ボクシングのOPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチが2日、後楽園ホールで行われ、同級11位の清水聡(31、大橋)が、王者のノ・サミュング(25、韓国)に挑戦、激しい連打で5回1分54秒にTKO勝利した。ロンドン五輪バンタム級銅メダリストの清水は、これで昨年9月のプロデビューから4戦連続KO勝利。プロ4戦目での同王座獲得は、WBO世界ライトフライ級王者、田中恒成(畑中)に並ぶ国内最速記録で、陣営は「来年世界挑戦」を明言した。

 “コリアンスタイル”の洗礼を受けた。3ラウンドだった。何度も頭ごと突っ込んできた王者に執拗な密着戦を仕掛けられ、そこら中にパンチを浴びせかけられた。不覚に右フックももらう。
「びっくりした。頭でボディ打たれるんですから。パンチより頭をもらっている」
 たとえ決定的なダメージブローがなくとも、頭を下げた肉弾戦を強いられると、耐えている間に体力を奪われ、ペースを失っていく。

「昔のコリアンスタイル。あれで多くの日本人ボクサーがやられてきた。一度失ったペースを取り戻すのは簡単ではないから」。現役時代、張正九ら韓国の名ボクサーと世界戦で死闘を繰り返してきた大橋秀行会長が実感を込めて言う。

 この韓国スタイルに慣れないボクサーは、頭を嫌がり、もろに顔をのけぞらせたり、嫌がる表情や苛立つそぶりをついつい見せるものだが、清水は淡々と無表情を装い、コーナーに帰った。

「高校時代からの教え。常にポーカーフェイスであれと」と、試合後の回想。

 4ラウンドに入ると、清水はこれまでの距離をとり打ち終わりに左のカウンターを狙う戦術から、ファイティングスタイルを一変させた。

「本当はカウンターを決めて、打たさずに打って完全なボクシングで勝つもりだったけれど、僕自身の調子も悪く、反応やバランスも悪かったので、もう力でねじ伏せにいった」

 韓国スタイルの突進をインファイトで受けて立った。小刻みなパンチを連打。昨年からフィジカルトレーニングを取り入れスタミナにも不安がなかったから、残り時計だけを気にしながらエンドレスにコンビネーションブローを打ち続けると、1発、2発と、それが王者の顔面を捉えはじめ、コーナーに下がった韓国人王者はついにふらつき、崩れ落ちた。ダウン。ゴングに救われたが、5ラウンドに入っても清水のインファイトからの攻勢が続く。アッパーから、ワン、ツー、スリーの3連打を打ち込むと、ノ・サミュングの動きががくっと止まり、戦意を失ったことを確認すると、福地レフェリーはTKOを宣言した。
 激しい乱打戦を制したクライマックスに後楽園のファンは総立ちになった。

「たった1年でこんなチャンスをもらえてことに感謝しています。めちゃくちゃ嬉しい。」

 大橋会長は、「アマチュアの時間が長いほど、韓国スタイルが苦手になるものだが、よく切り替えた。あれは、レパード玉熊式だった」と言った。

 レパード玉熊。現在、レパード玉熊ジムの会長の元WBA世界フライ級チャンピオンである。
 1990年7月29日にレパード玉熊は、WBA世界フライ級王者の李烈雨(韓国)に挑戦、インファイトを挑み10ラウンドに2度のダウンを奪ってTKO勝利したが、まさにその試合が、頭を下げて突っ込んでくる相手に下がらずインサイドのパンチで応戦したもの。大橋会長は、その世界戦の動画をプロ転向後すぐの清水に「参考にしなさい」と送ったことがあるという。

「清水は手足が長いし、アウトボクサーだとイメージしていたが、ジムでのスパーリングを見ていると、今日みたいに打ち合うのが、持ち味なんだ。清水の魅力が試合に出た」
 大橋会長は、そう絶賛した。