2021年4月宝塚歌劇団を退団し、新たな“芸の道”に踏み出す真彩希帆が、「今、会いたい人」にインタビューし、芸の道を極めていく連載「真彩希帆の知りたい!芸の道」。
第1回目となる今回は8月から上演されるミュージカル「ジェイミー」に出演する石川禅が登場。
インタビュー前編ではこれまでの石川の歩みについて聞いたが、後編では作品に対する思いなどに真彩が迫る。

■石川「私の芝居は、すべて相手役に捧げているんです」
真彩:まだまだお聞きしてもいいですか?先ほど中3の時に朗読をした時「恍惚とした」と仰っていましたが、他にも胸がわくわくする瞬間はありますか?

石川:ありますよ。
舞台の上に立って相手役さんとお芝居をするようになると、相手役さんとセリフをたくさん話している中でちゃんと心が通じ合う瞬間があるでしょ?

真彩:あります!

石川:その瞬間が好きなんです。
「アリス・イン・ワンダーランド」の時、振付の桜木涼介くんと稽古中に振付のことでいろいろと言い合っていて。ヒートアップしつつも何となく鎮火したんだけど、その時に演出の鈴木裕美さんが、「惜しいな。もうちょっとやったら(ヒートアップしていたら)、もっとよくなったんだけど」って(笑)。
「私たちこんな大変な思いをして、何のために舞台やっているの?舞台上で偽りのせりふを言っているのに、ちゃんと心が通じている瞬間が至福の時で、そこが唯一の醍醐味でしょ。それ以外に何が楽しいのよ」って。
本当にその通りだなって感じて、それから私の芝居は、すべて相手役に捧げているんです

真彩:歌に関しても、どんなプロセスで表現するのかを大事にしていて芝居として表現されているんですよね。

石川:私より、私のことを知ってますね(笑)。

真彩:私もデュエットが大好きなんです!
もちろんソロの部分もあるんですけど、どう歌えば相手役の方とどんなものが生まれるんだろうと考えたり、一人じゃできないことをやるのが大好きで…。
何が生まれるかわからないワクワクが好きで「娘役になったのはこれが理由かもしれない」って思ったりもするんです。

石川:若い時って「毎回新鮮に演じます!」って口では言うじゃない?

真彩:言います(笑)。

石川:でも本当に「新鮮に演じていますか?どうやって新鮮に演じているの?」って聞かれたらわからない。
20代くらいまでは「今日もう一回同じ公演をやるんだ…」って思ったりしていたけど、これを克服していかないと絶対この先行き詰まるぞって思った。作品をやる上で、「飽きる」ってやっぱりだめじゃない?
このままじゃ腐ると思って、どうやったら一回一回新鮮に演じられるんだろうって解決策を探して、その結果見つけたのが“相手のためにやること”だったんです。
相手をじっと見ていると、相手が毎回ちがう芝居をしたりするじゃないですか。
それに対して、どう応えるかって考えるのが楽しくなってくる。

真彩:「ちゃんと通じているかな?」とか、不安になったりはしませんか?
自分のやってることが相手にちゃんと伝わっているのだろうかって、下級生の時に不安になった時期があったんです。

石川:それはお互い様だよ。

真彩:なんと深いお言葉でしょう!

石川:「ダンス オブ ヴァンパイア」でアブロンシウス教授という役を演じているんだけど、僕の助手のアルフレートという役をだいたい若手の子がダブルキャストで演じていて。
でもこっちはシングルキャストなので、とっても早口でハードなアブロンシウス教授の楽曲を稽古の都合で4回くらい歌うということがあって…。
最初はマーキングでこんな感じ、二度目は歌ってみて、三度目で固まって来て、4度目でじゃあもう一回行きましょうみたいな(笑)。
その時に彼らに言ったのは「俺も助けるけど、君たちも俺を助けてね」ということ。
2人で舞台に立っているから、助けてくれるととてもありがたいって伝えたら、彼らは「認めてもらえた」と感じるみたいで楽になったみたい。

最初って「本当にいいせりふって何?」ってなるじゃないですか。
匠の技だなって感じるようなせりふ術を持っている方と毎回お会いするわけではないでしょ?くせのある喋り方をする人もいるし、俺だって自分のせりふが相手にどう伝わっているかわからないからそれはもうお互い様なんですよ。
大事なのはそういうこと全部捨てて、自分にこだわらないで相手の心と対話する。
その下準備として、自分の役を大事に育んで稽古をして、立稽古の時にはそれを全て捨てられるところまで昇華しておく必要があると思うんです。

そしたら、相手がどんなボールを投げて来ても自分の中に役を落とし込めているから、あとは相手が言ってくれたことに対して自分が返すだけ。
それをやると、毎回新鮮だし自分が一番楽しめる。毎回リセットして相手の心を聞いて、その心に応えるっていうことをしているのが一番楽しいんだよね。

真彩:お互いを思う心があるからそれができるんですね

石川:そうだね。そうなると結局、普段の信頼の関係が大事なんだろうね。人は機械じゃないから、阿吽の呼吸っていうのはそういうことだね。

■夢の石川との共演は「胸がいっぱいで…」
真彩:まだまだ話したりませんが、今回は念願叶って禅さんとお話しできてうれしかったです!
宝塚という世界から一歩踏み出すのはとても勇気がいることだなと思っていたのですが、ラジオドラマ「1848」(8月16日[月]〜8月20日[金]から3週連続、夜9:15〜9:30、NHK FMで放送)でベテランの皆さんとご一緒した時に「すごく楽しい世界!」と本当にわくわくしたんです。

男性と現場でご一緒したのも初めてですし、皆さんの空気感を感じて、生の舞台にこれから立つようになったら自分は毎回どれだけわくわくするのだろうって思って…。
小さい頃から見ている禅さんの声を隣のマイクで聞いて、本当に感動しました!
3日間の収録だったんですけど、緊張と同時に胸がいっぱいで1日目はワンタンスープしか食べられなくて…しかも、全部食べられなかったんですよ!(笑)

石川:食べよう、それは(笑)。
でも外部の人間から言わせていただくと、宝塚の人たちはやりすぎよ。
何度か共演させて頂いた、元トップスターさんが言ってたんだけど、自分と同じように宝塚を卒業された方と電話する時は「ちゃんと怠けてる?」って聞き合うんだって。
「これ以上どう疲れるつもりだい?」って、思わず聞いてしまうような運動量や、やらなきゃならないことがてんこもりだったでしょ?ましてや、トップ娘役をやっていれば大変だよね。

だから、これから真彩ちゃんがこちらの世界に来て勉強するのは、それこそ大先輩がおっしゃった「ちゃんと怠けなさい」っていうことなのかもしれないですね。がんばってね!これからがとても楽しみです。

[SHEAD]担当者からひとこと[/SHEAD]ミュージカル好きで幼い頃から石川さんの舞台をご覧になっていたということで、インタビュー前からとても楽しみにしていらした真彩さん。
石川さんがご出演する「ジェイミー」のポスターをイメージし、青いシャツに赤いハイヒールのイヤリングでいらっしゃいました。
ご自身のノートに石川さんについて調べたことや聞きたいことをメモしてからインタビューに臨まれる姿は本物のライター顔負け…。何事にも全力な真彩さんらしい姿でした。
また、歌が達者なお二人はインタビュー中に思わず歌い出してしまうことも…(笑)。とても楽しいインタビューでした。
インタビュー前編はこちら