2019年に世界初演され、読売演劇大賞上半期スタッフ部門(音楽)にノミネートされたミュージカル「いつか〜one fine day」が、キャストを大幅にリニューアルして2年ぶりに再演。6月9日(水)〜20日(日)まで、東京・CBGKシブゲキ!!にて上演される。

同作は、韓国映画「ワン・デイ 悲しみが消えるまで」を原作に構成された日本発のオリジナルミュージカル。昏睡状態にある盲目のヒロイン・エミ(皆本麻帆)と、そんな彼女の魂が見える保健調査員・テル(藤岡正明)の交流を通して、自分自身の心と向き合うヒューマンドラマが展開される。

WEBザテレビジョンでは、初演時と同じ役で出演している藤岡と、今回が初参加となる浜崎香帆(東京パフォーマンスドール)を稽古場で直撃。劇中で夫婦を演じる2人に作品を通して感じたことやお互いの印象、タイトルにちなんで“いつか”挑戦してみたいことなどを語ってもらった。

――稽古(5月中旬頃、取材)は順調に進んでいるみたいですね?

藤岡正明:ひと通り全部のシーンを当たりました。今は、もう一度頭に戻ってお芝居を細かくブラッシュアップしているところです。

これから歌の部分をチェックして、どこかのタイミングで通し稽古。そして、全体の流れが見えてきた段階で、もう一度お芝居を細かく見ていくのかなと思っています。だから、今は一番試しがいがある時期なのかもしれません。

――藤岡さんは前回(2019年上演)も出演されていますが、やっぱり1からのスタートという感じなんですか?

藤岡:2年間という時間を経ていますし、キャストも変わっています。僕自身も、全くセリフを覚えていませんでした(笑)。だから、割と新鮮な気持ち。新しい感情がどんどん出てきているような気がするので初演のつもりで取り組んでいます。

――浜崎さんは今回からの参加ですね?

浜崎香帆:そうなんです。私が演じる夏目マキという女性はどんな人なのか。台本だけでは読み取れなかった部分は初演の映像を見ながら参考にしています。

でも、見過ぎてしまうとまねになってしまうので、どうやって演じたら自分なりのマキになるのか。今の段階では、とりあえず基盤ができたという感じ。これから、すべてを頭に入れた上で皆さんとどんなふうに作っていけるのか、いろいろ模索しているところです。

――役作りで工夫していることはありますか?

浜崎:桜がきれいな4月頃だったんですけど、ふとした時に自然と桜に目が行っていました。色もピンクがすごく気になったり。まだ、稽古が始まる前の時期だったのに、マキが好きなものを無意識に追い掛けていたような気がします。そういうところから役に近づいていくという方法もあるのかなと思っています。

――再演となる今回は、テーマにも変化が?

藤岡:初演の時に演出の板垣(恭一)さんが、生きづらさを感じている人に見てもらいたいと話していたんです。2019年当時、どれくらいの人が「生きづらさ」というものにリアリティーを感じていたのか。そういう思いや悩みを誰かに吐露できるようなものだったのか。正直、僕自身も実感していたかどうかは分かりません。

ただ、今はあれから2年がたちました。昨年の2月ぐらいから新型コロナの影響を受けて、多くの人が大なり小なり生きづらさを感じているんじゃないかなと思っています。エンターテインメントの世界に身を置く僕も何を発信していけばいいのか、生きていく上でエンタメは必要なものなのか。ぬぐい切れないもどかしさや悔しさを強く感じていました。

だからこそ2021年の今、「生きづらさ」というものに対して以前とは違う受け止め方をするのかもしれない。さらに言うと、今まさに苦しくつらい思いをしている人にこそ見てもらいたいと思っています。

浜崎:今回の作品を通して、人それぞれの生き方があるんだなと感じました。今、私自身が「生きづらい」と感じているわけではないんですけど、人間はいつ死ぬか分からないですし、これからどうやって生きていけばいいのか。あらためて考えさせられました。

藤岡:本作では8人のキャストで、さまざまな人生を描いています。例えば浜崎さんが演じる夏目マキという女性は僕が演じる夏目テルの奥さん。ただ、劇中では既に亡くなっているという設定なので回想シーンに登場します。

マキ自身もそうですけど、選択というものも1つのテーマ。マキに先立たれて残されたテルや、周りの人たちがこれからの人生でどんな選択をするのか。そして、どう歩いていくのか。エンターテインメントですから、誰しもが直面するような出来事をドラマチックに描いていますけど、それでもみんな必死に生きていくんだということも大きなテーマなのかなと思いながら演じています。

――お二人は夫婦役で共演! どんな夫婦になりそうですか?

藤岡:結婚している女性を演じたことはある?

浜崎:ないです。今回が初めてです。

――初めての人妻役ということですね。

浜崎:人妻!(笑)

藤岡:言い方、言い方(笑)。

浜崎:何だかとても不思議な感じです。いろいろ妄想を膨らませています。

――どんな妄想なのか気になります。

藤岡:聞きたいですね。

浜崎:劇中にそういうシーンはないんですけど、ダンナさんが会社から帰ってきたら、肉じゃがと湯豆腐といったできたての家庭的な料理を出してあげられるような、夫のことを一番に思っている女性になりたいです。

――すてきな妄想ですね!

藤岡:いいですよね。ちなみに、肉じゃがは作れるの?

浜崎:一応、作れます。大丈夫だと思います。たぶん…(笑)。

藤岡:今回、せっかく夫婦役をやるので、僕らにしかないような空気感みたいなものを作れたらいいなと思っています。

夫婦や恋人同士って、その二人ならではの接し方や触れ方があると思うんですよ。それをこれからの稽古の中で探していけたらなと。

浜崎:ぜひ、見つけたいです。

藤岡:個人的には「少年メリケンサック」(2009年)という映画を見てほしい。宮崎あおいさんが演じる主人公と彼氏が家の中で話している姿がアホくさくてバカバカしいんです。でも、こういうカップルっているんだろうねって思える感じが何だかいいんです。

浜崎:「少年メリケンサック」ですね。見ようと思います。

――お互いの印象は?

浜崎:初演の映像を見た時に、藤岡さんの声を聴いて感動したんです。今回の稽古場で初めて生の歌声を聴いた時も泣きそうになりました。

藤岡:ありがとうございます。

浜崎:私の母も藤岡さんの声が大好きなんです。あの声をシブゲキ!!で聴けるんだねって喜んでいました。

藤岡:それ、すごいプレッシャーだなぁ(笑)。

浜崎:母娘で楽しみにしています!

藤岡:浜崎さんは真面目ですよね。そして、体育会系。稽古場で演出家の話を聞いている時は、いつも手を後ろに組んで姿勢よく立っているんです。ここは自衛隊の訓練場なのかなって。今にも匍匐前進を始めそうな感じ(笑)。

浜崎:以前「武将」って呼ばれたことがあります(笑)。

藤岡:何事にも真っすぐぶつかっていくところいいなって思います。

――作品のタイトルにちなんで“いつか”挑戦してみたいことは?

藤岡:僕はやっぱり、いつか週刊ザテレビジョンさんの表紙で「レモン」を持たせていただけたらなと。いい顔しますよ(笑)。その日は、家に帰ったらレモンサワーを飲みたい!

浜崎:私は自分で車を運転してコストコに行きたいです。東京パフォーマンスドールのメンバーから「連れてって!」と言われているんです。免許を持っているのは私とリーダーの(高嶋)菜七ちゃんだけ。でも、私はペーパードライバーなので…。何とか頑張ってみんなを連れていきたいです。

藤岡:メンバーは何人なんだっけ?

浜崎:6人です。

藤岡:それだったら、僕の車貸すよ? 6人乗りだから。

浜崎:え、いいんですか?

藤岡:もちろん!

浜崎:でも、藤岡さんに車を返す頃には…。

藤岡:ボコボコになっている…かも?

浜崎:そうならないよう、慎重に運転します(笑)。

――もうそろそろ梅雨に入ると思いますが、天気が良くなくて憂鬱な時に気分転換する自分なりのリフレッシュ法は?

藤岡:最近、クエン酸サワーにハマっているんです。焼酎はいいちこ派で、それに炭酸水とクエン酸を入れて飲むのが好き。雨が降っていると外に出たくないし、今はなかなか自由に動けない状況でもあるので、食べたり飲んだりする楽しみがあると気分が変わると思います。

浜崎:私は部屋を寝るための照明にしてから空を見るのが好きなんです。地元の福岡では毎日見ていました。ものすごく星がきれいなんです。

東京は夜になっても空全体が明るい感じがして星がよく見えないなと思っていたんですけど、最近ふとベランダに出て空を見上げたら星がしっかりと見えたんです。今日の空の色は怖いなとか、雲が近いと感じたりすることもあって。

藤岡:その感じ方、マキっぽいね。

浜崎:そうなんです。ちょっとマキの影響を受けているのかもしれないんですけど、夜空を見て気持ちをリフレッシュするのがいいのかなって思います。

藤岡:今、ふと思ったんだけど、梅雨の時期は夜空を見ても星は…。

浜崎:あ、そうか(笑)。

藤岡:まぁ、晴れる日もあるしね。

浜崎:雨が止んだ後は、少し空気がきれいになった感じがするので、そのマイナスイオンを吸ってみるのもいいかもしれません。


◆取材・文=月山武桜