6月の失業率は2.8%、有効求人倍率は1.51倍と、それぞれバブル期並みの水準にあり、労働市場が著しく引き締まった状態にあることを示しています。日銀短観で企業の人手不足感を確認してみても、そうした状況が見て取れます。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)

「足りない労働力を補うのは外国人という意見」を裏付ける意外なデータ

 目下の労働力人口(≒働いている人+働く意思のある人)は、生産年齢人口の減少を女性と高齢者の労働参加が補うことで、なんとか横ばいを保っているのですが、それでも総合的にみた労働力の減少は明白です。そこで、ここ数年は人手不足を外国人の移民で補おうという意見があります。

 とはいえ、移民に関しては、様々な規制や社会的な賛否もあり、人手不足だからといって直ちに移民を受け入れるということにはなっていません。日本は島国という特性もあって、移民の受け入れには慎重な国と一般的に認識されています。

 ここで意外なデータを紹介します。結論を先取りすると、日本は見方によっては「移民大国」です。OECDという先進国を中心に構成されている国際機関が集計している移民のデータベースを確認すると、「国内に1年以上滞在する人」を移民と定義した場合、日本が受け入れている移民の数は2015年の実績で約40万人です。これは驚くべきことに先進国で4番目です。1位は難民の受け入れ先となっているドイツ、2位はアメリカ、3位はイギリス、それに次ぐのが日本です。国際色豊かなイメージのあるカナダ、フランス、イタリア、オーストラリアよりも多く、先進国で4番目というのは多くの方にとって意外なデータではないでしょうか?

 もっとも、ここで紹介した40万人という数値は、1年間に新たに入ってきた移民の数で、出て行った人の数は含まれていません。一方で、普段、我々が「日本は移民に対して閉鎖的だ」という議論をする時に目にする数値は「人口に占める外国人(≒移民)の割合」という定義です。これだと2%弱で、先進国のなかで低いところに位置します。

 ここで筆者が強調したいのは、一口に「移民」と言っても、実際には色々な尺度や定義があって、それらをどう解釈するかによって、見方が随分変わるということです。あるデータでは、日本は第4位の移民大国ですし、違うデータでは、日本は閉鎖的と言えます。移民の議論は複雑ですが、こうした色々なデータをみて話を進めるべきと考えます。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)

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