ありったけの熱量とメッセージを投げ掛け、多くの共感を呼び続けているロックバンド、BLUE ENCOUNT。ドラマ「ボイス 110緊急指令室」(日本テレビ系)、アニメ「僕のヒーローアカデミア」(日本テレビ系)や映画「青くて痛くて脆い」といった作品に提供した楽曲でも話題をさらってきた彼らがフルアルバムとしては2年8カ月ぶりとなる『Q.E.D』を完成させた。
■自分が成長するためにやったことがバンドの成長にもつながる

――フルアルバムとしては2年8カ月ぶりとなりました。この間、シングル3枚、ミニアルバム1枚を発表し、ホールツアーやライブハウスツアーも開催。常に走り続けてきた印象もありますが、やはりフルアルバムとなると自分たちを見つめ直したり、再確認するタイミングにもなるかと思います。振り返ってみて、この2年8カ月という期間はバンドにとってどういったモノになりましたか?

田邊駿一 ずっと忙しかったので、充実した2年8カ月だったかなと。昨年はメジャーデビュー5周年、バンド結成15周年ということもあり、ドラマやアニメの力もお借りして(BLUE ENCOUNTを)より知ってもらえた1年になりましたし。4人ともちゃんと高い意識を持ってやれてたから、成長の為に必要な日々だったなという感覚ですね。

――より知ってもらえたという実感はどういったところから感じましたか?

辻村勇太 例えば、MVに対して日本語以外のコメントがめちゃめちゃ増えたっていうのもここ近年だったりしますし。

――YouTubeのオフィシャルチャンネルにあるコメント欄、異国情緒たっぷりですよね。
辻村 そうなんですよ(笑)。アニメとか、いろんなタイアップもやらせてもらって、間口が広がった、受け入れてくれる人が増えたと感じてます。それは自信にもなりますし、素直に受け止めて次のステップへいけたらな、という感じですね。

――そうなると、バンドとしては順調に歩めた日々だったと。

辻村 もちろん、自分自身との戦いであったり、いろいろとありましたけど、今になって振り返ると、それも経験して良かったなと思えるぐらい。精神的にも高まってるなと思います。

――結束もより強固になったり?
辻村 そうなんですけど、それは個人が強くなったからこそ、なのかなって。

江口雄也 以前だと、しっかりある程度を共有しないとわかり合えないこともあったんです。でも、今はそこまで話し込まなくても大丈夫。効率的にも良い関係性を築けてるようになってると感じてますね。

高村佳秀 自分が成長するためにやったことがバンドの成長にもつながる。そうやってこれたかなと思います。
■素直な感情のままやれたからこそ、こういった作品になった

――今回の新作『Q.E.D』ですが、数々のタイアップで話題になった楽曲はもちろんのこと、今年に入ってから制作された最新曲や以前から温めていたアイデアが形になった曲も収録された、バンドの歩みと今が同居した内容になっていますね。

高村 ただ、そういう目算をしてたわけじゃないんですよ。このタイミングで自分たちが入れたい曲をセレクトしたら、という。

江口 だから、結果的にこうなったんです。

――では、完成してみての印象や手応えについては?

高村 制作するにあたって「こういうコンセプトの作品にしよう」みたいな話し合いはしてなかったのに、最初から最後まですんなり聴けるんです。想定した流れはなかったのに、完成してみたらちゃんとした流れになってる。そこがこれまでと一番違いところだったりもして。

――今のBLUE ENCOUNTに導かれた作品のような。

辻村 そういう表現の方がうなずけますね。型にハマることなく、素直な感情のままやれたからこそ、こういった作品になったというのがありますし。今まで、振り切ることが怖かった自分たちもいたんです。でも、(今回で)型にハマってやらないことにも自信が持てた。芯はBLUE ENCOUNTというモノがありますから。結果的に想像していた方向へちゃんと飛んだなという気持ちです。

――計画的に制作したモノよりもバンドとしては自信になりますよね。自然体で積み重ねていったら目指すモノとして仕上がったわけですから。

辻村 そこの直感をちゃんと信じられたのはデカいですね。

田邊 それが一番いい作品になるんだなと思いました。計画的に制作するのも大事ですけど、BLUE ENCOUNTは頭でっかちになって考えたときの足かせがすごいんですよ。考え過ぎて立ち止まってもしまうし。

――今回の制作の心境を言葉にするとしたら?

田邊 今のBLUE ENCOUNTが何を思ってるのか1曲1曲作ってみた、という感じですかね。今回は『この曲があるから次はああいう曲だね』みたいなことを考えずにやってて。それはそれで大変なんですけど、この作り方はすごく充実しましたし、個々のレベルが上がってることも実感できたり。とは言え、この2年8カ月の間にシングルもたくさん発表してますから、その自信も裏付けになってたのかな。それがないとできなかったと思う。

――積み重ねてきたことが背骨となっている。

田邊 そうですね。そう考えると、今回の作品はBLUE ENCUNTの歴史の中でも異質な存在なんですけど、BLUE ENCOUNTがいちばん表現できてる。これからもそういうモチベーションで作っていけたら、よりいいだろうなと感じてます。

――全体の流れや世界観も大事でしょうけど、そのためには1曲1曲の強さが必要だと。

田邊 サブスクリプションサービスが利用されるようになって、1曲1曲というモノがよりフィーチャーされる時代になっているからこそ、そういった強さが必要だと思います。そういう視点で考えると、今回の作品はどの曲から聴いてもBLUE ENCOUNTを好きになってもらえるだろうな、というところに特化して作ったところもあって。全ての曲がその人のテーマ曲になってもいいような気分で取り組んでましたから。
■(横浜アリーナは)目指すところではありますけど、そこがゴールだとは思ってない

――全体的な印象としては、まず「STAY HOPE」で始まり「喝采」で終わるのがグッときたんです。SNSにおける誹謗中傷で痛ましい事件もありましたし、そういった風潮にNOを突きつけながら、確かな未来を共に信じようというエネルギッシュな「STAY HOPE」、自分自身を許したり、肯定して、未来を信じる大切さを歌う「喝采」。その力強いメッセージもそうですが、BLUE ENCOUNT自体にすさまじい生命力があるんだろうなという想像もしました。

田邊 生命力はこの15年で今が一番あると思いますね。

辻村 昔は暗闇の中をかき分けて進んでるようなところもあって。しかも、その先に何があるのか、この行為が合ってるのかも分からないけど、後ろには下がりたくないみたいな。

田邊 でも、今はBLUE ENCOUNTという存在が、屋久島の杉のような、みんなが集まってくれたり、それぞれが抱えてきた何かが浄化されるような場所になればいいなと考えてて。ロックバンドの形はいろいろあるけれど、僕ら4人が好きなバンドや音楽はそういうモノでしたから。

――「STAY HOPE」では「”匿名”な中傷(コトバ) たちはまた命を奪った」、「喝采」では「必ず陽はまた昇る 諦めなかった命の先で」と歌詞で綴っていて。命という言葉をストレートに使われたことに驚きもありました。

田邊 今のBLUE ENCOUNTのマインドが投影されてますね。同じ言葉が出てくることに関しては本能的というか、制作してるときはその曲しか見えないんで、振り返ったときに『この言葉を使ってるな』と気付いたりするぐらいだったりもするんですよ。それに1曲1曲と向き合っていけば言葉を選んでる暇はないなと思ったりもしますね。

――話題になったタイアップ曲も多数収録されています。 TVアニメ「BANANA FISH」のオープニングを飾った「FREEDOM」は、シリアスさをまとった鋭い曲ですね。

江口 作ったときのモチベーションに引っ張られてるところもあるんですけど、逆境に立ち向かう気持ちになる曲ですね。

――『BANANA FISH』は長年愛されている作品ですし、苦労もあったのかなと。 田邉 でも、僕はあの時代のハードボイルドが好きなんでめちゃめちゃ早く完成したんですよ。

江口 これ、めっちゃ早かったよね。

田邊 お話をいただいて、曲を作っていこうと押さえたスタジオの最寄り駅から歩いてる道中の信号待ちのときに浮かびましたから(笑)。

辻村 田邊がもともと持ってる世界観の一つでもあるし、完成するまでも早かったですね。

――BLUE ENCOUNTはタイアップに対する流儀があるともお聞きました。

田邊 流儀というか、礼儀みたいなところだと思うんですけど、第1話や第1巻をしっかり読解する。そこには物語が進んでいくためのヒントやルールがあるから、そこに特化して曲を作ると意外と結末まで絡んでいくんですよ。

――確かに、物語の導入にはそういったモノが必ず存在してますよね。

田邊 そうなんですよ。主題歌って、最終話だけじゃなくて、第1話からずっと流れていきますし。全てを踏まえないと書けないと思うんです。そこは常に気をつけてますね。

――アニメ『僕のヒーローアカデミア』のオープニングテーマでもある「ポラリス」は絶妙な疾走感がありますけど、その勢いで突き進むというよりも、温かく包み込むような印象があります。

田邊 温かさという部分は、ヒーローは守るっていうところがあって。

――『僕のヒーローアカデミア』で描かれるヒーロー像ですね。

田邊 そうですね。ただ、その守るヒーローにも憧れたヒーローがいたわけで。そのヒーローに守られてるっていうのがある。ゼロの状態でヒーローいなった人なんて絶対にいないから、っていう感覚で作りました。

――ドラマ「ボイス 110緊急指令室」の主題歌だった「バッドパラドックス」 はバンドとして新たな境地を切り開くキッカケになったそうですね。

高村 プロデューサーとして玉井(健二)さんが加わることによって、みんなの視野がまた広がったんです。音作りやアレンジ、いろんなことにチャレンジできるキッカケになりました。

――イントロからサスペンスドラマによく似合う緊迫感がありつつも、開放的な浮遊感のあるサビがあって。歌詞も希望を願うけど、不条理な今も受け入れてます。その幅がリアルに寄り添って響いてくれるなと感じました。

田邊 サスペンスドラマであのダンス感ってあんまりないですよね(笑)。そういったことも含めて、アンビバレンツな感じを出したいと思ったんです。

――今年9月にシングルとしてもリリースされた「ユメミグサ」は以前から温めていた曲に新たな息吹がもたらされたんですよね。

江口 ずっと出したいと新作の会議でもずっと話に上がってた曲なんです。ただ、その度にトライしては「何か違うかもな」っていうことになってて。だから、この曲はバージョン違いがたくさんあるんですよ(笑)。そんな中、僕がずっと愛読している住野よる先生の作品が映画化され、その主題歌というお話をいただき、玉井さんの力もお借りして、ようやく自分たちが思い描いた形になりましたね。

――感慨深い1曲になりましたね。

江口 まず「完成して良かった」と思いました。田邊が制作の度にいっぱい曲を作るので、完成せずに死んでいく曲もたくさんあるんです。自分たちのアレンジ力が未熟なのか、そういうタイミングじゃないのか、それは分からないんですけど。だからこそ、出したいと思った曲をしっかりとした形にできたのがうれしいし、自分たちもちゃんと成長したんだなという実感もできますから。

――作品の中盤、「VOLCANO DANCE」と「HAPPY ENDING SONG」の並びは強烈ですね。

江口 「VOLCANO DANCE」は以前からあった曲ではあるんですけど、ここまでぶっこんだアレンジはしてなかったですね。今のBLUE ENCOUNTで取り組んだ結果、これぐらい激しい曲になりました。

――振り切ろうと考えたわけじゃなくて、結果的に振り切れた曲になったという。

田邊 そうですね……というか、そんなことを考えず、とりあえずテンションが上がる曲を作ろうっていうだけでしたから(笑)。歌詞に命とかが意図せず出てくるように、僕らはそんな感覚で曲を作ったり、以前のアイデアを呼び起こしたりしてるんですよ。

――「あなたへ」はしっとりと歌い上げる曲かと思いきや、壮大なスケール感を誇る曲として仕上がってますね。

辻村 この曲は挑戦した感があります。

田邊 僕の中でも初めて作った(アプローチの)曲ですね。その新鮮さもあるし、また一つ開眼した気がしてます。

――会場が大きければ大きいほど、いい響き方をするような予感もします。

辻村 みんなでクラップしながら歌えるようになれば。僕らだけじゃない画が見える、感じられる曲なんですよ。それらが一つのデカいエネルギーになるような、そういう可能性を持ってると思ってますね。

――こういった充実した作品が完成すると、普段ならツアーについてお聞きするんですが、昨今の社会情勢もあり、通常の形では開催できないですよね。現在、来年4月に横浜アリーナでのワンマンが発表されていますが、バンドとしてはそこへ向かっていくような流れでしょうか?

田邊 もちろん(横浜アリーナは)目指すところではありますけど、そこがゴールだとは思ってなくて。今年はイレギュラーなことに対して毅然とした動きを整える為の1年でしたから、来年以降はバンドとしてはもちろん、ひとりひとりの戦い方でちゃんと居場所を勝ち取るようにしたいですね。