ロンドンで開催中の陸上の世界選手権で、競技場内に設置された2つの巨大な電光掲示板が、レースの戦術、戦略に利用されている。 ニューヨークタイムズ紙が報じたもので、女子400mハードルの決勝に進出したコリ・カーター(米国)は、「コーチは、最初の6ハードルは決勝のように走れと、それからスクリーンを見て他の選手がどの位置にいるかを見ろと言ったわ。私はそのように使っています」 と証言した。

 女子400mハードルのスパークル・マックナイト(トリニダード・トバゴ)も、同紙に「自分自身がビデオゲームの中にいるみたいで、時々、変な感じはする。でもすばらしいものだと思う」とコメントしている。

 ロンドンのスタジアムには、2つの大きなスクリーンがあり、進行中のイベントも映し出している。2つのスクリーンはカーブのところに設置されていて、選手たちはちらっと見ることができるという。

カーターのコーチは同紙の取材に、電光スクリーンは特に予選のレースで有効だとしている。
「右へ左へ振り返って他の選手が追いかけてくるのを見る必要はなく、正面のスクリーンを見れば良い」

さらに「イギリスのスター、モハメド・ファラーも1万m決勝の最終ラップのベルが鳴ったとき、ディスプレイを見上げていた。ファラーは彼のライバルがどこに位置取っているのか見たかったのだ」と、1万m3連覇の英雄も、スクリーンでポジショニングを確認していたと伝えている。

 逆に電光スクリーンを利用しなかった場合の失敗例が過去にあるという。

「女子1万mのモリー・ハドルは2015年の世界選手権で右肩越しに後ろを確認し、もうすぐゴールというところで内側から来たエミリー・インフェルドに抜かされた」

 ただ電光スクリーンを競技中に見ることに適した種目と、そうでない種目がある。使い方も状況によって異なる。
 1500mで2位に入ったジェニー・シンプソン(米国)は、「私はスクリーンは全く見ませんでした。映像は、ほんの少し遅れているし、変な感じがするから。今日のようなレースでは全力で走っているし、私の前方で起きていることを見ていい判断ができたと思う」と、話した。確かに、後ろから追い上げてくる選手は、スクリーンを見るよりも、自分の目で前を見て判断することができるのである。
 また100mや100mハードルなどの短距離ではスクリーンを見ている時間的な余裕はない。

 では、投擲などの競技はどうなのだろうか。
 砲丸投げの選手はライバルのポジショニングではなく、自分自身のフォームを確認するのに映像を使っている。米国のジョー・コバックスは同紙の取材に「規則が厳しいので、いつも使っているアップルウォッチも持ち込むことができない」と話し、スクリーンに映る自身のリプレイを見て修正していることを明かした。

 電光スクリーンの効能について書かれた、この 記事は女子400mクアネラ・ヘイズ(米国)の冗談めかしたコメントで締め括っている。
「私はいつもスクリーンを見ている。だって、故郷の人たちにとって自分が良いように見えているか確認したいから」

ロンドンの電光スクリーンは、他の競技場に比べて、競技者が見やすい位置に設置されているとも言われているが、競技施設の進歩は、競技者の戦術、戦略の移り変わりにもつながっているようである。