「久しぶりで緊張して、投げ急いでいましたね」

 胸突き八丁の終盤戦、熾烈なクライマックスシリーズ進出争いの最中に一軍の晴れ舞台に帰ってきた横浜DeNAの三嶋一輝。右腕は約3か月ぶりのマウンドの味を噛みしめるように語った。

 9月23日の中日戦、先発が早々に崩れて、3点ビハインドとなった3回に出番がやってきた三嶋は、ヒット2本を許しながらも無失点で切り抜け、「流れが相手にいっている状態なので、いろんな経験してきたなかで、まずはゼロで抑えること。もちろん3人で抑えるのは一番なんですけど、まずは流れを切らなきゃいけないので、求められている1イニングをしっかり抑えてほしいという意味をしっかり思いながら投げました」と、ベンチの期待を十分に理解しながら、それに応えてみせた。
  2022年1月中旬から後半、キャンプへ向けてピッチを上げていく段階で「身体が回っていないと感じていました。それから前屈が全然できなくなって…」と異変を感じ取った。

 それでも誤魔化しながら、オープン戦は無失点で抑え、開幕も当たり前のように一軍で迎えた。だが、病魔は確実に身体をむしばんでいた。「無意識のレベルで足が開かなくなってきて、それでも投げていたら肩に来ちゃって…」と語り、5月にはついに登録抹消となってしまう。

 原因は難病指定の「黄色靭帯骨化症」だった。身体への負担は小さいながらも、今まで前例のない術式を敢行。厳しいリハビリを経て12月にはブルペン入りし、恒例となっている1月の厚木の自主トレでは山﨑康晃や石田健大らと同じメニューをこなすなど、周囲を驚かせるほど順調に回復。キャンプは2軍スタートだったものの、終盤には1軍に呼ばれ、そのまま開幕1軍切符を掴んでみせた。

 4月には8試合で3勝を挙げ、防御率も0.00と完全復活を印象づけたが、その後調子は下降戦をたどり6月30日には登録を抹消された。

 33歳の右腕は「前半戦の1軍での最後のほうなんかは、やっぱり結構うまくいかないし、疲れも出てきたなというのもありました」と素直な心境を吐露。続けて、苦悩も口にした。

「背中なんで、ちょうど身体の真ん中じゃないですか。そこの神経圧迫でメスを入れたので、僕はそこを使って投げるピッチャーという認識なので、そこが動かないとどうしても合わないのは間違いないので。気持ちの面でも不安なことももちろんあるし、いろいろなことがやっぱりあるんで」 ファームでは「調子も朝、いろんな動きをして臨んでと模索しながらという感じですね。練習時間もあるので、もちろん実戦もこなしながら、工夫しながら良くなってきました」と暗中模索しながら、三嶋はコンディションを上げていった。

「まだまだこんなもんじゃないというのは自分でも思っていますけど、そのなかで怪我なくやれたこと、ファームでも18試合投げているし、別にどこか痛いわけでもないし。ただまだ1年経ってない、1年経っていっぱい投げて、僕はファームでも離脱せずにしっかり投げることができていることを前向きに捉えていますし、手応えを感じることももちろんあるんですよ」

 光明も見えてきたなか、「背中がちょっとずつ動いてきたのかなという進歩でもありますし、これからもいろいろ自分の身体と相談しながらやっていきます」と宣言した表情は明るく輝いていた。
  三嶋について三浦大輔監督は、「どんなときでもどんな場面でも、闘志を前面に出す投手ですからね」と、負けられない戦いが続くなかで、持ち前の負けん気に期待を寄せる。

 投手キャプテンである山﨑が不振でファームに落ちている現状に、三嶋は「僕が日本人投手最年長ですからね。若く経験しなくてはいけないピッチャーがいますから、なんでも答えてあげたいし、これからの選手をいい意味で鼓舞して、練習からやっていきたいと思います」と酸いも甘いも噛み分けた33歳のベテラン右腕は、影でも若いリリーバーたちを支える存在を買って出ると言い切った。

 ルーキー時の栄光からどん底まで落ちながらも這い上がり、さらに難病とも戦い続けるファイティングスピリットを持つ背番号17。厳しい戦いが続く今こそ、三嶋は一等眩しい輝きを放つ。

取材・文●萩原孝弘

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