「とにかく出し尽くせたなって思えるぐらい、今日もここに魂を込めた滑りを置いてきたと思います」

 昨年11月の埼玉公演からスタートしたプロスケーター・羽生結弦の単独アイスショー『Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd "RE_PRAY" TOUR』の千秋楽が、2月19日に横浜でフィナーレを迎えた。

 自ら企画・台本・出演・制作総指揮を務め、演出は日本を代表する演出振付家のMIKIKO氏が担当。去年2月の東京ドーム公演『GIFT』に続き、再タッグを組んだ画期的なアイスショーは連日、超満員を記録。埼玉、佐賀、横浜と転戦した約3か月の公演は大盛況のなか、幕を閉じた。
  稀代のスケーターは公演終了後、「達成感はあります」と振り返り、「本当に今までの自分と比較しても、一番練習してきたんじゃないかな」と全3公演を無事に走り切り、完全燃焼できたことに満足。「何より見てくださる方々が本当に嬉しそうな顔をしていたので、頑張って良かった」とツアーに詰めかけたすべての観客に謝辞した。

 しかし、達成感と同時に「あらためて、めちゃくちゃきついなって感じています。今回の構想では、『フリーと、ほぼ同じ状況で挑みたい』っていうのを思って作ってきたんですけど、本当に大変でした」と思わず本音を吐露。だがそれでも、苦しんでたどり着いた先に確かな手応えを掴んだ。

「こうやってツアーという形で、何回も何回も挑戦をさせて頂くことによって、こういうトレーニングをしたら結果が出せるとか、手応えみたいなものをあらためて感じたので。毎回毎回レベルアップできるように自分のストーリーの中でもありますけど、経験を積んで、またより一層、技術的にも高い自分を見せていけるように頑張れる希望を持てました」

 ゲームの世界観を中心に試行錯誤のなかスタートした自身初のツアーは、課題と成果の連続だったという。

「毎回毎回、進化すべきところが見つかっていくので。ある意味、競技者として戦っていくような。過去の自分をどうやって乗り越えていくのか、強くなっていくのかっていうことを常に考えながら、本当にストイックに自分を追い込みながら練習をしてきました」 事実、演技と演技の合間に流れるスクリーン映像でも、闘う姿は見られた。ゲームキャラクターの羽生が『Hope & Legacy』『Let's Go Crazy』『天と地と』など、過去の名プログラムの衣装を着て巨大なモンスターをなぎ倒す粋な演出をしたり、鮮やかなプロジェクションマッピングや照明をフル活用して、命の根源となる水や木々など進化の過程が表現された。

 プログラムについても『破滅への使者』の時には、まるで競技会のような6分間練習から始まり、スクリーンには砂時計でカウントダウンが刻み込む。滑走直前には唯一無二の相棒であるプーさんの頭を撫でる試合のルーティーンを見せ、張り詰めた緊張感のなかでブザーが鳴った。

 運命のゲームがスタートした。冒頭は4回転サルコウを華麗に着氷。続いてトリプルアクセル+2回転トウループのコンビネーション。単独の3回転ループ、4回転トウループを降りると、演技後半は4回転トウループ+1オイラー+3回転サルコウに、さらに1オイラー+3回転サルコウをつける前代未聞の5連続ジャンプに成功。最後はトリプルアクセルを降りて、見事にゲームクリア。のちに、「やっと破滅(への使者)ノーミスできた…」と漏らすほど、これまでの練習が報われ、過去の自分に打ち勝てたことを喜んだ。

「毎回映像の部分はひたすら着替えて靴を履いてみたいなことをずっと繰り返してたので。でも、こういった中でノーミスでできたことは、またあらためて自分がやってきたことが正しかったと思える瞬間でした」
  最初のプログラム『いつか終わる夢』から始まり、本ツアーで絶大な支持を受ける『阿修羅ちゃん』『MEGALOVANIA』『天と地のレクリエム』など珠玉のプログラム全12曲を滑り切った羽生。終盤には、ここまで3公演を支えたスタッフやファンに感謝の言葉を述べた後、「やっぱ寂しいな〜」と思わず漏らす場面があった。

 あのひと言について取材陣から問われると、「自分の中で、今日完結できたなっていうぐらいの達成感があったので。達成できたからこそ嬉しいし、嬉しいとともにその寂しさが一緒に募ってきたっていうか。達成してしまったみたいな感覚で寂しいなって思いました」と、その胸中を明かす。

「皆さんにとってはイメージがしづらいかもしれないですけど、ある意味、自分の中でオリンピックを取ったぐらいの勢いで、めちゃくちゃ練習してきたことが達成できた。でも、まだまだこれから構成を上げられると思いますし、もっと強くなれると思う。もっと練習します」

 真のアスリートであり続けるため、プロ転向後もたゆまぬ努力を積み重ねて『RE_PRAY』を見事に完遂した羽生。次はいったい、どんなギフトを届けてくれるのだろうか。稀代のスケーターが見据える新たなステージに期待したい。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

【PHOTO】プロフィギュアスケーター・羽生結弦の魅力が凝縮された単独アイスショー『プロローグ』

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