“朝ドラ”こと連続テレビ小説「おかえりモネ」(毎週月〜土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月〜金曜の振り返り)が本日、5月17日にスタートした。ヒロイン・永浦百音役を務める清原果耶は現在19歳、ファッション誌「Seventeen(セブンティーン)」のモデルとしても活躍中の美少女だ。国民的女優への道を歩む清原について2020年のヒロイン発表時に、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説したものを、ドラマスタートにあたり再掲載する。

■「あさが来た」「なつぞら」で好演 ファン待望の“ヒロイン”に

連続テレビ小説・第104作「おかえりモネ」のヒロインに選ばれた清原果耶。朝ドラファンにとっては「あさが来た」(2016年)の健気な女中・ふゆ役と、「なつぞら」(2019年)のヒロイン(広瀬すず)の妹・千遥役と段階を踏んで、ついにヒロイン!と拍手喝采の気分である。

「あさが来た」のときの清原のあまりの名演に、いつか朝ドラヒロインになってほしいと熱望した朝ドラファンは多く、ながらく次期朝ドラヒロイン候補ナンバーワンであった。

「あさが来た」のときはまだ13歳で、メインを張るには若すぎた清原。別の役でオーディションを受けたがその年齢の問題で落ち、代わりに幼い女中・ふゆ役を獲得した。

ヒロインあさ(波瑠)の夫・新次郎(玉木宏)をひそかに想い、妾でもいいと告白する場面は、倫理を越えて胸を打った。終盤、彼女のことをひそかに見守ってきた実直な番頭(三宅弘城)と結婚、幸せになり、それも多くの視聴者に祝福された。

「なつぞら」では戦争のせいで生き別れになったヒロイン三兄妹が20年近くの時を経てようやく再会するも、清原が演じる千遥はひとりで苦労した設定。その間、溜めに溜めた屈折した想いをみごとに表現したうえ、幼い子の母として、小料理屋の女主人にして料理人としてしっかり生き抜いてきた女性を堂々と演じきる姿は十代には思えない貫禄だった。

■シリアス、コメディ、アクションも!若手随一の演技力

若手随一の演技力を誇る清原は、2014年、12歳のとき、アミューズオーディションフェス2014でグランプリを受賞、「あさが来た」が俳優デビュー作だった。

たいていの新人俳優は、恋や友情を謳歌する等身大の現代っ子を演じるところから演技に慣れていくものだが、清原の場合、現実から飛距離のある、修羅の道を歩むような役がハマる。

大河ファンタジー「精霊の守り人」シリーズ(2016〜2018年、NHK総合)では主人公バルサ(綾瀬はるか)の少女時代を、天涯孤独の用心棒として生きるハードボイルド感を漂わせて演じきった。アクションにも切れ味があった。

「蛍草 菜々の剣」(2019年、NHK BSプレミアム)では、本格時代劇に主演。父の仇をとろうとする武士の娘を演じた。「マンゴーの樹の下で〜ルソン島、戦火の約束〜」(2019年、NHK総合)では、岸恵子演じる主人公の若き時代、ルソンでの体験を心に刻む重要なパートを演じた。

どの作品を見ても、凛として地に足のついた役をよくぞこんなにも説得力をもって演じられることかと舌を巻くばかり。多くの賞を受賞した「透明なゆりかご」(2018年、NHK総合※脚本は「おかえりモネ」の安達奈緒子)では、新人看護師役で連ドラ初主演。

様々な事情をもって産婦人科を訪れる人たちの生と死を見つめるその真摯な視線が、多くの視聴者の心に深い感慨をもたらした。

ときに若い眉間にシワが刻まれることも辞さない真剣な表情は、真剣に世界を見つめ考える、役の姿そのもの。京王電鉄のCM「雨に濡れても」篇で、雨のなかギターの弾き語りをしながら、「私の頭に雨がふる」「やまない雨はない」と語る声には、辛さから目をそらさない上での希望がある。

映画「3月のライオン」(2017年)では、主人公(神木隆之介)の憩いの場である家の次女役で、天真爛漫な高校生だったが、あるきっかけから学校で虐めに遭ってしまう。ひたむきに耐えるその姿は迫真だった。

こんなふうにシリアスな作品が似合うと思いきや、その一方で、コメディ「俺の話は長い」(2019年、日本テレビ系)では主人公(生田斗真)の妹役で軽妙な会話劇を演じた。

青春映画「ちはやふるー結びー」(2018年)では主人公(これまた広瀬すずが主演)をライバル視する勝ち気な女子高生をはつらつと演じていた。

いい意味で器用。なんでも確実に演じることができて彼女が出ていると安心する。主役をやればしっかり中心に立ち、脇役のときは、主役を食いそうなまでに肉薄するが、ある一線でうまく引いて主役を立たせる。

十代なのにどうしてそこまでの処世術を学んだ?と思ってしまうほどだが、処世術とかではなくて、脚本と演出をしっかり理解して、余計な自意識を入れることなく役に邁進しているのであろう。

■朝ドラに新たな楽しみ方

近年、朝ドラはヒロインオーディションを行わず、オファー制で、経験のあるしっかりした若手俳優が担うことが増え、それが賛否両論となっている。昔の朝ドラのように、無名の新人が主役でドラマと共に成長していく姿を応援するという楽しみが減ってしまったと残念に思う視聴者もいる一方で、新人教育が以前ほどよくできないなかでの主役は責任が重すぎると心配の声もある。

そういう意味では、清原は今回、オーディションではないものの、俳優デビューが朝ドラ「あさが来た」で、朝ドラ100作記念作「なつぞら」にも重要な役で参加し、満を持してのヒロイン。

「おかえりモネ」ならぬ「(朝ドラに)おかえり清原果耶」という親心のようなものを大いに刺激する仕掛けになっている。

土屋太鳳が「花子とアン」(2014年)の妹役から「まれ」(2015年)のヒロインに。高畑充希が「ごちそうさん」(2013年)のヒロインの義妹役から「とと姉ちゃん」(2016年)のヒロインになったときも話題になったもので、今後も、最初は小さな役で出てきた若い俳優がやがてヒロインとして戻ってくるという出世魚的スタイルを朝ドラの伝統にすることも、朝ドラのひとつの楽しみになると思う。