今季からベースのサイズが拡大されたことにより、盗塁数が増加しているMLB。その中でも特に走りまくっている選手がいる。今季からアスレティックスに加入した24歳のエステウリー・ルイーズだ。

 ドレッドヘアを振り乱して走りまくるルイーズは、マイナー時代からスピードスターとして知られた選手だった。2022年は2Aと3Aの計114試合で驚異の85盗塁を記録。正捕手ショーン・マーフィーをブレーブスへ放出した大型三角トレードでブルワーズから加入した今季も、現地5月29日までの55試合で両リーグ最多の27盗塁。フルシーズンに換算すると79.5盗塁となり、80盗塁を超えれば、1988年のリッキー・ヘンダーソン(アスレティックス/93盗塁)&ビンス・コールマン(カーディナルス/81盗塁)以来の快挙となる。

 実は、ルイーズはシーズン最初の24試合ではわずか5盗塁しか決めていなかった。ところが、4月26日のエンジェルス戦で1試合4盗塁を決めたのを皮切りに量産体制に入り、30試合で実に22盗塁を記録。フルシーズンなら118盗塁ペースで、それこそ球団の英雄であるヘンダーソン(80〜90年代に活躍した盗塁王12回のスピードスター。82年の年間130盗塁&通算1406盗塁はメジャー記録)並みの超高水準。また、ヘンダーソンは失敗も多かったが、ここまでのルイーズの盗塁死はわずか3回。実に9割の確率で成功している点も特筆すべきだ。
  これだけ走りまくっていれば、ルイーズはMLBナンバーワンの俊足なのだろうと思われるかもしれないが、そうではない。1秒間に何フィート走れるかを表すスプリントスピードという指標では、ルイーズは29.8フィート(約9.1m)でMLB9位。塁間を走り切るのにおよそ3秒かかる。速いことは速いが、3秒を切る猛者は他に5人いる。両リーグ1位の27盗塁は、スピードと技術両方の賜物と言えるだろう。「ルイーズは投手の動きを見極めて、盗塁できるカウントを目ざとく探している。塁上でピッチャーにプレッシャーを与える意味でもいい仕事をしているよね」とは、チームメイトのアレドミーズ・ディアズの弁だ。

 再建真っ只中とあって開幕から黒星街道を驀進(?)し、29日時点で10勝45敗、勝率.182と低迷しているアスレティックスにあって、ルイーズの快進撃は数少ない、いやほぼ唯一と言っていいプラス材料だ。今後も盗塁を量産してタイトルを獲得するほどになれば、アスレティックスの未来にもひと筋の光が差すだろう。

構成●SLUGGER編集部