2023シーズンのグランドスラム(テニス四大大会)第3戦「ウインブルドン」(7月3日〜16日/イギリス・ロンドン/芝コート)の開幕を約1か月後に控える中、ロシアおよびベラルーシ国籍の選手に“ある問題”が浮上していると、イギリスのニュースメディア『inews』が報じている。

 既報の通り今年のウインブルドンでは、前回大会で出場を禁じられたロシア・ベラルーシ人選手の参加を認めることが正式に発表された。ところが現在開催中の四大大会「全仏オープン」の女子シングルスで3回戦敗退を喫したロシア国籍のミラ・アンドレーワ(16歳/世界ランク143位)は、試合後の会見で「まだイギリスの渡航ビザを受け取っていなくて、ウインブルドンに出場できるかどうか状況を注視しないといけない」とコメントしたという。

 そのうえでまだまだツアーでの経験が浅い彼女は「私は芝コートでプレーしたことがないから、ウインブルドンを楽しみにしているけど、もしすぐにビザを取得できなければ、ITFトーナメント(下部大会)をプレーするために他の場所に行かなければならない」とテニスの聖地でプレーできなかった場合のプランを明かしている。

 実は侵攻国出身の選手で英入国ビザの発給が遅れているのはアンドレーワに限った話ではない。今回の全仏で大会初のベスト8に進出したベラルーシ国籍のアリーナ・サバレンカ(同2位)も、先月自身のSNSを通じて「まだ(イギリスの)渡航ビザを受け取っていない」と報告していた。

 また全仏初戦で姿を消したロシア出身のダニール・メドベージェフ(男子世界2位)も試合後の会見で「ウインブルドンでプレーするためにイギリスに行くことができるとうれしい」と語り、同じくビザ申請がまだ下りていないことをほのめかしていたのだ。
  これにはウクライナ侵攻を巡るある事情が関係しているという。『inews』は現在英国内務省がロシアおよびベラルーシ国民からのビザ申請の処理に少なくとも6週間を要していると報じており、同省が申請から1営業日以内でビザ発給の手続きを完了する有料のサービスについても「ロシア、ベラルーシ人からの申し込みは追加のセキュリティチェックの対象となっていて、両国の出身の国民には適用されない」とも伝えている。

 それでも最終的には両国の選手が無事イギリスへの入国を認められる見通しはすでに立っているようだ。というのもベラルーシ国籍で男子世界73位のイリヤ・イバシュカは今週イギリス国内で行なわれている「エイゴン・サービトン・トロフィー」(6月5日〜11日/芝コート/ATPチャレンジャー)に出場を果たすことができているからだ。

 また一連の報道を受けてウインブルドンを主催するAELTC(オールイングランド・ローンテニス&クローケークラブ)も「ロシアとベラルーシの選手がウインブルドン出場に先駆けて署名しなければならない中立宣言を作成する際に英国政府と緊密に協力している」とのコメントを出しており、内務省が侵攻国出身選手の同大会参加を妨げる可能性は低いことを示唆している。いずれにせよ、もう間もなく2国の選手にビザが発給されるのは間違いないだろう。

文●中村光佑

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