“朝ドラ”こと連続テレビ小説「おちょやん」(毎週月〜土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は一週間の振り返り)第6週「楽しい冒険つづけよう!」では主人公・千代(杉咲花)が京都で、山村千鳥一座に入団し、主役の座を射止める。そこに至るまでの道のりは過酷で、座長・千鳥(若村麻由美)はなぜか千代に「いやがらせ」をし続けた。朝ドラ名物“ヒロインに意地悪するキャラクター”について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が、「おしん」「半分、青い。」「おちょやん」などを振り返りつつ、その変遷を解説する。(以下、一部ネタバレが含まれます)


■「おちょやん」では座長・千鳥が千代にいやがらせ
「おちょやん」第6週のサブタイトル「楽しい冒険つづけよう!」は、千代が急遽、代役で主役を演じた「正チャンの冒険」で、本番中のアクシデントを乗り越えるためとっさにアドリブで放ったセリフ。これが観客に好評で、千代の初主演作は大成功となった。だがそこに至るまではいろいろと大変なことがあった。なにしろ、座長の千鳥がこわい。演技のことをほぼ何も教えてくれず、劇団員に怒鳴ったり、ものを投げたりするばかり。

ど新人の千代は、四葉のクローバー探しや、新聞の誤植探しなど雑用をやらせて稽古の時間がとれないように「いやがらせ」されていた。結局、その「いやがらせ」は本当のいやがらせではない部分もあったようで、千代の役に立つこともあったのだが、物語によくある、実は特訓だったという明確な狙いがあったというわけでもなく、千代が自力で成長と成功を勝ち取ったという印象。

千鳥は、過去に辛い目にあい、世間に対して心を閉ざした陰キャになっていたが、千代のどんなときでも前向きな生き方を見て、心を入れ替える。

■平成に入ると“嫁いびり”少なく
この千鳥にようにヒロインをいじめるキャラは、朝ドラには珍しくはない。頻繁にそういうキャラが出てくるといっても過言ではない。若村麻由美は、「純と愛」(2012年度後期)でもヒロイン純(夏菜)に意地悪する役をやっていた。「純と愛」の場合は、若村が演じた役のみならず、ヒロインに辛く当たる人物がとても多く、これはこれで朝ドラには珍しいパターンであった。

たいていはひとり、印象に残る意地悪キャラが出てくる。姑や小姑、学校の先生や同級生、会社の上司などが悪役を担うことが多い。代表的なのは、「おしん」(1983年度)の姑(高森和子)。ヒロインおしん(田中裕子)にとにかく辛く当たり、演じている俳優まで視聴者に嫌われてしまったという伝説が残っている。嫁いびりする姑は昭和のドラマの定番だった。

それが平成に入ると、親と同居する生活が減ってきて、徐々に嫁いびり描写は少なくなっていく。「ごちそうさん」(2013年度後期)の小姑(キムラ緑子)のヒロインめ以子(杏)虐めがなかなか辛辣で話題になったのと、「マッサン」(2014年度後期)のヒロイン・エリ−(シャーロット・ケイト・フォックス)の姑が、おしんの優しい母を演じていた泉ピン子が真逆の意地悪姑を演じていたことで注目された。

■学校や会社の関係者もいやがらせを…
意地悪な他人だと、「おひさま」(2011年度前期)のオクトパスこと飯田先生(近藤芳正)。ヒロイン・陽子(井上真央)の女学校の英語の先生が口うるさい人だった。

「とと姉ちゃん」(2016年度前期)のヒロイン常子の就職先の総務課長(田口浩正)は男女差別の激しい人で、女子社員をあからさまに軽視した。また、電機メーカー社長(古田新太)は後半のラスボス的存在で、雑誌で製品の性能テストをやっている常子たちにいやがらせをした。これはとてもわかりやすい悪役だった。

「べっぴんさん」(2016年度後期)のヒロインすみれ(芳根京子)の女学校の同級生の悦子様(滝裕可里)も最初はお高く止まって威張っていた。

いずれも、ちょっといやな感じというくらいで、見ていて辛くなるほどの虐めはない。最初は意地悪だったけれど、じょじょに味方になっていくというパターンもあって、その大成功例は「スカーレット」(2019年度後期)の大久保さん(三林京子)。ヒロイン貴美子(戸田恵梨香)が大阪で女中修行する際、仕事を厳しく教え込む。厳しさの裏の愛情が大人気で大阪編が終わったあとも再登場を強く望む声が頻出した。

■時代に合わせ“いじめキャラ”は減ってきている
なにかとハラスメントとされる昨今は、たとえフィクションであろうと、徹底的な悪役よりも、大久保さんのような愛ある厳しさが好まれる。

「半分、青い。」(2018年度前期)のヒロイン鈴愛(永野芽郁)の漫画の師匠・秋風(豊川悦司)も最初はいけすかない変わり者で、鈴愛を雑用係としてこき使った。この感じはすこし千鳥に似ている。が、彼もやがて鈴愛に深い愛情を寄せる師匠になり、大人気キャラになった。

「おちょやん」では、父親(トータス松本)も継母・栗子(宮澤エマ)も、久しぶりに明らかにハラスメント的な行為をしている人物として描かれているが、道頓堀・岡安のシズ(篠原涼子)も女中頭・かめ(楠見薫)も、カフェーキネマの人々も、京都の千鳥も、意地悪かな?と見せてそうでもない。

ただ、第30回に出てきた鶴亀撮影所の大部屋女優たちはなかなか“いけず”そうである。第7週でも彼女たちのいけずは続くのか、それともあっという間に千代の味方になるか、刮目して待ちたい。