悩める後輩にうんちくある言葉を送る特別企画「いいから話聞いてやるよ」。今回は、歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで幅広い世代から支持される大竹まことに相談を持ち掛けたのは、同じ事務所の後輩でお笑いコンビ、ザ・ギース。40代に入り、家庭や仕事、コンビのこれからに悩みが出てきたという二人に、人生の酸いも甘いもかみ分けてきた大竹がかける言葉とは――


■自分のためと他人のため。男には二つの生き方がある
尾関高文「僕らは事務所の後輩として、大竹さんにお世話になりっぱなしですよね。この間もコートを頂いて…おしゃれすぎて僕には全く似合わなかったんですけど(笑)。いつも面倒みてもらってすみません!」
高佐一慈「大竹さんは、余裕のある男というイメージ。『俺は自分の好きなことをやるんだ』という感じで、若いときと同じようにタバコを吸っているのも渋いし、スタイルを変えないというのがカッコいいです!」
大竹まこと「うちの事務所は少数精鋭だから、二人のことは気に掛けているよ。今日はさらに相談があるんでしょ?」
尾関「そうなんです。僕は子供のことなんですけど。最近、小6の長女に突然の反抗期がやってきたんです。この間も、ちょっと強く言いすぎてしまったら『お前がやれって言ったんだろ!』と言い返されて。もうどうしたらいいんだろうと」
大竹「謝る。言いすぎたなら、まずは『ごめん』って謝るしかないよ。でも、子供は親の背中を見て育っていくから、その時々で『どうしよう』と驚いたり、悩んだりしないで、もっとトータルでいい親父になれるようにした方がいい。尾関は、“いい親父”を演じる必要があるかもしれないけど(笑)」
尾関「いや、演じなくても大丈夫なつもりですよ!?」
高佐「子は親を映す鏡ってことですよね。深いなぁ」

■好きなことをするためには誰かを泣かさなくちゃいけない
大竹「高佐は悩みないの?」
高佐「僕は40代に入って、好きな仕事だけを納得するまでやりたいという気持ちがすごく強くなってしまって。昔はもっと柔軟だったのになぁと思うんですよね。大竹さんが40代のころって、どんな感じでした?」
大竹「40代は仕事と浮気で忙しかったからなぁ(笑)。冗談はさておき、高佐が好きなことしかやりたくないなら、それでいいんじゃない?」
高佐「即答ですね」
大竹「男には二つの生き方があるんだよ。自分のために生きるやつと人のために生きるやつ。自分のために生きるなら、好きなことだけやる。それでいいと思う。ただ家族がいると難しいよな」
尾関「大竹さんは、どっちで生きてこられたんですか?」
大竹「それは…難しい質問するね(笑)。俺は芸人によくいるドロップアウトした側の人間だったから、自分のために楽しもうと思ってたかな。でも、家族ができたときにこのままじゃダメだと、事務所の社長に『絶対売れるから月30万の給料制にしてくれ』と直談判した。やりたいこと、好きなことをするためには誰かを泣かさなくちゃいけないから、社長に泣いてもらったね(笑)」
高佐「全然売れてないときに月30万給料制ってすごいですね!」
尾関「やりたくないことをやらないと稼げない。家族を養えないというときは、どうしてたんですか? 自分がやりたいお笑いもありましたよね」
大竹「振り返ってみると、俺はやりたいことしかやってないんだよね。テレビで暴れたりもしたけど。今、テレビでキレてる芸人…例えばカンニング竹山とかは、何か原因があって怒るじゃない? でも、当時の俺はもう出てきた段階からキレてるわけ」
尾関「理由もなく?」
高佐「勝手に怒っているおじさんじゃないですか」
大竹「そうなんだよ。だから、俺は芸人をやっている感覚じゃなかったのかもしれない。やりたい、やりたくないで使い分けたりするような器用なことはできなかったし。キレてる俺を、きたろうや斉木(しげる)がうまく扱ってくれていただけで。今はもう滅多に怒らない好々爺になってるけど(笑)」
尾関「たまに炎上してるのに(笑)」
大竹「そうなんだよ。炎上するとドキドキしちゃう(笑)」

■大事なのは自分の王道をどこにするか
高佐「僕らコンビを組んで15年以上になりますけど、面白いと思うことが似ているから、これだけ続けることができたと思うんですね。でも、細かいところでは方向性がズレることもあって。実は今、結構二人で揉めることも多いんです。シティボーイズさんってもう40年以上じゃないですか。長く続けるコツってあるんですか」
大竹「難しいね。俺らは二人が大人だったから、ここまで続けてこれたんじゃないかなぁ。昔は、また大竹が暴れているっていう感じだったし」
尾関「意外! イメージ的に大竹さんが二人をたしなめている感じかと」
大竹「その逆! 俺は無鉄砲なんだけど、譲れない小さな正義感があるの。どんなえらい人にでも間違っていると思ったら『そのやり方はダメだろ』って言っちゃう。それを二人は尊重してくれるんだよね。『大竹がそう言うなら間違ってるんだろう』って、仕事の途中で帰る俺に付いてくるみたいな」
尾関「お二人が大竹さんを信頼しているんでしょうね」
大竹「でも、けんかはたくさんしてきたよ」
高佐「解散危機ってなかったんですか?」
大竹「1回もなかったね。大げんかは何度もあるけど。『お前とは演劇観が違う!』とまで言ったことがある(笑)」

■まずは僕らも月30万円を大竹さんから…
尾関「どちらかというと、僕がきたろうさんや斉木さんタイプで、高佐は意外と大竹さんっぽい。好きなことしかやりたがらないし。嫌な仕事だと不機嫌な顔をするから、たまに『何なんだ!』と思うんですよ。でも、きっと高佐には高佐の正義があって。そこは仕方ないのかなと。僕にもダメなところがあるし。それでも、お互いに面白いと思うところは一緒なので、これからも続けていける気がします」
大竹「今、二人を見ていると、すごくもどかしい。劇場を満員にしたいのか、テレビを中心に生きていきたいのか。劇場で思いっきりハネればテレビの仕事は来ると思うんだよ。でも、逆にテレビでウケようとして消えていった芸人もたくさん見てるから、ちょっと心配になるね」
高佐「耳が痛いですね」
尾関「劇場を満員にすることを目指していたんですけど、何となく限界を感じてテレビの方に気持ちが向いてしまった感じですね。結局、今大竹さんが言った消えていく芸人のルートを歩んでしまっているなという思いも正直あります」
大竹「やりたい、やりたくないに関わらず、大事なのは自分の王道をどこにするか。テレビなのか、劇場なのか。自分たちで王道を決めたら、自ずと好きなこともできるんじゃないかなぁ」
高佐「王道かぁ。心に響きますね」
大竹「良いこと言ったでしょ(笑)」
尾関「いや、本当に! 実際、王道を見つけられてないですもん」
大竹「今後、何がチャンスになって、いつ芽が出るかは分からないけど、まずはそこだな」
尾関「最後は思いのほか、シビアな話になってしまったんですけど、ちゃんとした相談もできてよかったです。娘にいい親父としての背中を見せるためにも、早く売れないとですね」
高佐「僕も予想外に心がえぐられてしまって(笑)。月並みな言葉ですけど勉強になりました」
大竹「二人とも素養があるんだから、もっと伸びるはずだよ。二人が劇場をいっぱいにする夢を見るよ」
高佐「その言葉に応えたいです。そのためにも、まずは僕らも月30万円を大竹さんからいただきたいです!」
大竹「断る!」
二人「早っ(笑)」
大竹「あとは、ちゃんと地獄を見ようとしないとね。信念を通すということは、地獄を見るということだから。その覚悟を決めてほしいなと。うん、いい話だ! こんなに濃い話になるなんて、俺も予想外だったよ(笑)」

取材・文=吉田光枝