11月12日、3歳と古馬が激突する秋の中距離クイーン決定戦、エリザベス女王杯(GⅠ、京都・芝2200m)が行なわれる。

 今年の牝馬三冠をいずれも圧勝したリバティアイランド(牝3歳/栗東・中内田充正厩舎)が26日のジャパンカップ(GⅠ、東京・芝2400m)へ向かうため、絶対的な主役が抜けたラインナップは混戦模様。その中から注目馬を挙げていこう。

 まず真っ先にピックアップしなければならないのが、昨年の覇者であるジェラルディーナ(牝5歳/栗東・斉藤崇史厩舎)だろう。去年はオールカマー(GⅡ)を制した勢いを駆って臨み、得意の道悪(重馬場)も味方にして、2着に0秒3差を付ける圧勝を飾った。その後も有馬記念(GⅠ)で3着に食い込んで、そのポテンシャルの高さをあらためて証明した。

 しかし今年は大苦戦を強いられている。4月の大阪杯(GⅠ)で6着、香港で行なわれたクイーン・エリザベスⅡ世ステークス(GⅠ)でも6着に敗れると、6月の宝塚記念(GⅠ)は4着、秋初戦のオールカマーが6着と、昨年のような勢いはまったく見られない。

 また、今回は舞台が阪神から京都に戻るが、本馬が京都コース未経験であることや、過去10年の5歳馬の成績を見ると概して成績は不振。1〜2着を占めた2020年を除いて勝ち馬は出ていない。この点を考慮して、ライアン・ムーア騎手という強い味方を得てはいるものの、ジェラルディーナは押さえまでと評価したい。
  本稿で「本命」とまでは言えないものの、主軸として期待したいのはオークス(GⅠ)2着、秋華賞(GⅠ)で3着とした堅実派のハーパー(牝3歳/栗東・友道康夫厩舎)である。

 同馬は1600mのクイーンカップ(GⅢ)を勝ってはいるものの、GⅠの舞台ではマイルの桜花賞(4着)より2400mのオークスで着順を上げているように、距離が伸びて良さが出るタイプであるのは明白。父ハーツクライという血統が、それを後押ししている。

 さらにオークスから休み明けのぶっつけで臨んだ秋華賞は終いの伸びを欠いたが、ひと叩きされてのここでは長くいい脚が使える本馬の強みが活かせるのではないか。 単勝1番人気が確実なブレイディヴェーグ(牝3歳/美浦・宮田敬介厩舎)も、やはり侮れない存在だ。

 この馬のストロングポイントは何と言っても末脚の切れ味だ。2着に敗れたデビュー戦で上がり3ハロン32秒3という数字を叩き出すと、以降のレースはすべて最速の上がりを計時している。ちなみに2着に敗れた前走のローズステークス(GⅡ)でも、レコード勝ちしたマスクトディーヴァの33秒2を上回る32秒9の豪脚で追い込んで来ている点も見逃せない。

 ただし主軸として推し切れなかったのは、出遅れ癖がある本馬にとって最内枠がアダとなって揉まれる競馬を強いられはしないかという不安と、ここがGⅠ初出走という点である。一気にビッグタイトルを奪取できるだけの能力の持ち主だと分かりつつも、オッズ3倍を切る1番人気(11日午後4時時点)というのは、やや過剰評価だと思えてならない。

 4枠6番に入ったディヴィーナ(牝5歳/栗東・友道康夫厩舎)は前走の府中牝馬ステークス(GⅡ)で初の重賞制覇を収めた勢いを持って臨んで来る。

 前身気勢が強すぎて折り合いを欠くことが多かったが、4走前のヴィクトリアマイル(GⅠ)でミルコ・デムーロ騎手に乗り替わってからは、それまでのちぐはぐなレースぶりから一転、鞍上とのコンビネーションに進境を見せて4着に健闘。その後は、中京記念(GⅢ)と関屋記念(GⅢ)をともに2着とし、前走の勝利へとつなげた。
  言うまでもなく課題は距離延長だが、友道調教師は「デムーロ騎手も言っていましたが、大丈夫だと思っています」と語っており、大きな不安は持っていない模様だ。

 ちなみに、ディヴィーナの母ヴィルシーナは3歳時、ジェラルディーナの母ジェンティルドンナに4回連続、GⅠの舞台に限れば牝馬クラシックすべて2着に負かされた因縁のライバル。母親も管理していた友道調教師は「ジェンティルドンナの仔との対決となると、私は心に来るものがあります」とコメントしている。これも本年のエリザベス女王杯の大きな見どころとして、ぜひ覚えておいてほしい。

 その他では、牝馬限定戦では常に上位に食い込んでくるマリアエレーナ(牝5歳/栗東・吉田直弘厩舎)、2500mの目黒記念(GⅡ)3着の成績が光るサリエラ(牝4歳/美浦・国枝栄厩舎)、昨年の本レース2着馬であるライラック(牝4歳/美浦・相沢郁厩舎)はマークしておきたいところだ。

 大穴を狙うとすれば、今年のGⅠ戦線で大旋風を巻き起こしているドゥラメンテ産駒のゴールドエクリプス(牝4歳/栗東・大久保龍志厩舎)に注目。同馬は京都コースで3戦2勝、2着1回と連対を外しておらず、屈指のコース巧者であることは見逃せない。父親の血が距離延長を克服すれば、上位進出も夢ではない。

取材・文●三好達彦

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