K-POPの勢いが止まらない。2021年も、BTSの大ヒット曲「Dynamite」が韓国出身アーティストとして初めて米グラミー賞(最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門)にノミネートされ、オーディション番組「I-LAND」から生まれた新人グループENHYPENが2ndミニアルバムのタイトル曲「Drunk-Dazed」で世界14の国・地域のiTunesトップソングチャート1位を占めるという沸騰ぶりだ。

その一方で、K-POPアイドルのファンダム(ファンの集団)は非常に熱心であるがゆえに、初心者にとってはややハードルが高いのも事実。“センイル(誕生日)”や“スミン(ストリーミング再生)”、“ヨントン(テレビ電話)”など、ほかではなかなか見かけない用語も多い。

いきなりそんな“沼”には飛び込めないけれど、K-POPの魅力を味わってみたい。そんな思いにこたえる番組が今、ABEMAで放送されている。人気ボーイズグループ6組がK-POP界の王座を懸けてパフォーマンス対決を繰り広げるサバイバル番組「KINGDOM : LEGENDARY WAR」(毎週木曜夜7:50−、ABEMA SPECIAL)だ。

■プロ同士の白熱したパフォーマンスバトル
「KINGDOM―」は、「I-LAND」も手掛けた韓国「CJ ENM」によるサバイバル番組。

参加グループは、BTOB、iKON、SF9、THE BOYZ、Stray Kids、ATEEZの6組。いずれも、音楽番組で1位に輝いたり、新人賞受賞歴やYouTube視聴回数1億回超えなどの実績を持つ実力派。彼らが、毎回与えられたテーマに沿ってパフォーマンスを繰り広げ、自己評価+審査員評価+視聴者投票+ストリーミング再生回数の総合点で順位を競う。MCを務めるのは、大先輩の東方神起だ。

最大の見どころは、人気グループがそのプライドを懸けて繰り広げる渾身のパフォーマンス。一口にパフォーマンスと言っても、音楽番組などで見られる“通常の”それとはまったく違う。

コンセプトの意図を満たし、少しでも高い評価を得てライバルグループに勝つため、曲のアレンジに始まって、ステージのセットや衣装、ダンスやフォーメーションなどすべてを一から練り直す。時には2曲をマッシュアップ(混ぜ合わせ)し、原曲とはまったく雰囲気の異なる作品が生まれることも。紛れもなく、プロ同士のバトルなのだ。

初回では、6組の顔合わせを兼ねた“100秒パフォーマンス”が行われ、その後、第2・3回で「1次バトル」前後編、第4回と29日(木)放送の5回で「2次バトル」前後編の模様を放送しているのだが、そのパフォーマンスはどれも圧巻。壮大な世界観と緻密なストーリー、美しい情景を作り出し、そこに鍛え上げられたダンスと歌唱パフォーマンスを乗せていく。1曲1曲が“4分間の総合芸術”と呼びたくなる完成度なのだ。

初回の100秒パフォーマンスで屈辱の最下位となってしまったiKONは、1次バトルでさわやかなラブソングとハードなヒップホップ曲を組み合わせ、ミュージカル調にアレンジ。トレンチコートをなびかせ踊るスタイリッシュなステージングはK-POPをよく知らない視聴者も引き込むエンターテインメント性に満ちていて、iKONを知らなかった層をも魅了した(この模様は2話に収録)。

1次バトルで「カリブの海賊」をコンセプトにした演出を思いついたのは、6組中一番の“末っ子”グループ・ATEEZ。ステージに大きな海賊船のセットを作り上げ、勝負曲「WONDERLAND」とドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」をマッシュアップ。船長のような衣装のメンバーがラップを聴かせたあと、サビでは巨大なタコの足が船内を襲うというアドベンチャー要素も盛り込んだ。最高潮の盛り上がりの中、クライマックスはメンバー・ジョンホの超ハイトーンボイスと、まるで一本の映画のような完成度の高いパフォーマンスを作り上げた(この模様は3話に収録)。

■先輩アイドルの名アドバイスも光る舞台裏

そして、そのステージを作り出す舞台裏もじっくり見せる。

まず、メンバーたちが話し合って勝負曲を決める。そして、コンセプトから曲のアレンジ、ステージの演出に至るまで、アイデアを出し合って練り上げていく。

100秒パフォーマンスで1位を獲得したStray Kidsは1次バトルでプレッシャーに苦しみ、先輩グループ・2PMのウヨンのアドバイスを受けることに。ウヨンから「集中させるのではなく“無”にする。自分の中で、『どうしよう、どうしよう』と考えちゃうんだよね。でも、その状態でステージにあがったらダメ。イメージトレーニングをたくさんしないといけない。(本番は)自信を持たないと」とアドバイスを受け、メンバーたちは発奮。細部まで作りこまれた幻想的な世界観で、4分間片時も目を離せない圧巻のステージを作り上げた(この模様は3話に収録)。

アイドルだって悩むし、プレッシャーに負けそうになることもある。だが、そこからの胆力がプロたる所以。“自分たちならできる”という強い気持ちを胸に、時には未知のジャンルに挑戦し、時には基本に立ち返って見事なステージを作り出す。その過程は見る者の胸を熱くする。

2次バトルでは、THE BOYZのステージ制作過程が印象的だった。ミーティングで方向性を決めきれなかったメンバーたちは、「KINGDOM―」出場を懸けた前哨戦「Road To Kingdom」で共に戦ったライバルたちを呼んで“同窓会”を開催。迷っている現状を打ち明けた。これに、ライバルたちは「THE BOYZの長所は、華やかなパフォーマンスもだけど、ストーリーラインがいいと思う。新しい挑戦をしても、どのグループよりも素晴らしいステージを披露できるのでは?もっと自信をもって臨んで!」と温かいメッセージで応じた。「KINGDOM―」はいわば、アイドルの舞台裏を映したドキュメンタリー。こうしたアイドル同士の絆も、見どころの一つだ(この模様は4話に収録)。

メンバー同士の話し合いで、素晴らしいアイデアに「おお!いいね!」と盛り上がったり、とぼけた意見を口にしたメンバーにほかのメンバーがツッコミをいれたり、和気あいあいと過ごす様子は、アイドルとはいえごく普通の若者。

それがバトルのステージに立つと、昼も夜もなく練習に打ち込み、魅力的なパフォーマンスへと仕上げていく。リハーサルでは成功できなかった難しいパフォーマンスを本番で見事に決める恐るべき集中力の高さも、第一線で活躍するプロならではだ。

もちろんパフォーマンスのクオリティーの高さは言うまでもない。6組とも、確かな実績を持ち多くのファンを抱える人気者。

だが、彼ら6組のことをよく知らなくても、まずは歌とダンス、パフォーマンスにすべてを懸けて挑む若者たちのストーリーとして楽しんでほしい。“推し”を見つけるのはそのあとで大丈夫。「KINGDOM―」は人気ボーイズグループ6組のバトルであると同時に、K-POPカルチャーそのものの魅力が詰まった良質のドキュメンタリー番組なのだ。