「例えばジーパンを1本しか持っていないのに、ベストジーニスト賞をもらったような」。第157回芥川賞を「影裏(えいり)」で受賞した沼田真佑(しんすけ)氏(38)は19日夜、受賞の感想を率直に語った。

 「本当にそんなつもりはなかったので、部屋着のままで来た感じです」。記者会見場にはジーンズにシャツというラフな出で立ちで現れた。

 デビュー作でもある「影裏」は、岩手県を舞台にした震災小説。「ああいうことがあると、他のものが書きたくても、自分の中で書いておかないと、他のものが軽薄になる。自分も岩手に住んでいるし」と震災をテーマに扱った理由を述べた。

 岩手県民で初の芥川賞受賞となった格好だが「5年間住んでいるが、5年分は恩返しした形になったかなと」。

 1978年、母の実家のある北海道小樽市で誕生。2011年の東日本大震災の時は、福岡県に住んでいた。周囲の人々の震災に対する関心の薄さに「義憤を感じた」という。2012年、親の実家のある岩手県に転居。その後2年ほど、何もせず貯金を取り崩しながら暮らした日々もあった。
 
 今の気持ちを聞かれると、うつむきながら「本当に光栄です。まだ1作しか書いていないので、頑張ります」と答えた。

(取材・文:具志堅浩二)