トリプル世界戦の調印式並びに記者会見が18日、都内のホテルで行われ、20日に有明コロシアムでWBA世界ミドル級王座決定戦を同級1位のアッサン・エンダム(33、フランス)と争う同級2位でロンドン五輪金メダリストの村田諒太(31、帝拳)は、「倒して勝つ。それだけを考えている」と静かな闘志を燃やした。

 一方のエンダムは、サングラムをかけたままで表情を隠し「自分には村田にない経験がある。私は世界でもっとも優れたボクサーだ。勝つのは俺だ」と、元世界王者のプライドをのぞかせた。

 この日、恒例の試合で使用するグローブチェックは別々のグローブを使用するために行われず、前日にされることになった。世界のリングではボクサーの契約の関係上、珍しくないが、村田は日本製のウイニング、エンダムはアメリカ製のグラントのグローブを使用することになった。グラント製は操作性に優れたグローブだが、パンチのダメージに影響を与えるナックル部分の厚さは、ウイニング製と大差はなく、日本では、異例の別々のグローブの影響は、それほどない。逆に村田にすれば、慣れ親しんだいつものウイニング製を使えるというメリットの方が大きいだろう。

 世界で最も熱いミドル級の試合が日本で開催されることが奇跡的だが、エンダムは37戦35勝21KO2敗のキャリアを誇る。しかもその2敗は、2012年にピーター・クィリンに6度ダウンを奪われ、判定負けしてWBOのベルトを失ったタイトル戦と、2015年にIBFの王座決定戦で、デビッド・レミューに4度倒されながら最後まで粘って判定負けしたビッグファイトの2試合。「リスペクトしていた。ずっとテレビでも見ていた」と村田もエンダムを語るが、正真正銘のミドル級トップコンテンダーである。
 
 そんな強豪に世界初挑戦の村田は勝てるのか?

 実は、エンダムとスパー経験のある元世界王者がいる。WBOとWBAのミドル級の世界戦を2度経験、あのGGGこと統一王者のゲナジー・ゴロフキンとも2013年に戦った元WBA世界暫定Sウエルター級王者の石田順裕(現在、寝屋川石田ボクシングクラブ会長)が、米国・ロスでスパーを重ねていた頃に、エンダムとも拳を交えているのだ。その石田にエンダムについて聞く。

「先日、そんな言い方をしていないのに誤解を招くような記事にされたので」と、慎重に言葉を選びながらも「4、5年前の話なので詳しい記憶はないんですが、スピードと足、上手さを持ったボクシングをするタイプです。ミドルにしては体は小さかったですね。右のパンチの角度が、ちょっと独特なんですが、村田の固いガードがあれば防げると思います」という。

 エンダムは、基本ボクサータイプである。12ラウンド続く軽快なフットワークと多彩な左右に加えて少しオーバー気味に打ってくる右のパンチに特徴がある。サークリングをしながら、打ってはサイドに動き、また打ってはサイドと、手数で圧倒しリズムを作りながらチャンスを窺うスタイル。特に序盤はステップバックでパンチを外して自分の距離をキープすることを重要視している。おそらく村田も、第1ラウンドから序盤戦は、そのスタイルに翻弄されるだろう。

 それらの展開を踏まえた上で石田の予想は、村田の勝ちだ。