“声優アーティスト”と呼ばれるジャンルはもはや一般的となり、日本の音楽シーンには様々な声優たちによる個性豊かな音楽が溢れている。そんな中、2009年にアーティストとしてソロデビューを果たし、今年で音楽活動12周年を迎えるのが豊崎愛生だ。声優としては、アニメ『けいおん!』(平沢唯役)や『めだかボックス』(黒神めだか役)、『ゆるキャン△』(犬山あおい役)といった人気作に出演し、作品に関連するキャラソンも数多く歌ってきた。一方では寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥とともに結成された声優ユニット・スフィアでも活躍している。では、ソロとしてはどんな音楽を届けようと意識してやってきたのだろうか?

「私は元々、歌手専門でやってきたわけではなく、ただただ音楽が好きな人でしかなかったので、スキル的には自分の理想に到達できない部分がどうしてもあるんですよ。なので、自分がソロで音楽をやるのであれば、声優だからできる音楽のアプローチがあるんじゃないかなと思ったんです。それはキャラソンのようにいろんな声色で歌うということではなく、例えば1対1で話しかけるようなニュアンスで言葉をしっかり届けるように歌ってみたりとか、そういう部分で声優としての強みを出せたらいいかなって」

■フラットな視点で豊崎愛生に触れていただけたらうれしい

楽曲に関しては、「自分の好きなものを好きなスタイルで、好きな方たちと好き放題に作らせてもらってきた感じですね(笑)」と言うように、敬愛する様々なアーティストから楽曲を提供してもらうスタイルでやってきた。そこには自身の趣味嗜好が明確に表れているのと同時に、コアな音楽ファンにもしっかりアプローチし得る高い音楽性が生まれている。結果、音楽を入り口として豊崎愛生の存在を認知したファンも数多い。

「“はじめまして”と言える場がたくさんあるのは本当にありがたいことですよね。そもそもは声優から始まっていますけど、私の中では声優と音楽のどっちが本業でどっちが副業みたいな区別はないので、フラットな視点で豊崎愛生に触れていただけたらうれしいなとは常に思っていますね」
そんな豊崎愛生の4枚目となるフルアルバム『caravan!』がリリースされた。2017年に初のベストアルバム『love your best』をリリースしたことでひとつの節目を迎えた実感があったという彼女は、また新たな気持ちをもって本作の制作に臨んだようだ。

「活動を続けるにつれて、曲を聴いてくださった方から『豊崎さんらしいね』と言っていただけることがすごく増えたんですよ。そういう意味では、自分らしさの基盤は作れたのかなっていう気持ちが大きくて。とは言え、一方では基盤ができたからこそ逆に縛りや枷になってしまうものも生まれてきていたような気がするんです。なので、ここからはそういったものも全部取っ払ってしまい、新たなこと、やりたいことをさらにどんどん自由にやっていこうっていう気持ちになりました。今回リリースしたアルバムは、その最初の答えというか。私の音楽の第2章が始まったことをしっかり表現できたと思います」

■めちゃめちゃハッピーな感情を集めたアルバムにしたかった

これまでにも増して自由奔放に、心底楽しそうに音楽と戯れる豊崎愛生の姿が味わえる全10曲。全編にわたって聴き手の心を明るい光で満たしてくれるようなポジティブなムードに包まれているのは、コロナ禍という今の情勢が影響したところもあったのだろう。

「例えば失恋ソングのようにネガティブな感情を共有してで聴いてくださる方の心に寄り添うこともできると思うんですよ。実際、私も音楽に共感することで救われてきた経験があるので。ただ、今回はそうではなく、めちゃめちゃハッピーな感情を集めたアルバムにしたかったんですよね。この1年くらいで世の中の様々なことが変わったし、それに伴って自分自身の価値観にもいろいろ変化があったと思うんです。でも、だからこそ目の前にある幸せや、目の前にいる人の大切さをあらためて感じられるようにもなった。そういった思いがあったからこそ、今は変わっていくことも肯定していくというポジティブな寄り添い方をしたかったんですよね」
そんなアルバムの方向性を一瞬で伝えてくれるのは、リード曲にもなっている1曲目の「それでも願ってしまうんだ」。“今”を明確に意識した歌詞はUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が、心が躍り出す賑やかなサウンドはクラムボンのミトが手掛けている。他にも、さかいゆうや土岐麻子、佐藤良成(ハンバート ハンバート)、たむらぱんら、様々なアーティストたちが豊崎からのラブコールを受けて参加している。

「田淵さんとミトさんはそれぞれ、これまでにもお世話になってきていたんですけど、お二人が一緒に曲を作るというのは、実は今回が初めてだったそうで。とても光栄だなって思いましたね(笑)。さかいゆうさんには身近にあるゆるやかな幸せを感じられる曲を作っていただけましたし、土岐さんにはロマンチックな都会の恋を描いた歌詞を書いていただけました。大好きな方々に素敵な曲を作っていただけたのは本当にありがたいことですし、今回は今までの自分だったら歌えなかったであろうタイプの曲にも挑戦できたのがすごくうれしかったです。曲順に至るまで、自分なりのこだわりを詰め込んだアルバムは、リリースされた瞬間からは聴いてくださるみなさんの曲たちになると思っています。なので、日常の中のいろんなシチュエーションに合わせて、自由に楽しんでいただけたらなと思います」

■皆さんを新しく楽しい世界に、満天の星空の元に引っ張っていけるよう頑張ります!

7月17日(土)に神奈川・神奈川県民ホールで、7月24日(土)・25日(日)には、東京・中野サンプラザ 大ホールにて、久しぶりとなる有観客コンサート「LAWSON presents 豊崎愛生 コンサート2021〜Camel Back hall〜」の開催も決定。豊崎愛生から放たれる生の歌声の魅力もぜひ味わってみて欲しい。

「久しぶりのコンサートでは、新曲はもちろん懐かしい曲もたくさん歌う予定なのでちょっとドキドキなんですけど(笑)、皆さんを新しく楽しい世界に、満天の星空の元に引っ張っていけるよう頑張ります!」

(取材・文 / もりひでゆき)