米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長が来年2月に退任する可能性が高まってきました。一方、日銀の黒田総裁の任期も1年を切っています。人事次第では、来年には金融政策をめぐる状況が大きく変わっているかもしれません。

量的緩和策の終了を宣言したイエレン氏

 FRB議長の任期は4年ですが、前任のバーナンキ議長やその前のグリーンスパン議長などに代表されるように、最近では2期8年、議長を務めるケースが多くなっています。イエレン氏はバーナンキ氏が行った量的緩和策を定常状態に戻すのが最大の使命ですから、任命当初は2期8年になるとの見方が大勢を占めていました。

 実際、イエレン氏は順調に実務をこなし、量的緩和策の終了を宣言。今年6月のFOMC(連邦公開市場委員会)で再利上げを実施するとともに、年内の資産縮小開始を宣言しました。普通に考えれば、出口戦略の終了を見届けるために、もう1期続投するというのが自然な流れでしょう。

FRBに否定的なイエレン氏

 しかしトランプ政権の誕生が状況を大きく変えました。トランプ氏はもともとFRBに否定的で、選挙期間中は意図的に低金利へ誘導しているとしてイエレン氏を強く批判していました。大統領就任後は、イエレン氏について「尊敬している」と発言するなどトーンを変えていますが、続投は望んでいないとの見方が一般的です。

 後任の議長候補には、現在、国家経済会議(NEC)議長を務めているゲーリー・コーン氏の名前などがあがっています。コーン氏は、ゴールドマン・サックス出身で市場に精通していることで知られています。トランプ氏は金融業界からの要請を受け、オバマ政権時代に強化された銀行に対する規制を緩和しようとしていますから、その点では投資銀行出身のコーン氏は最適といってよいでしょう。

来年4月に任期が切れる黒田総裁の処遇にも注目

 ただ、コーン氏は金融政策に従事した経験はなく、FRB議長としての手腕はまったくの未知数です。トランプ氏はイエレン氏を嫌っているようですが、トランプ政権の経済政策がなかなかうまく進まない中、株高が維持できているのはイエレン氏の絶妙な舵取りのおかげともいえますから、ここで議長を交代させてしまうことは、リスク要因と認識される可能性もあります。

 もしイエレン氏が退任することになれば、金融政策をめぐる環境は大きく変わります。そうなってくると来年4月に任期が切れる黒田総裁の処遇についても注目が集まることになるでしょう。米国と異なり日本では量的緩和策がほとんど効果を発揮していませんが、撤退するにも撤退できないという難しい状況に置かれています。政局とも関係する話ですから、来年の金融市場には一波乱あるかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)