現地11月21日に行なわれた2026年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で、シリア代表を5-0で撃破した日本代表。これで国際Aマッチ最多タイ記録の8連勝を飾った。

 昨年のカタールW杯以降、W杯予選や親善試合で強豪国のドイツ代表に連勝を飾るなど、一段とレベルが上がっているのを結果で見事に証明している森保ジャパン。

「全体の判断を含めたプレーのスピードが速くなり、戦術の幅も広がっている」

 代表の主将を担う遠藤航は、そう語っているように戦術レベルも選手の質も着実に上がり、手応えを掴んでいる。

 例えば、ハイプレスからのカウンターはW杯の主戦術だったが、今はそれに加え、中盤でも刈り取って前に早くつけられるようになった。課題だったビルドアップも最終ラインや中盤が安定し、鋭い縦パスが前線に入るようになり、従来のサイドからの展開を含めて攻撃が多彩になった。

 そうしたプレーを実現しているのは、「継続性」「個人戦術の向上」だが、今の代表チームが活気に満ちているのは、「競争」によるところが大きい。
  3年後のW杯に向けて、「レギュラーを奪いたい」「試合に出たい」という個々の意欲がカタールW杯の前後の頃とは比較にならないほど増している日本代表。当時はスタメン組とサブ組の間には力の差があり、「しょうがない」といった空気感もあったが、今は「自分が」と各々が自信を持ち、レギュラーを虎視眈々と狙っている。

 現在の代表は、そうした選手のモチベ―ションアップによるエネルギーがマグマのようにチーム内に充満している感じだ。このエネルギーは、チームが成長していくために欠かせないものだが、森保一監督は、それを育む「目標」「役割と責任の明確化」「コミュニケーション」の3つの要素をうまく活かしている。 森保ジャパンの最大目標は、言うまでもなく“W杯ベスト8“を目指すというものだ。

 過去、日本代表は2002年日韓W杯でベスト16に進出して以来、ロシア、カタールと2大会続けて決勝トーナメントに進出し、ベスト8を狙える位置にたどり着いた。ブラジルW杯のときは個々の目標がバラバラだったが、このチームはベスト8がチーム全員の共通目標になっており、それを達成しようという大きなエネルギーが生じている。

 役割と責任の明確化は、今のチームの強さの一因であるとも言える。森保政権が5年目に突入し、個々の選手が自分のすべきことを理解し、それを果たすことに迷いがない。その結果、個々のプレーがより磨かれ、それがチーム全体の成長につながっている。

 事実、9月にアウェーで行なわれた親善試合のドイツ戦は、まさにそれが見えた試合だった。バラバラの動きだったドイツに対して組織立って動いた日本は、個のハンディを跳ね返して4-1という大勝を収め、国内外で大きな話題をさらった。
  次にコミュニケーションついてだが、これはチームを一枚岩にする最強のツールだ。

 06年ドイツW杯と、14年ブラジルW杯で当時の日本代表は『史上最強』と称されたが、どちらもW杯本大会で期待を裏切るグループリーグ敗退に終わった。

 ドイツ大会のときは特定の主力に固執するジーコ監督に対して選手の不満が噴出し、競争というエネルギーを失い、チーム内がバラバラになり、いびつなチームになってしまった。

 一方、ブラジル大会のときは、大会直前にアルベルト・ザッケローニ監督がチームの根幹だった遠藤保仁を外し、指揮官が時間をかけて作った完成度の高いチームを長所のない普通のチームにしてしまった。

 チーム作りのプロセスにおいて、どちらも起こりえることだが、両大会のチームは、ともに外国人監督だった。スタート時から指揮官と選手との間で相互理解が進んでいたかというと、ジーコもザッケローニも選手の理解と信頼を得るまで、とことんやりあった感はない。どちらかというと「言っても無駄」という選手の主体性や意欲を削ぐ空気が生まれていた。

 結局のところ日本人選手を知り、日本人の気持ちの動きを理解する日本人監督は、状況が悪くなった時にこそ強い。10年南アフリカW杯の岡田武史監督、18年ロシアW杯の西野朗監督が突貫工事や短期間でチームを建て直してベスト16まで進んだのは、多々要因はあるが、選手をやる気にさせる言葉をかけて、気持ちをひとつにした「コミュニケーションの勝利」と言っても過言ではない。

 現代の代表は、こうして生じたエネルギーを維持しながらチームは成長し続けており、特に何かをいじる必要がない。戦力を拡充すべく新たな選手を登用し、組み合わせを確認している作業が少しずつ静かに進行している。 ただ、手放しで「すごい」と喜んでばかりもいられない。他国に目を向ければ、新たな指揮官を迎えたところが多く、チームを作り直している最中だ。日本はカタールW杯以降も指揮官が継続しているので、他国よりも戦術が浸透しているアドバンテージがあり、ある程度優位に試合を展開し、白星を重ねている。

 だが、今後急成長を遂げるであろう諸外国のチームとW杯1年前に対峙した時、今と同じように圧倒して勝てるだろうか。日本はFWやGKの軸を模索中だが、他国の上を行く戦力や戦術を上積みしていけるだろうか。
  また、長期政権には停滞期が程度の差こそあれやってくる。今後、チームの競争がひと段落して落ち着いて来ると、それまで全員が維持していた「自分がやるんだ」という気持ちが低下していく可能性がある。フレッシュな選手を入れると組織は活性化するが、外す選手を間違えると積み重ねてきたものが崩れてしまうこともある。

 これから表面化するであろう様々な問題に対して、どのように対処し、チームをどういう方向に導いていくのか。今後の采配はもちろん、森保監督のマネジメント力がより問われることになるだろう。

文●佐藤俊

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