ここ数年、芸能人によるYouTubeチャンネルの開設が相次いで久しい。そんな中、テレビの作り手たちも続々とYouTubeに参画し、印象的な活躍を見せている。

■佐久間宣行Pの「NOBROCK TV」が始動

有力な裏方がまた一人、YouTubeに活動拠点を設けた。元テレビ東京の佐久間宣行プロデューサーが7月10日、自身の公式YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」を立ち上げたのだ。佐久間Pといえば、テレビ東京系バラエティ番組「ゴッドタン」「あちこちオードリー」をはじめ、数々の人気番組を手掛ける敏腕プロデューサー。今年3月末をもって長年勤めたテレ東を退社し、現在はフリーのテレビプロデューサーとして活動している。また、ニッポン放送のラジオ番組「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」(以下、ANN0)のパーソナリティとしても知られている。


「NOBROCK TV」では、配信開始を告知する30秒足らずのイントロダクション動画を除くと、7月16日現在、2本の動画が公開されている。

1本目の動画は「俺の悪いところ言ってくれ選手権」と題した企画。これは、アルコ&ピース・平子祐希とフルーツポンチ・村上健志をゲストに招き、それぞれ何も知らない後輩芸人に「俺の直したほうが良いところ教えて」とお願いし、どれだけ悪い部分を言ってもらえるか競い合うというものだ。2本目は、劇団ひとりと佐久間Pの対談動画で、独立の本音などが語られている。

1本目の動画は21万再生、2本目の動画は15万再生を超え、チャンネル開設から7日で登録者数は8万人に達するなど、上々なスタートを切っている(7月17日現在)。
なお、佐久間Pは7月7日放送の「ANN0」で、「NOBROCK TV」を始動させるに至った経緯を説明している。それによると独立のタイミングで、自分が手掛ける番組に付くスポンサー企業の代表から「何か面白いことやりましょうよ」「佐久間さんのやりたい夢をサポートします」と提案があったという。また、やりたい企画を実現させるため、仲の良いスタッフを集めたとも語っていた。

こうして、スポンサー企業の後押しも受け、勝手知ったる仲間とともに制作に臨んだためだろうか。2本の動画はいずれも「ゴッドタン」の企画として地上波放送されたとしても遜色のない、テレビライクなクオリティの動画に仕上がっている。


芸能人がYouTubeを始める際、懇意にしているテレビ畑の作り手をチャンネルのブレーンに据えることは珍しくない。代表的な例が、石橋貴明のYouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」におけるマッコイ斎藤氏だ。マッコイ氏と石橋は、「とんねるずのみなさんのおかげでした(フジテレビ系)で長年タッグを組んだ間柄。昨年10月には、2人組音楽ユニット「Ku-Wa de MOMPE」を結成して配信シングルまでリリースしており、さながらYouTubeにおける石橋の相方のようなポジションを確立している。
このほか、“現代ホスト界の帝王”ローランドは、自身がブレイクするきっかけとなったテレビ朝日系バラエティ番組「ソノサキ」で知り合ったソンディレクターに、YouTubeチャンネル「THE ROLAND SHOW」の製作を委託。極楽とんぼの山本圭壱は、「めちゃイケ」のディレクターだった松本泰治氏を「けいちょんチャンネル」のクルーに起用している。いずれも、マッコイ氏同様、動画制作の指揮を執りつつ、必要とあらば演者にも回る八面六臂の活躍で、チャンネルの発展に貢献している。

このように、タレントYouTuberの参謀的立場を担うディレクター・プロデューサーは多いが、その一方で、佐久間Pのように、自分のYouTubeチャンネルを持つテレビの作り手も少なからず存在する。

たとえば、「水曜どうでしょう」(北海道テレビ)の藤村忠寿&嬉野雅道、両ディレクターは「藤やんうれしーの水曜どうでそうTV」を2019年2月から始動させ、主に同番組の裏話や新作の情報などを届けている。また、日本テレビの毛利忍プロデューサーが運営する「毛利Pチャンネル」では、彼が手掛ける「ノギザカスキッツ」に出演する乃木坂4期生やさらば青春の光との対談動画を主に投稿している。

佐久間Pが今回始めたYouTubeでの取り組みは、上述したディレクター、プロデューサーのいずれとも似ていない。スポンサーの支援のもと、テレビクオリティの新企画を次々に打ち出すという点で一線を画する。

それに加えて、劇団ひとりを向こうに回し、番組プロデューサーがどっしりと動画(番組)のホスト役を務めるのも斬新だ。普通、裏方がタレント然として振舞うことは、視聴者に認知されていなければ、「誰だ?お前」と反感を買ってしまう。

しかし佐久間PのANN0は長らく高い聴取率を維持し、番組イベントを開催すれば即完売するほどの人気を誇っている。こうした熱量の高いファンがいる限り、“究極のファンビジネス”といわれるYouTubeにおいても高いエンゲージメント率をキープし、プレイングマネージャーのような立場で自由闊達な配信を続けていけることだろう。

そして、佐久間Pのような有力な作り手がYouTubeチャンネルを持つことで、仲の良い人気タレントを動画に引っ張ってくるのでは?という期待もできる。現に、劇団ひとりがYouTubeに出演することなどほとんどない。18年の付き合いがある佐久間Pだからこそ、出演したと考えるのが妥当だろう。

ということで今後、「NOBROCK TV」には、おぎやはぎ、千鳥、バナナマンといった佐久間Pの戦友たちが出演する機会があるかもしれない。さらにこの先、「NOBROCK TV」が成功した暁には、テレビで力を蓄えた作り手が続々とYouTubeでチャンネルを持ち、豪華ゲストとともにテレビでできないような斬新な企画の数々を打ち出す…という未来が待っているかもしれない。