だが、デビューから3戦すべてマイルで使われており、一気の距離延長に疑問。今回は狙いを下げた。
文●三好達彦
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