スポーツユニットが欲しい?

 さて、ではスポーツユニットとしてのターボはどう考えるべきか? まずはピークパワーを追求したいので、ターボは大径の大型ユニットを採用する。吸気系を高回転側にチューニングしつつ、過給のチューンも同じく高回転側にする。点火タイミングの遅角を回避できれば当然パワーも出るので、吸気冷却効果のある直噴インジェクターはこちらでも有効だ。

 こうして大径ターボを使うと、排気の量が不足して低速ではタービンが十分に働かない。そこでエンジン排気量を増やして低速トルクを補うか、低速専用の小径ターボを使ったシーケンシャルターボにするのである。ただしシーケンシャルターボを使えばシステム全体の重量が増え、排気量を増やした方が効率が良い場合もある。

 「C-HRにスポーツユニットが欲しい」という気持ちは分かるし、現在小型車にスポーツイメージのクルマが払底しているトヨタの事情もわかるが、素性としてエコユニットとして開発されたエンジンを無理矢理スポーツ用に仕立てるのはあまりにも効率が悪い。本当にスポーツユニットが必要なら新たなエンジンを設計すべきである。

 なぜこういうことが起きたのか? 時期的には微妙だが、昨年4月にトヨタが7分社化し、パワートレインカンパニーが設立されたことと関係があるのかもしれない。パワートレインカンパニーがこのユニットをどういう戦略で設計したのかが、全社的に共有されていないのではないか?

 さてC-HRターボは、出来上がったクルマそのものは決して悪くない。今のところ強引にスポーツ方向に改変したりはしていないからだ。だからこそ、「ターボと言えばハイパワー」という固定概念が強いと物足りないという評価になるだろう。これまで書いて来た通り、本来エコ目的のターボは高速巡航をターゲットにしたものだ。ハイブリッドは加減速の少ないこう言ったシチュエーションでは回生ブレーキという伝家の宝刀の出番が少なく能力が十分に発揮できない。だからこそ低回転で過給して定速巡航した時に価値を発揮するターボが必要なのだ。いっそJC08以外に、時速100キロで巡航した時の燃費をアピールして、C-HRの最も光る場面を訴求した方が良いのではないかと思う。

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■池田直渡(いけだ・なおと) 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。自動車専門誌、カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパンなどを担当。2006年に退社後、ビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。現在は編集プロダクション「グラニテ」を設立し、自動車メーカーの戦略やマーケット構造の他、メカニズムや技術史についての記事を執筆。著書に『スピリット・オブ・ロードスター 広島で生まれたライトウェイトスポーツ』(プレジデント社)がある