あと一歩のところでパリ五輪行きの切符を逃した眞鍋ジャパン。

 9月16〜24日に開催された『ワールドカップバレー2023』で、日本はペルー、アルゼンチン、プエルトリコ、ブルガリア、ベルギーをストレートで退け、上位2か国が手にする五輪出場権に王手をかけていた。だが世界ランキング1位のトルコ、東京五輪銀メダルのブラジルがその行く手を阻み、5勝2敗で3位。オリンピック出場権は、来年6月17日の世界ランキング次第となった。

 熱戦が繰り広げられた今大会、火の鳥NIPPONはどの様な戦いぶりだったのか――。眞鍋政義監督の考えとともに、選手起用を振り返ってみる。

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【9月15日:開幕前日】
 大観衆がいるなかでプレーした選手が少ないことを懸念した眞鍋監督は、「明日の試合(初戦)は出来たら全員使いたい」と全員を起用させると話し、それ以降の大会からは「調子のいい選手からコートに送ります」と方針を説明していた。

【16日:ペルー戦】
 初戦で日本は林琴奈、古賀紗理那、関菜々巳、井上愛里沙、山田二千華、宮部藍梨、福留慧美(リベロ)をスタメン起用し、予定通りメンバーを替えながら試合を遂行。14名全員がコートに立った。

 指揮官は「今日はパリ五輪予選の初戦ということで、かなり選手も緊張していましたが、14名の選手全員をコートに入れられたのは、明日からの6戦に非常に大きい」と試合後に手ごたえを語ったうえで、古賀の対角を石川真佑ではなく井上にした理由を以下のように説明していた。

「井上はネーションズリーグから非常に安定しています。サーブも良かった。石川は野球で言う“リリーフエース”みたいな感じ。ジャンピングサーブもありますから」
 【17日:アルゼンチン戦】
 前日と同じスタメン。だが古賀と関のタイミングが合わず、相手ブロックにも遭い、決定率、効果率が下がった。それでも「どこかで修正しないといけない」ため、2人を起用し続け、コンビの改善を図らせた。

【19日:プエルトリコ戦】
 スタメンは同じ。相手オポジットに苦しめられつつもなんとか第1セットを取ると、2点にとどまった宮部から渡邊彩にチェンジ。さらに第2セット9-11と劣勢の場面で、セッターを関から松井珠己に代えた。その采配はずばり的中し、井上、林を起点に逆転に成功。チームに勝利をもたらした。

 これには眞鍋監督も「今日の一戦は松井がムードを、リズムを変えてくれた。特に彼女のトリッキーなトスが非常に効果的だった。ディフェンスも良かったですし、サーブも。今日は松井に尽きる」と絶賛していた。

 さらにリリーフサーバーとして出場した石川、和田由紀子については、「情報戦力班からプエルトリコはジャンプサーブに弱い。崩れるという情報が入っていました。できる限り控えの選手を、今日でしたら石川と和田がジャンプサーブですから、ジャンプサーブを使おうと思っていました」とデータどおりの采配であったと話した。
 【20日:ブルガリア戦】
「ムードメーカー」であるという渡邊をスタメン起用。古賀、井上、さらにはミドルブロッカーの活躍が光った。第2セットの途中から出場した石川も強烈なスパイクで好調ぶりを示したが、試合後、眞鍋監督は「(石川の起用は)相手チームの状況を考えながら使っていきたい」と慎重な姿勢を見せた。

【22日:ベルギー戦】
 ブルガリア戦と同じスタメンで臨んだ。第1セットはシーソーゲームも、その後、古賀、林を中心に猛攻を仕掛け、5つ目の白星を飾った。これには、「ネーションズリーグ以降、セッター2人とサイドの選手がまめにコミュニケーションをとっていた。ここにきてよくコンビが合ってきた」と高く評価した。

【23日:トルコ戦】
「今日の反省はサーブレシーブ」と指揮官が反省したように、1セット目を取ったものの、サーブレシーブで崩された。セットカウント1-1とした第3セットの8-14の場面で石川を投入。第4セット宮部、和田を入れ挽回をはかったが、相手エース、メリッサ・バルガスを止められず。最後にセッターを松井に替えたが手遅れだった。
 【24日:ブラジル戦】
 ブルガリア戦と同様のスタメンで臨むも、第1セットを落とす。第2セット19-12と大きくリードも、ブラジルの絶対的エース“ガビ”ことガブリエラ・ギマラエスの強烈なスパイクで追い上げられ、たまらず眞鍋監督は石川、松井をコートへ送り、なんとか第2セットを奪取。

 第3セットは石川、松井をそのまま起用。先にセットポイントを握るも、連続失点でこのセットを落とすと、ここで眞鍋監督は勝負に出る。第4セット、ここまでチームを率いた古賀を初めてコートから外し、アウトサイドヒッターを石川と井上に託したのだ。25-15で第4セットをモノにし、第5セットに望みを繋いだが、最後は力尽きた。

 重要局面で、古賀をベンチに下げた理由について指揮官は「試合中にリアルタイムで数値(データ)が入ってくるんですが、決定率、効果率、サーブレシーブの返球率を見ながら交代しています。(古賀は)スパイク決定率もかなり下がってきたので交代しました」と説明している。

 そして「我々目標のオリンピックの出場権をとる事が出来なかったのは悔しいですしチームとして反省したいと思います。選手は最後の最後までよく頑張ってくれました」と14名の選手を労った。

構成●THE DIGEST編集部

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