どんどんカラフルになる。松島幸太朗が、ラグビー選手としての幅を広げている。

「悪くはないと思います。段々、上がってきている感じ。これを維持し、スタンダードを上げていきたいです」

【画像】W杯でも活躍した世界に名を馳せるトッププレーヤー30選 身長178センチ、体重88キロ。今年の2月26日に31歳となった。桐蔭学園高にいた頃に綿毛のランで名を馳せ、単身で南アフリカに渡ったのは2010年だ。

 帰国を前後して14年に日本代表となり、19年のワールドカップ日本大会では計5トライを奪取。昨秋、フランスで3度目の大舞台を経験するまでには、生来の速さに強さを付与していた。

 何より最近は体調がよい。所属先の東京サントリーサンゴリアスで体幹トレーニングをする時間が確保できていて、数年前に実施のアレルギーチェックを受け小麦や白米を控えているためだ。

 2月3日、東京・秩父宮ラグビー場。クラブ同士の国際マッチにあたる「クロスボーダーラグビー2024」で、ニュージーランドのブルーズを迎えた。

 チームは接点に苦しみ7-43と敗れるも、黄色の15番はその流れに乗らなかった。

 19点差を追う24分には、中盤でパスをするそぶりを見せつつラインブレイク。その加速ぶりで、たまらずとびかかった相手にハイタックルの反則をさせた。約4分後には自らフィニッシュした。

 直後の攻防でも、自陣の深くから駆けた。大男とぶつかり、倒されながら、地を這うよう前に出た。

 続く34分には、敵陣10メートルエリア左で魅する。浮いた球を手にするや、左、右とステップを踏み防御をかわした。

 大型選手の脇をすり抜けた皮膚感覚は、「リーグワンと違って高めにタックルが来るので、わりと簡単に外せた」。国内のリーグワンでは腰を落としてフットワークに対応するタックラーが増えてきた一方、力勝負の多い海外リーグでは勢いがある分かわしやすい人もいなくはないようだ。

「上から来られたら、いなしやすい」

 少なくとも、多くの日本出身者が抱きがちな「外国人の方が大きくて強い」というバイアスに、この人はとらわれていない。

「日本に来る海外の選手は勤勉になっているので、その分(抜き去るのが)難しくはなっているかなと。まぁでも、ブルーズを相手にやれたのは自信になりました」
  難易度が増すこの国のコンペティションに揉まれるなか、パス、キックも磨いている。タッチライン際のウイングを任されることもあるが、最後尾のフルバックで評価されたいからだ。グラウンドの中央に位置することの多いポジションの特性上、自分で局面を打開するほか周りを活かすのも求められる。
  3月22日には秩父宮で、リーグワンの第11節に先発する。前年度の3位決定戦で敗れた横浜キヤノンイーグルスとぶつかる。

 7−10と3点差を追う19分頃。自陣の深い位置から走り出し、持っていた球を向かって左奥の端側へ蹴る。タッチラインの外へ出た地点から再びアタックできる「50・22」を成功させた。

 穴場をえぐる足技はこの後も連発しており、32分には敵陣中盤からからゴール前右へキックパス。トライを演出した。直後のゴール成功で当時のリードを18点にした。

 さかのぼって27分には、向こうの攻め方を読み切って鋭いタックルを成功。守備役を引き寄せてのパスで味方の快走を引き出したり、放った先へサポートに入ってボールを保護したりもした。

 しかし35―37と屈しただけに、「スイッチオンしないといけない時に、なぁなぁにやってしまったところがある。常にプレッシャーをかけられていない」。確かにこの午後、松島のキックでエリアを獲った直後に味方が反則を犯すシーンもあった。ジンバブエ人のジャーナリストを父に持つプロアスリートは、優しさと厳しさを兼備する。

 引き続き国際舞台での躍動が期待されるが、本人のフォーカスは別なところにある。サンゴリアスを「優勝できるチームにする」のが、いまの目標だ。

 レギュラーシーズンは残り5試合。目下12チーム中3位のチームにあって、ハイパフォーマンスを結果に繋げたい。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)

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