現地時間9月15日、今夏マイアミ・ヒートと再契約を結んだケビン・ラブの記事が地元メディア『Miami Herald』へ公開された。

 今年2月18日に約9シーズン在籍したクリーブランド・キャバリアーズとのバイアウトが成立し、完全FA(フリーエージェント)となった公称203cm・114kgのフォワードは、20日にヒートへ移籍。

 レギュラーシーズン21試合で平均20.0分、7.7点、5.7リバウンド、1.9アシストをマークすると、プレーオフでも計20試合に出場して平均17.9分、6.9点、5.6リバウンド、1.2アシストに3ポイント成功率37.5%(平均1.7本成功)を記録し、ヒートのNBAファイナル進出に貢献した。

 元NBA選手のスタンを父に持つサラブレッドにとって、キャリア15年目の昨季は軒並みキャリアワーストの個人成績。とはいえ、ビッグマンとしてチームメイトたちのためにフロアを広げることが可能なシュート力、円熟味を増したアウトレットパス、経験を駆使したテイクチャージなど、要所で活躍した。
  ヒートと2年契約(2年目はプレーヤーオプション)を結んだラブは、再契約を決断した理由をこのように話していた。

「僕はただ、すべての選択肢を比較したうえで、時間が進むにつれてチームと球団とともに過ごして自分が快適にいられるかを考えただけ。あとは上手くなり続けることができると思ったんだ。自分のリズムや動きを自然と見つけられるといいね。

 けど僕はフロア内外でインパクトを与えられると思っている。試合前や試合後に関係なく、ロッカールームあるいは練習で、僕ならこのチームが一丸となる助けをするうえで大きなインパクトを残せるかもしれないと感じている」

 昨季のイースタン・カンファレンス覇者ヒートは、ジミー・バトラーにバム・アデバヨ、ケイレブ・マーティン、タイラー・ヒーロー、カイル・ラウリー、ダンカン・ロビンソンという昨季のメンバーに加え、ジョシュ・リチャードソン、トーマス・ブライアント、新人ハイメ・ハケスJr.といった新加入選手も加えており、まずまずのロスターを揃えている。 ただ、ヒート一筋20シーズンを戦い抜いたユドニス・ハズレムが引退したこともあり、ベテランのリーダー格を失っていた。そのため、ラブという優勝経験があり、これまでのキャリアでトレードやバイアウトも味わってきたベテランがロスターにいることは、スタッツ以上に大きな意味を持つことになりそうだ。

 なお、ヒートは依然としてトレード要求をしているデイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)の移籍先として挙がっている。10日にFIBAバスケットボールワールドカップ2023が終了したこともあり、各チームは約半月後に始まるトレーニングキャンプに向けてロスターを調整している段階だ。

 そんな現状に、ラブはベテランとして“大人の対応”を見せていた。
 「僕はベテランの1人として、それにリーダーの1人であり、誰かに影響を及ぼすと思っていて、それはチームメイトたちとの関係にも響いてくる。だから(トレードが成立すれば)誰かがやってきて、誰かが出ていくことになることは承知しているよ。僕としてはどのようにして彼ら(チームメイトたち)のベストを引き出していくかを見ていく必要があると思っている。シーズン中には予期せぬことが起こり得るし、物事が劇的に変わっていくことも理解しているよ」

 バトラーやアデバヨ、マーティン、ヒーローのように、ラブが今季の試合でチームのトップスコアラーになることはほぼないだろう。ただ、長丁場のシーズンを戦い抜き、プレーオフという激しい戦いを切り抜けるうえで、ラブのような経験豊富なベテランがいることはヒートにとって大きな存在となるに違いない。

文●秋山裕之(フリーライター)

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