2021年1月〜3月に放送された連続ドラマを対象にした、「第107回 ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」の受賞結果を発表中。主演女優賞を獲得したのは、TBS系ドラマ「天国と地獄 〜サイコな2人〜」で、主人公の刑事・望月彩子を演じた綾瀬はるか。高橋一生演じる殺人事件の容疑者・日高陽斗との入れ替わりや、森下佳子脚本によるミステリーの考察で話題を呼び、今作で4度目となる栄冠に輝いた。

■入れ替わり劇は「お互いに信頼して、好きにやるという感じでした」
――ドラマアカデミー賞での主演女優賞受賞は、「天国と地獄 〜サイコな2人〜」で4度目となります。おめでとうございます。

すごくうれしいです! 今回は、男女での入れ替わり、その相手がサイコパス的な普通じゃない人物ということで、監督やスタッフさんと話し合いながら作っていきました。なので、みんなで頂いた賞だと感じています。


――高橋一生さんとの入れ替わり劇、圧巻でした。高橋さんとは、どのように役を作っていったのですか?

私はもう、何も作らずに行きました。撮影前に1話と2話の本読みをしたのですが、入れ替わった状態と、そしてその逆……私が、彩子に入った高橋さんのセリフを読んだり。お互いに「こうしてほしい」と話し合うというよりは、それぞれ探りながら感覚を掴んでいきました。

でも、1話で高橋さんが演じる日高って、実は出番が少ないんです。声のトーンやテンポ、あと喋るときの癖……どこでアクセントをつけるかなど、掴むのが難しかったですね。

日高は余裕がある人物だから、最初は相手を挑発するようにゆっくり話していたのですが、演じているうちに、頭が良くて俯瞰で物事を見ていると分かってきて。それなら指示は早口で……という風に変わっていきました。

実は日高と彩子って、電話では話しているんですけど、一緒のシーンってラスト以外はほとんどないんです。あっても歩道橋での1シーンだけ。なので、役については最初に(本読みで)話した以降、高橋さんと話し合う機会ってなかったんですよ。お互いに信頼して、好きにやるという感じでしたが、高橋さんの演技は私の引き出しには無いものだったし、私も役者として挑戦できた役でした。


――確かに、一緒のシーンは少なかったですね。最初と最後以外は、ずっと入れ替わっていました。

高橋さんには、一緒に逃げる9話で「お久しぶりです」と挨拶をしたくらい(笑)。私も1話で彩子を演じて、それ以降はずっと日高だったので、彩子を捨てて日高だけを考えていました。だからまた彩子に戻る前に、「あ、彩子の台本を読んでなかった」と思って、高橋さんのセリフだけをずっと聞いて、「彩子は彩子で、こんな大変だったんだな」って思いながら彩子を復習しました(笑)。

■森下佳子の脚本は「挑戦状を叩き付けられるような緊張感」
――役作りで印象に残っているのは、どんなことですか?

脚本家の森下佳子さんから「最初の彩子の“鼻息の荒さ”がとても大事」と言われていました。「1話での『手柄を立ててやる!』という彩子がいて、入れ替わりを経験し、手柄よりも大切なものに気付いていく成長を見せたい」という意向があったんです。

日高としては、「サイコパスな日高が、途中から“もしかして、いい人?”って印象が変わっていくので、怖さとのメリハリをつけてほしい」ということも。最終話の展開も分からない中で、複雑な事情を抱える日高の感情を演じるのはすごく難しかったですね。

なので「日高(になっている彩子)が難しい」と森下さんに言ったら、「それは大丈夫、できる。それより、1話の彩子の方だよ」と返ってきて。「“悪い女”は得意じゃん」と(笑)。鼻息荒い役のほうがやったことないジャンルだろうから、そちらを頑張ってほしいと言われました。私はどっちも難しかったんですけど(笑)。

森下さんの脚本からは、いつも“次はどんなものを出せるんだ”と挑戦状を叩き付けられるような、良い緊張感と、新しい挑戦へのワクワク感と、不安と……。成長させていただける感覚があります。


――先が気になるのは、視聴者と同じだったんですね(笑)。

そうですね。最終話がどうなるかはギリギリまで知らなかったので、「どんな風に終わるのかな?」「彩子に戻れるのかな?」って思いながら演じていました(笑)。


――日高(になっている彩子)という役を「掴めた!」と思えた瞬間は?

演じているうちに、「あー、この人は入れ替わりを楽しんでるんだな」と思うようになって。そこから、日高のことが理解できるようになりました。でも途中までは、迷うことが多かったですね。悩んでいる間に物語が進んでいって、あっという間に彩子に戻って、気付いたら終わっていました(笑)。


――だんだん理解していった……というのは、日高と彩子の関係と同じですね。心が近づいていく二人を見て、どう思われましたか?

4話で「日高陽斗という人間を知りたいからよ」と彩子が日高に言ったとき、ちょっとラブのにおいがしたけれど、それはラブではなくて、その人のことを知ろうといつも考えている間に生まれた愛情みたいなものだったと思うんです。

「この人も、誰かの為にそうしていた」と知ったとき、入れ替わっているからこそ芽生えた想い……、恋愛を超えた大きな愛みたいなものが二人の間に生まれるのは、しょうがないんだろうなと。理解し合えないところまで理解し合ってしまった2人は、表裏一体だから。

■彩子と日高の物語は「ある意味、究極のラブストーリーかも」
――魂が共鳴した彩子と日高は、最終回で因縁の歩道橋で再会。別れ際に、また二人が入れ替わってしまったことを暗示するシーンで終わりましたが……。

すごく面白いラストだと思いました。お互いが想っていても、警察官が犯罪歴のある人と交際するのは難しいから、入れ替わることがない限り、彩子は日高と会うことはないと思うんです。日高も彩子に迷惑をかけたくないから誘わないだろうし。

ある意味、究極のラブストーリーかもしれません。離れられない運命的な2人は、入れ替わることでまた繋がり続ける。大変だろうけど「良かったね」と思いました。ハッピーエンドですよね。


――最後に、綾瀬さんにとって、彩子はまた演じてみたいような役となりましたか?

好きですね、彩子は。真っ直ぐで、ちょっとケンカ早くて鼻息が荒いけれど、一生懸命で。「正義を貫きたい」というところは、ちょっと私と似ているかも。本当に最後までかっこいい人だなと思いました。

(取材・文=坂本ゆかり)