「今日はたぶん、ボールを打つ感覚は今までで一番良かったんじゃないかしら?」

 大坂なおみが穏やかな口調でそう言ったのは、テニスのマイアミ・オープン初戦後。エリザベッタ・コッチャレット(イタリア)に、6-3、6-4で勝利した試合で得た手応えである。オールラウンドで安定したプレーを誇る世界51位相手に、与えたブレークポイントはゼロ。最後はサービスエースで締めくくる、快勝ともいえる白星だった。

 今大会を迎える前、大坂は3回戦敗退となったBNPパリバ・オープン(アメリカ・インディアンウェルズ)での反省を踏まえて、次のように語っていた。

「インディアンウェルズで敗れた時、自分自身にフォーカスしていなかったことに気付いた。負けるのも当然だと思った。なぜなら私の最大の力……スーパーパワーとまでは言わないけれど、最強の武器は、自分自身の能力だと思うから。リラックスして自分のプレーができている時こそ、最も良い試合ができる」

 その点に留意した今大会前の準備期間では、「復帰以降、最も良い練習ができていた」とも大坂は言う。同時に「自分のプレーに集中」することは、相手に無関心であるということではない。

「今日の対戦相手は、とても賢くプレーする。だからわたしは、しっかり打ち合い、必要な時に自分のショットを打つようにも心掛けた。それに今日は、フットワークもとても良かったと思う」

 焦らず、打ち合いでジリジリと相手を追い込み、そして決めるべき時に「スーパーパワー」を発動し強打を叩き込む。そのようなプラン遂行の背景には、フットワークへの自信もある。まさに、心技体がカチリと噛み合ったがゆえの快勝だった。
  その、本人が「今まで一番良かった」と自信を深める勝利の先で、対戦するのはエリーナ・スビトリーナ(ウクライナ)。現在17位の29歳は、約1年前に出産から復帰するやいなや、ツアー優勝やウインブルドン・ベスト4進出の快進撃を見せ、多くの関係者を驚かせた。

 はたして大坂も、彼女の活躍に力をもらった一人だという。

「妊娠中に彼女(スビトリーナ)がプレーする様子を少し見て、『わたしもあの場所に行きたい』と思ったことを覚えている」

 同時に大坂は、出産や復帰という履歴とは無関係に、「彼女は常に素晴らしいプレーヤー。どんな時にも諦めない。今トップ20に居るのも納得だし、大切なのは、今の彼女がどの地位にいるかということ」とも続けた。

 二人が初めて対戦したのは、10年前。大阪開催のツアー大会だった。当時20歳のスビトリーナは既に若手の注目株で、16歳の大坂は、ランキングも注目度も急上昇中のライジングスター。試合は、大坂がファイナルセットでリードを奪うも、最後はスビトリーナが意地の追い上げで逆転勝利を手にした。

 この初対戦も含め、両者の戦績は3勝3敗。最後の対戦は2019年の全豪オープンで、この時は最終的に同大会を制した大坂が、6-4、6-1で勝利した。

 その時から、お互いに多くを経験し、似た道を歩みつつも、今、立場を変えて5年ぶりに対戦する。恐らくはこれまで同様に激しく、熱く、だがこれまで以上に趣き深い試合になるに違いない。

現地取材・文●内田暁

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