「で、結局…誰推しなの? バレンタインなんだし。ラブレターなんだし。書いてよ」

なんだし、なんだしって、AGCかよ。
わざわざ先を急ぐ人間を呼び止め、何かと思えば。

ちなみに彼の言うラブレターというのは、ライブリポート。その表現は間違いじゃないかもしれないが、質問は的外れ。決していい子ぶっているわけではなく、月並みな答えだが「ハコ推し」ですから。

いや、そもそも推しとか推さないとかじゃなく、リスペクトすべき相手なので次元が違うというか。

案の定、つまんないヤツだなという顔をされたので…今度誰かに聞かれたら「TPDしか勝たん!」とだけ言っておこう。押忍。

って、誰も興味がないおじさんの戯言にどんだけ文字数使ってるんだ。

6人組ガールズグループ・東京パフォーマンスドール(通称:TPD)が、2月14日に東京・渋谷ストリームホールにて2021年初のワンマンライブ「St.Valentineʼs PREMIUM DANCE SUMMIT」を開催。3部構成のうち、WEBザテレビジョンでは2部のライブリポートを送る。

例年であれば、チョコレートを渡し合ったり、至近距離で愛の告白をしたり、寒い中でも街にはホットなカップルがあふれていることが多いバレンタインデー。

そんなささやかな楽しみすら、例のウイルスのせいで奪われつつある2021年。

まあ、ウイルスがあってもなくても女性からはソーシャルディスタンスを保たれがちなモテないメンの筆者には、“水曜日”くらい記憶にない日だが…。

そんなことを考えているうちに、客席を含めいつもとは趣を異にする雰囲気となった渋谷ストリームホールが暗転。こんなウエイトレスがいたら行列は必至だろうな、というかわいらしい衣装に身を包んだ6人が入場してきて、1曲目はバレンタインデーのセットリストにはピッタリの「Lovely Lovely」だ。

よく見ると珍しく全員そろってお腹出しの衣装で、見ているこっちが照れるくらい初っ端から愛と笑顔を振りまいていらっしゃる。

この時点で、どんなチョコレートをもらうよりも甘〜い夢心地を味わっていると、2曲目にはあのアツい夏のリリイベを想起させる「SUPER DUPER」。

現場で聴いたのは2019年のクリスマスライブ以来かな。このキュートな衣装にもピッタリだし、久しぶりに生で聴いたこともあってか、ある意味新しい「SUPER DUPER」の扉を開いたような味わい。

曲が終わっても、発音が抜群に良かった高嶋の「ハッピーバレンタインデー!」が耳から離れずに残りつつ、3曲目は「Collection feat.☆Taku Takahashi(m-flo)」。

普段と違って客席もソーシャルディスタンスのおかげでステージがよく見え、特に今回あらためて感じたが、振りや曲のカッコ良さだけでなく、メンバーそれぞれの振りに合わせての表情の変化もいいなと。

特に場所的に脇あかりの細かい表情の変化がよく見えて、興味深かった。チューリップとチューベローズは間違えても、ステージの脇は間違えない。

さらに、リリイベでよく聴いた思い出が一気にフラッシュバックする曲「Glowing」へと続く。

そのイントロで、上西星来が「バレンタイン当日に来てくださりありがとうございます!」と言いながら、指ハートをしてくれるなんて、それこそ特別感というか、キュンですな。

みんな大好きポニーテールをしてくれただけでも優勝なのに、それに加えて指ハートまでしてくださるなんて…、ずっとバレンタインでいいのに。それにしても、“上西一族”はポニーテールがよく似合う。

そして、ここからはソロ・ユニットコーナー。そのトップバッターは櫻井紗季、浜崎香帆、脇による「BEGIN THE 綺麗」。この3人なら何でもできそうだなという期待感もありつつ、キャラの対比も含め、実にバランスが良い。間奏で一人一人がスポットライトを浴びて踊るところも、しなやかで美しい。3人とも体幹も素晴らしいな。

次は、本人も「久しぶりに歌った!」と興奮気味に振り返っていたが、上西のソロ曲「恋」。
衣装チェンジで、おなじみのWILLSELECTIONのワンピースを身にまとい、さながら渋谷ストリームホールがファッションショーのランウェイのよう。

堂々としているのは歩く姿勢だけでなく歌声も。現在アネシュカ(「キオスク」)なうということもあってか、ステージ度胸を感じる歌いっぷり。

舞台本番、リハ、雑誌などの撮影とあってもちろん疲れはあるだろうが、それを言い訳にしない立ち居振る舞いはお見事だ。

そして、ブラック系のドレスにキラキラなあしらいがにぎやかなリーダー・高嶋は、一瞬で会場をソロリサイタルの空間に変えてしまうような存在感とボーカルで「Be alright」を。

個人的にはテレビでお笑い番組を見るより、彼女の配信をずっと見ていたいくらい面白い方だが、“本職”はこちら。しっとり歌う姿もとても魅力的で、「いいね」ボタンがいくらあっても足りないくらい。

ディーバのステージが終わるか終わらないかのタイミングで、両サイドからすごい勢いで美女2人がやってきた。浜崎&橘二葉というコレオグラファーとしても才気あふれる2人による、色気たっぷりな楽曲「BURN ME OUT」。

ソロリサイタル会場が一気にクラブに様変わりしたような感覚を味わっていると、ユニットならうちらにお任せ!とばかりにグループ内ユニット・赤の流星のおでまし。

イントロを聴いた瞬間、思わず「やった!」と心の声が漏れそうになったが、個人的に最も好きな流星ソング「Into The Night 〜夜に落ちて〜」を歌ってくれた。

もらったセットリストには、さりげなく「〜恋に落ちて〜」と普段とは違うサブタイトルが付いており、なるほどどーりで「流星沼」に引きずり込まれそうになったわけだ。何度でも言うが、赤の流星のワンマンライブもそろそろ見たい。

そして動画撮影ができるというアナウンスが入り、新企画「SHOOTING TIME」へ。

バレンタインということもあり、メンバー6人がそれぞれ入れ代わり立ち代わり後輩から先輩へ告白する、というシチュエーションでショートコント…いや、キュートな告白芝居を見せてくれた。

同い年の組み合わせ、年下から年上の組み合わせもあれば、年上の浜崎から橘、上西から脇のような先輩後輩逆転の組み合わせもあり、むず痒いような、ほほ笑ましい空気が会場を包んだ。

そして後半戦へ突入。後半の1曲目は「Hey, Girls!」だが、ここまで撮影OKという大盤振る舞い。

高嶋の「後半戦も盛り上がっていきましょう!」という掛け声から、ファンがカメラを構えていることもあってか、配信ライブで培ったカメラに目線を合わせるテクニックを駆使し、多くのファンカメラマンに視線を送り、盛り上げていく。

続いて、先代とのコラボ曲として12月のワンマンライブでも披露した「放課後はいつもパーティー」を、今度は6人バージョンで。浜崎&橘コンビが振りを担当したということで、キャッチーなメロディーにピッタリな、思わず一緒に踊りたくなるような楽しい時間に。

さらに「Honey! Come Come!」では、その橘からの「クラップをお願いします!」という呼び掛けから始まり、櫻井師範による伝家の宝刀“いさきカットイン”もさく裂していた。

そしてじょにーの歌い出しもバレンタイン仕様で少し柔らかい印象を受けた「現状打破でLove you」に、ハートを持った振り付けもおしゃれな「Kiss x Bang Bang!」。そこから一気にクールでダンサブルに畳み掛ける「HEART WAVES」でファンの心をとことん揺さぶり、指ハートや頭上の大ハートを駆使して会場中をハート色に染めた。

本編ラストは彼女たちのCDデビュー曲「BRAND NEW STORY」。高嶋の「この曲でラストになります」に寂しさを感じつつ、Aメロ歌い出しの“じょにふた”コンビの姉妹感にほっこり。

いつもの間奏、橘から高嶋の“見せ場”も、普段とは違うハートがあふれる特別バージョンで届けてくれた。この手のハートを駆使した動きをさせたら、ふたぁ様の右に出る者はいないといううわさ。ええ、尊いですね…。

いやはや、眼福ここに極まれりなライブだ。それに、心から楽しんでライブをしていることはTPD6人の表情を見れば明らかだし、ファンの拍手の温度を聞いても会場中が幸せなハートに包まれているのは明らかだった。

本編がこれで終わり、通常だと「TPD!」コールが飛び交うアンコールへ。もちろん今回は拍手でTPDを迎えた。

ラフな格好でアンコールに登場した6人。バレンタインならではの演出の感想や、告白シーンの振り返り、アネシュカなうの上西は舞台裏で円陣を組んだ時に背中をたたく強さがいつもよりパワフルだ、という浜崎からの密告など、自然体のトークを繰り広げた。

そしてラストは2020年に配信リリースされた「TALES」。この曲は、MCからの流れということもあってファンは静かに座って聴き入った。

歌詞がいいのは今さら特筆すべきことではないが、メンバーの歌声をしっかり味わえるソロパートしかり、随所に大村俊介(SHUN)氏のこだわりを感じる振り付けしかり、未来へ向かうTPDの前向きな思いがちりばめられているような気がして、聞くたびにワクワクする。

最後まで笑顔のパフォーマンスを展開し、深々とおじぎをするとともにファンに感謝を述べ、ライブは終了した。

この日は久々の3部構成でのワンマンライブということもあって、メンバーも体力に不安があったのではないだろうか。

さらに大事なワンマンライブの前夜に大きな地震もあり、不安で眠れなかった人もいたかもしれない。

それでもひとたびステージに上がると、そんなことを微塵も感じさせないパフォーマンスと笑顔の6人がそこにはいた。

まだ未曾有の緊急事態は続くかもしれないが、これを乗り越えた先に彼女たちが見る世界は、昨日までよりも広く大きなものになっていることを祈りたい。

われわれも推し…ではなく、その後押しを微力ながらできればと。ファンの方々に負けないくらい、愛を込めて応援していくつもりだ。

ということで、TPD先輩…今夜は月がきれいですね。


◆取材・文=蒼野星流