“朝ドラ”こと連続テレビ小説「おちょやん」(毎週月〜土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は一週間の振り返り)第16週「お母ちゃんて呼んでみ」は、千代(杉咲花)と一平(成田凌)夫婦の家に身寄りのない少年・松島寛治(前田旺志郎)が居候することに。同週最終日である金曜日には、千代と寛治に“絆”が生まれ、視聴者の感動を呼んだ。ホームドラマである朝ドラは、血の繋がりのない家族の絆を描くこともある。朝ドラ内での、養子など血縁関係のない“家族”について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。(以下、一部ネタバレが含まれます)


■千代はお母ちゃんになろうとする
「おちょやん」第16週は昭和12年、日本は日中戦争の好景気に沸いていた。千代と一平が結婚して8年ほど経過したが、女優の千代と劇作家、演出家、俳優である一平が、それぞれ芝居に力を注いでいるためか子どもはいない。根っから世話好きの千代にとって、手のかかる劇団員たちが子ども代わりになっている。

あるとき、親を亡くした松島寛治を1カ月ほど引き取ることになった。俳優である父に厳しくされ、俳優の道を諦めるのみならず人間不信に陥っている寛治の「お母ちゃん」代わりになろうと、千代は懸命に接するが……。


■「おちょやん」のケースに似ている朝ドラは……
朝ドラは半年間の放送のなかで、ヒロインが結婚して子どもができて、その子どもたちが成長していくという流れが描かれることが少なくない。

前半は、ヒロインは父母や祖父母の愛に育まれながら成長していく様子を描き、後半になると、ヒロインが結婚し、母になり、その子どもたちの成長を見守る物語になっていく。

「おちょやん」では千代と一平に子どもがおらず、親のない子の面倒を見ることになった。このパターンが朝ドラには時々ある。まだ記憶に新しい前作「エール」(2020年度前期)ではヒロイン・音(二階堂ふみ)の姉・吟(松井玲奈)は、夫・智彦(奥野瑛太)が戦後、闇市で出会って年齢を超えた友情を結んだケン(松大航也)を養子に迎える。

智彦とケン、吟とケンのどこか友達のような関係は爽やかだった。このケースが「おちょやん」の千代と一平と寛治の関係と最も近いであろう。

■朝ドラに多い戦災孤児
戦争で孤児になった子どもを描くことが朝ドラではよくあって、「なつぞら」(2019年度前期)では主人公・なつ(広瀬すず)が戦災孤児だった。

東京大空襲で母と生き別れ、兄妹三人で生き延びようとしたが、離散。なつは北海道の柴田家に引き取られる。ただ、苗字だけは本当の親の奥原を名乗っていた。

なつは育ての親に恵まれたが、妹・千遥(清原果耶)は親戚に預けられ冷遇されて家出する。置屋を営む家の子になったことでなんとか落ち着いた生活ができるようになるが、なつと再会したときの千遥には、どこか憂いがある。

また、兄・咲太郎(岡田将生)はひとりでなんとか生きていたが、劇場でダンサーをやっていた亜矢美(山口智子)に引き取られ、母子のような姉弟のような、判然としない関係のまま肩寄せ合って暮らすことになる。

戦争で離れ離れになった三兄妹が、各々別の家族に育まれて生きてきて再会するという構造は、ドラマティックかつ戦争の残した問題の提起にもなっていた。

現在再放送中の「花子とアン」(2014年度前期)ではヒロイン・花子(吉高由里子)の妹・かよ(黒木華)は関東大震災で恋人を失ったのち、戦争を経て身寄りのない子を引き取る決意をする。未婚のかよが子どもを育てることは「なつぞら」の亜矢美のケースと近い。亜矢美もかよも亡くなった恋人に操を立てつつ、若い命を育てようとしている。そこには希望がある。

■戦前や高度経済成長期にも養子が

戦争とは関係なく養子をとる場合もある。「マッサン」(2014年度後期)のヒロイン・エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は流産し、そのあとエマ(木南晴夏)を引き取る。

「ひよっこ」(2017年度前期)は高度経済成長期の物語だが、ヒロインみね子(有村架純)が働く洋食店・すずふり亭の近所の中華店を営む夫婦(光石研と生田智子)が養子をもらう。

また、「エール」の主人公・裕一(窪田正孝)が親戚の家に養子に出されそうになるエピソードもあった。大事なのは“家”であり、家を継ぐために子どもを生み育てる。だから、子どものない家は、親戚の子や血の繋がらない子を引き取って家を継がせることもあるのが当たり前だったことも朝ドラは時々描いているし、家に関係なく、親のない子に手を差し伸べる人たちの姿も描いている。

“朝ドラ=ホームドラマ”としての楽しくあたたかい家庭が描かれる印象も強いけれど、家族の形はひとつではない。別視点で映し出すことが朝ドラにはあって興味深い。

■親も子もそろって孤独な「おちょやん」
「おちょやん」では千代も一平も親の愛情に恵まれていない。そのふたりが結婚し、「家庭劇」という劇団を作り、お芝居のうえで「家庭」の形を模索していく。彼らが上演するお芝居では、泣ける家族愛が展開し、舞台を下りた現実は、どこか乾いた風が吹いているのだ。

今回、天涯孤独の寛治が加わって、三人そろって“孤独”というなかなかハードボイルドな家族となった。戦後、親が戦争で亡くなって孤児になったケースに限ったことでなく、現代はあらゆることに多様性が認められる時代。

家族だって、血の繋がっている者同士ではない結びつきの可能性がある。たくさんの人が見る朝ドラはさまざまな家族の形を描くトップランナーであってほしい。