11月19日にイタリア・トリノで決勝戦が行なわれた「Nitto ATPファイナルズ」をもって、今季の男子テニスツアーは、文字通りのファイナルを迎えた。

 ただ、ツアー定着を目指す挑戦者たちにとっては、ここからが正念場とも言える。「ATPチャレンジャー」は、ATPツアーの下部に属するグレードの大会群。参戦選手は、世界ランキング100位前後から300位前後の選手が中心となる。

 100位台の選手にとっては、来年1月の全豪オープン本戦の地位を、そして200位台の選手にとっては、全豪予選出場をかけた戦い。目指す地点の明確さゆえに選手のモチベーションも高く、国内外からもランキング以上の実力と勢いを有するチャレンジャーたちが多く集う。

 その筆頭が、綿貫陽介だ。昨年の「横浜慶應チャレンジャー」で準優勝した綿貫は、その後も日本開催のATPチャレンジャー2大会で優勝。11月から年末までのわずかな期間に、ランキングを227位から145位にまで大きくジャンプアップさせた。この一連の快進撃により今年1月の全豪オープン予選に出場した綿貫は、予選を突破し全豪本戦でも2回戦へ。その後はウインブルドン、そして全米でも本戦出場を果たしている。
  その躍進の起点でもある昨年の慶應チャレンジャーから、1年――。数々の大舞台を踏破した彼は、世界の98位として、日吉キャンパスへと戻ってきた。

 ただいかにランキングを上げようとも、1年後には獲得ポイントが失効してしまうのが、テニスのツアーシステムの過酷さだ。昨年、好結果を残した良い思い出の残る地は、守るべきポイントも多いという現実と表裏。

 今季の綿貫は、戦いのステージが上がったため、常に強大な相手に立ち向かってきた。そのチャレンジャー魂こそが、好プレーの源泉でもあっただろう。

 それから1年が経ち、今回の「横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2023 supported by 三田興産」(11月20日〜26日/神奈川県・慶應大学日吉/ハードコート/チャレンジャー75)での彼は、第1シードとして皆から標的とされる地位に立つ。内外から掛かるその重圧を、跳ね除けることができるか? 綿貫にとって、今大会は新たな挑戦の始まりだ。
  昨年、綿貫が駆け抜けたその道に続こうと闘志を高ぶらせるのが、清水悠太だろう。現在のランキングは246位。今年7月にキャリア最高位の203位に達し、8月の全米オープン予選に初出場。163センチの小柄な身体でコートを縦横無尽に駆け、ボレーやスマッシュも豪快に叩き込むスリリングなプレーで、ニューヨークの観衆を沸かせた。

 その高揚感を再び味わうためにも、今大会の清水は、全豪オープン予選出場圏内を目指す。ただ本人は、「いつもこの時期は、調子が良くないんです」と少しばかりまつげを伏せた。清水のコーチ陣曰く、地元日本での戦いが続くこの時期には、応援してくれる人たちに良いプレーを見せたいとの思いが高まる。その強い思い入れが、どこかで自分を縛ってしまうとういうのだ。

 ただ今の清水は、その先に、いかに素晴らしい世界が開けているかを知る。テニス選手なら誰もが夢見る舞台に再び戻るためにも、この大会で結果を残したい気持ちは誰よりも強いだろう。
  そのほかの日本勢では、ワイルドカードを得て出場の坂本怜も注目すべき選手。現在17歳。米国のIMGテニスアカデミーで腕を磨く、期待の大型新人だ。190センチを越える長身に、泰然自若としたキャラクターは大物感十分。プレースタイルは、本人曰く「意外にシコれる(粘り強い)のが坂本怜」だが、最近はサービスから重圧を掛けネットに出るなど、攻撃的スタイルを標榜中だ。まだフィジカル不足は否めないが、上位勢相手に自信や勢いをつければ、台風の目となるかもしれない。

 大会全体に目を向ければ、ジュニア時代から将来を嘱望されたマイケル・モーや、イタリア次世代の一角を担う20歳のルカ・ナルディ、そして昨年43位に至った22歳の日系アメリカ人のブランドン・ナカシマら、近い未来のスター候補が名を連ねる。シーズン終盤のこの時期に、北米や欧州から海を渡り日本で戦う者たちのモチベーションの高さは、想像に難くない。

 各々のキャリアの異なる地点に立つ者たちが、目に映すターゲットは様々。ただ一つ共通するのは、全ての選手が目の色を変えて勝利をつかみに行く、チャレンジャーだということだ。

取材・文●内田暁

※なお、同大会のシングルス準決勝と決勝が「BS松竹東急」で放送されることが決定。
これを記念して今大会にエントリ―している綿貫陽介選手のサイン入り大会Tシャツほかをプレゼント。

【プレゼント応募フォーム】

慶應チャレンジャー放送予定
【男子シングルス】
■準決勝 11/25(土)夜9時〜11時(ディレイ放送)
■決勝生中継 11/26(日)午前11時59分〜14時(最大延長15時)
※「BS松竹東急」(BS260ch/無料放送)

【関連記事】綿貫陽介が自身初の全豪オープン予選突破!悲願達成を後押ししたのは「人間的な成長」

【PHOTO】ジャパンオープンを戦う綿貫陽介や西岡良仁らトップ選手の厳選フォト!!

【PHOTO】全米オープン2023で熱い戦いを披露した綿貫陽介ら男子選手の厳選ショットを一挙公開!