部活指導のあり方が問題となっている。長すぎる練習時間や少なすぎる休養日など、課題を是正するため、スポーツ庁は総合的なガイドラインづくりに取り組み始めた。具体的に先生はどのような状況なのか。部活動の問題を研究してきた名古屋大学の内田良・准教授に寄稿してもらった。

試合では「早く負けてほしい」

 部活動指導の負担を嘆く教員の声のなかで、私がもっとも衝撃だったのは、試合に「早く負けてほしい」という発言である。大会で一生懸命声をあげている指導者が、心の奥では「早く負けてくれ。休みたいんだ」などと思っていようとは……。

 私にとってこれが衝撃だったのは、まさにそうした考え方が学校文化のタブーだからである。率直に考えれば、教育者としての素質を疑われるかもしれない。

 私の目から見ればその先生は、本当に生徒思いでユーモアもあって、包容力がある、素敵な先生である。逆に言えば、それほどに生徒思いの先生でさえ、大会で頑張っている生徒を前にして「早く負けてほしい」と思ってしまうほどに、先生たちは追い詰められている。

10年間で大幅増の部活動指導時間

 2017年4月に公開された文部科学省による10年ぶりの「教員勤務実態調査」(小中学校の教員対象)の結果(速報値)は、部活動の過熱ぶりを浮き彫りにした。

 勤務時間全体についていうと、中学校教諭の場合、前回調査の2006年度と比較して2016年度には、平日一日あたりで32分、休日一日あたりで109分、勤務時間が増えている。

 そして中学校の各種業務内容のなかで突出して増加したのが、中学校の休日における「部活動」である。休日の一日あたりで、64分もの増加である【図1】。教員の働き方改革のなかでも、部活動のあり方の改善は、最優先事項であると言える。

「自主的な活動」が強制されている

 そもそも部活動は授業とは異なり、教員の本来業務ではない。だから、学生時代に大学で部活動の指導方法を学ぶこともない。そして、部活動はその多くが教員にとって所定勤務時間外の活動である。だが教員は法制度上、残業ができない。

 つまり建前としては、部活動は教員の「自主的な活動」に位置づけられる。だが現実には、教員は全員で部活動を指導することが慣例となっている。実際に2016年度のスポーツ庁による全国調査では、じつに87.5%の中学校で教員全員による指導体制がとられている。希望制としているのは、たったの5.3%である【図2】。「自主的な活動」とは名ばかりである。

 指導の強制にくわえて、平日の夕刻(ときには早朝も)とさらには土日と、所定勤務時間を超えた部活動指導が当たり前になっている。そして平日残業代なし、土日も上限数千円の手当がつくだけである。しかも、当の競技や活動が未経験であっても、そこに巻き込まれる。今日の部活動が「ブラック部活動」と総称されるのも、もっともである。