高収入の専門職を労働時間規制の対象から外す、いわゆる「残業代ゼロ法案」をめぐって、連合がドタバタ劇を演じています。当初は脱時間給を容認する方針を打ち出しましたが、内部から批判が殺到すると、今度は一転してこれを見送る方針を固めました。連合に何が起こっているのでしょうか。

 政府は、働いた時間ではなく成果で評価することが可能となるよう、労働基準法の改正案を秋の臨時国会に提出したい考えです。これは、コンサルタントなど高度専門職に対象を限定した上で、労働時間の規制や割増賃金などの適用除外とするというものです。つまり働いた時間ではなく、仕事の成果で賃金を決められるようにしようというわけです。

 この枠組みについては産業界が実現を強く求めており、2015年には一度、法案が国会に提出されました。しかし、労働組合は無制限の残業を招く危険性があるなどとして反対の姿勢を崩さず、法案はほとんど審議されないまま、現在に至っています。

 しかし今年に入り、連合と経済団体との間で調整が始まり、連合の執行部は、年間104日以上の休日を確保するとの条件付きで、法案を容認する姿勢を打ち出しました。このまま労使合意が成立するかと思われましたが、連合は再び方針を転換。従来通り、法案に反対する立場を継続することになりました。

 連合が残業代ゼロ法案に賛成する姿勢を示したものの、ここに来てスタンスを急変させたのは政治的な理由が大きいといわれています。

 労使交渉がスタートした今年の年初の段階では、安倍政権の基盤は盤石と考えられており、政権の方針に反対する姿勢を続けた場合、連合は難しい立場に置かれてしまいます。安倍政権に対する配慮から、妥協策を模索したわけですが、その間に永田町の雰囲気は一変してしまいました。

 安倍政権の支持率が急低下したことで、与党内からも政権運営の手法について批判が出るようになってきました。連合の組織内でも、政権との妥協策について反発する声が高まっており、執行部はこうした批判に押されて、方針撤回を余儀なくされたようです。

 本来、この法案は高度人材の処遇をどうするのかというかなり実務的なテーマなわけですが、その内容は政局的な理由で大きく揺れ動いています。政治で決定する以上、やむを得ない面もありますが、労働者の保護という観点からすると、少々、本末転倒な状況と言わざるを得ません。

(The Capital Tribune Japan)