IT業界の名門企業である米IBM社が予想外の苦境に立たされています。IBMは人工知能ワトソンを開発した企業なのですが、巨人IBMに何が起こっているのでしょうか。

市場の期待に応えられなかった21四半期連続の減収

 米IBM社は18日、2017年4〜6月期の決算を発表しましたが、その内容に市場は落胆しました。今期の決算で何と21四半期連続の減収となってしまったからです。市場では今期こそ増益に転じるのではないかと期待していたのですが、それは見事に裏切られてしまいました。

 IBMの業績が低迷しているのは、アマゾンなど新興のクラウド企業に顧客を奪われていることが最大の理由です。IBMは非常に歴史のある企業で、コンピューターが存在していなかった時代から企業の業務処理システムを請け負ってきました。戦前、日本が国策企業として満州に設立した南満州鉄道(満鉄)は、「東洋一」の会計システムが導入されていると喧伝されていましたが、実はそのシステム(当時はパンチカード式の計算機)を開発・納入していたのはIBMでした(米国は当時、事実上、日本の敵国であったことを考えると、国策企業の基幹システムを米国企業に依存しなければならなかったのは皮肉というよりほかありません)。

IT業界を襲うクラウドと人工知能の嵐

 IBMは一時、パソコンの急速な台頭によって業績が悪化したことがありましたが、大型コンピューターを捨て去る決断を行い、奇跡的な復活を遂げて、現在に至っています。

 パソコンが普及した90年代と同様、現在もクラウドと人工知能という嵐がIT業界を襲っています。実はIBMは両者に素早く対応しており、同社が開発した人工知能ワトソンは、今のところ最高峰の人工知能と言われています。

 しかし、クラウドについては、アマゾンなど新興企業がここまで攻勢を強めることは予想できませんでした。アマゾンのクラウドはIBMなどIT業界の老舗並の信頼性を維持しながら、破格の安値で提供されています。こうした動きにIBMは柔軟に対応することができず、一部の顧客を奪われてしまったわけです。

 もっとも、今回の決算は減収減益ではありますが、当期利益については昨年度に近い水準を維持しており、そろそろ業績が底を打っても良さそうなタイミングです。IBMが再び成長するためには、人工知能関連の事業を加速させるとともに、クラウド事業においてアマゾンに対抗できるような思い切った価格戦略が必要かもしれません。

(The Capital Tribune Japan)