WOWOWプライムにて放送中の「連続ドラマW 夜がどれほど暗くても」。中山七里の同名小説をドラマ化した本作は、週刊誌の世界で生きてきたジャーナリスト・志賀倫成(上川隆也)がある殺人事件の“当事者”となり、「追う」立場から「追われる」立場となりながら真実に迫っていく姿を描いた報道サスペンスだ。

今回、本作で主演を務める上川隆也にインタビューを敢行。自身が演じた志賀倫成という役柄についての印象や、シリアスな展開が続く本作を演じる中で感じたこと、共演者とのエピソードなど、さまざまな視点から語ってもらった。


■「ワンシーンごとに感じる手応えが間違いなくあった作品」

――まず本作「夜がどれほど暗くても」のお話を聞かれた際の感想からお聞かせください。

上川隆也:WOWOWさんとは何本も一緒に作品を手掛けさせていただいているので、ご提案いただく作品に何一つ不安は持っていないのですが、今回は特に主人公の志賀という男が僕のこれまでのキャリアを見返した中でも演じたことのないような人物像でしたので、そこが何よりも惹かれた部分ではありましたし、演じたいと思わせてくださいました。

――原作の中山七里さんの作品は、「テミスの剣」(2017年、テレビ東京系)に出演されて以来となるかと思いますが、中山さんの作品の印象についてはいかがですか。

上川:「テミスの剣」においては、ある信念を持って一つの事件に向き合う中で、さまざまな境遇に苛まれていくという役柄でしたが、今回は自分の立っている足場すらも瓦解していくような、己の信義さえも大きく揺るがされるような境遇に陥っていく役柄です。そういった点で、非常に目まぐるしく局面を変化させていく物語でもありますし、その先の読めなさも含めて、「ザ・中山ワールド」と感じました。

――先日中山さんにインタビューをさせていただいた際、「上川さんには従前の信頼があり、主演が上川さんと聞いた時には『もう何も言わなくてもいいな』とすごく楽になった」ということを仰っておられました。

上川:恐れ多いことです。演者として携わるにあたっても、「一筋縄では行かない感」というか、そこがそのまま演じ甲斐につながる作品ですので、今回もこう言っては何ですが、演じていながらも「手応え」のようなものを感じていました。

それは作品の重厚感から来るものなのかも知れませんし、扱っているテーマの重さにも通じていくものなのかも知れませんが、ワンシーンごとに感じる手応えは間違いなくあったように思います。


■志賀は「過酷な状況でも押し流されることのない人物」

――本作の台本を拝見させていただきましたが、志賀や岡田結実さん演じる奈々美の辛い心情描写が生々しく描かれていき、読み進めていくのが辛くなってしまうようなストーリーでもありました。上川さんは実際に台本をお読みになられていかがでしたか。

上川:読んでいる時は役が乖離しているというか、(物語を)読むことに専念してしまう部分があるので、むしろその展開の急変具合ですとか、物語全体の起伏の激しさなどを、言葉にちょっと語弊があるかもしれませんが、小説として楽しみながら読んでいた部分がありました。

ですので、いざ自分がその言葉一つ一つを口にして演じていくという局面になって、改めて彼が迎えていく、タイトルにもあるような「夜の暗さ」や「夜の深さ」を味わっていったように思います。

――今回上川さんが演じられる「志賀倫成」という役どころについて、当初感じられた印象をお聞かせください。また、演じる中でそれが変化していった部分はありましたか。

上川:やはり今仰られたように、読んでいる中でも彼の境遇はひとかたならぬものがあるんですが、志賀という男はそれに押し流されることがないんです。ですので、演じるにあたって(過酷な境遇に)押し流されないだけの拠りどころ、足の踏ん張りどころを見出しながら演じていたように思います。


■「もし志賀が普通のサラリーマンだったら、取っている行動は決して間違っていない」

――志賀は週刊誌の副編集長という立場でありながら殺人事件の加害者家族となり、世間から激しいバッシングにも晒されていきます。あらゆる角度から追い詰められていく志賀を演じることは心情的にも大変な部分があったと思いますが、演じていて難しさを感じた部分はどういったところでしょうか。

上川:確かに志賀の境遇はなかなかにヘビーなものなのですが、それは志賀がスキャンダルを中心としたスクープを扱う雑誌の副編集長という立場であったからで、彼がそうした仕事に従事していない普通のサラリーマンであったなら、志賀の取っている行動は決して間違っても、曲がってもいないんです。

自分の息子が殺人の容疑をかけられた上で自殺と見られる死に方をした。でもそこに疑問点があったので「息子は殺人犯ではないのではないか」という声明文を出した、というだけのこと。これは一人の親としてどなたでも思い至って当たり前の行動だと思いますし、そこに志賀の信念の一つがあると考えると、先ほどお話しした「踏ん張りどころ」というか、倒れないための手がかりになるなと思いました。

もちろん、それまで他人の重箱の隅をつつくような仕事をしていたことは事実ですが、志賀という男の粉飾を取り除いていくと、そのコアにある「親」という部分で子供に向ける愛情は、どなたとも変わらないものであって然るべきなのではないかと。なので、(役柄として)たくさん大変な目には遭わされますが、それが確信できてからは堪え忍ぶことができるものになっていったように思います。

――志賀の息子・健輔に対する「親として子供を信じたい思い」が、大きなバッシングを招きながらも事件の真相へと近づいていくことになりますが、そうした志賀の心情を上川さんとしてはどのように捉えていますか。

上川:志賀の心情を理解できるかということよりも、「子供を信じたい思い」がいかに普遍的なものであるかというところだと思います。僕には子供という存在はいませんが、それは肉親ということに置き換えれば容易に理解できる感情だと思いますし、それを想像するにあたって、また役柄に置き換えていくにあたっても難しいものではありませんでした。


■「岡田さんの体当たりの演技は、まごうことなき奈々美の心情を描き出していました」

――先日の中山七里さんへのインタビューの中で、原作小説を書く際のオーダーが「ほっこりしたものを書いてくれ」というものだったそうです。それを中山さんは「被害者遺族、加害者家族がお互いを傷つけながらも、最終的に『共感はできないけれど理解はしよう』となる姿」として描いたと仰っていました。ドラマでは本来交わることが許されない二人が関わっていくことになりますが、その部分について上川さんは演じていていかがでしたか。

上川:この作品は中山先生の原作小説を元にしていますが、原作であれば読者の皆さん、今回のドラマであれば視聴者の皆さんという、物語を見届けてくださった方にとっての「報い」が必要だと思うんです。それはやはり用意されているべきものだと。

中山先生もそれを「ほっこり」という言葉に置き換えて仰っていたのかもしれませんが、僕らも物語に携わる中で、ご覧になってくださった皆さんが「最後まで見てよかった」と思える報いのある場所へ向かって走っていきたいと思うんです。それは演者のやり甲斐という言葉に言い換えることができるかもしれませんし、実際この物語で最後に迎える報いはご覧いただくに値するものになったと思っています。

――被害者遺族である奈々美役の岡田結実さんは、「上川さんがすべてを受け入れてくださって、上川さんとでなければ奈々美は演じられなかったと思う」と仰っていました。岡田さんとのシーンは、感情を爆発させる奈々美と、ひたすらそれを受け入れる志賀という構図も多かったと思いますが、岡田さんと共演しての印象はいかがでしたか。

上川:岡田さんはすべてのシーンで何一つ手加減なく、体当たりで向き合ってくださったんです。僕の目にはそれが、まごうことなき奈々美の心情を描き出しているように見えました。岡田さんはとても素敵な言葉で表現してくださいましたが、それは「こちらもその時々に持てるもので相対していかなければ」と思わされるお芝居だったからに過ぎません。精一杯演じさせていただきました。

――シリアスなシーンが続く現場だったかと思いますが、撮影中の印象的な出来事はありましたか。

上川:「週刊時流」の編集長を演じてくださった高橋克実さんや、志賀が異動することとなる「月刊時流」の編集長を演じた鈴木浩介さんなどは、これまで何度もご一緒していて。それだけに、ハードな場面での芝居が多かったのとは裏腹に、カメラの回っていない時間は実に温和というか、気心知れた者同士だけにとても楽しかったです。


■「志賀や彼を取り巻く人物たちにどんな『夜明け』が来るのか見届けてほしいです」

――もともと志賀がいた「週刊時流」と、飛ばされる形で配属された「月刊時流」、それぞれの編集部でのシーンは演じられていかがでしたか。

上川:志賀にとっては、仕事を続けさせられることこそが針のむしろだったように思うんです。もし仕事を自粛できていたら、志賀にはまた違った環境があったのかもなという想像をしてしまうくらい、彼には公的に休まる時間は与えられなかった。でもそれがあったからこそ真相に肉薄していくことができたとも思うので、そこは功罪があったように思います。

特に今回加藤シゲアキさんが演じてくださった井波という男は、誰よりも志賀の行動を責めさいなむわけですが、志賀は彼と共にいることで、精神的にきついながらも自分自身を見つめ直していくことができたと思うんです。仕事があったからこそ、楽はできなかったし恵まれていたとは言いづらいですが、けれど真相を見い出せたという意味では、僕は志賀を「よくぞ耐えた」と讃えてあげたいとすら思います。

――その加藤シゲアキさん演じる井波と志賀は、当初は副編集長と編集部員として。その後は取材者と取材対象者として対立していくことになりますが、加藤さんとの共演はいかがでしたか。

上川:立場を超えて、それでも自分の信じるものを提示していくというのは、なかなかに辛い作業でもあると思うんです。でも加藤さんはそれを非常に冷静に、繊細にといった方がいいのかもしれませんが、きちんと井波というキャラクターを見つめて演じてくださいました。ちゃんと糾弾する言葉の中にも実が込められていたからこそ、志賀としての僕もそれを真正面から受け止めてお芝居することができた実感があります。

――最後に、本作の見どころを交えて視聴者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

上川:この物語のタイトルは「夜がどれほど暗くても」ですが、これに続く言葉がきっとあるんです。それは中山先生も仰っているように、「夜はやがて明ける」なんだと思うんです。その明けていくまでの物語ですので、どん底に突き落とされた志賀や彼を取り巻く人物たちにどんな「夜明け」が来るのかを、ぜひ見届けていただきたいと思います。