映画「キネマの神様」(8月6日公開)の公開記念舞台あいさつが8月5日に都内劇場にて行われ、菅田将暉、野田洋次郎、北川景子、宮本信子、山田洋次監督が登壇した。同作は、映画の神様を信じ続けた男の人生とともに紡がれる、愛と友情と家族の物語。原田マハ原作による松竹映画100周年を記念した作品で原作に山田監督自身の経験をオリジナル要素として加え、映画化が実現した。故・志村けんさんの遺志を継いだ沢田研二と菅田がW主演を務める。沢田が演じるゴウの若き日を演じた菅田は「やっと公開になるということでうれしいです」とコメントし、映画公開への喜びを伝えた。

登場した菅田は「本日は、映画館に足を運んでいただいてありがとうございます。いつも言っている言葉なのに、ちょっと違う意味があるなと感じますね」とあいさつ。

沢田演じるギャンブル漬けで借金まみれのゴウに手を焼きながらも、辛抱強く支える妻の淑子を演じた宮本は「今日を迎えられて本当にうれしい」、銀幕女優の園子を演じた北川は「撮影が始まってからいろいろなことがありましたが、クルーの皆さんと力を合わせた作品が完成して、こうしてお客さんに見ていただけてとてもうれしい」とコメントした。

また、映写技師のテラシンを演じた野田は「今日(集まっているお客さん)は既にご覧になった方ですもんね。初めてこの映画を目撃した皆さんの前で話せるということで、緊張もあり喜ばしくもあります」、山田監督は「2020年1月後半にクランクインして、思いもがけないコロナで何度も中断し苦労しながら1年半かかって出来上がりました。ようやく今日、コロナは全然解決していませんが、封切りの日を迎えられて感慨無量です」とあいさつした。

■「今回の映画も、妻がいたから作れたのだと思う」

上映後の舞台あいさつとのことで、作品への感想を尋ねられた客席からは大きな拍手が。それに対し菅田は、「50%ではありますが、お客さんがいる状態での舞台あいさつは本当に貴重な時間なので、感慨深いですね」とコメント。

上映を後方の席から見ていたという山田監督は、「出来上がったばかりの時は後悔ばかりなのですが、完成してから月日が経っているからか、今日大勢のお客さんと一緒に見ると結構面白く見れました」と話し、「さっき僕たちに『結構面白かったよ』って言ってましたもんね」と菅田からも明かされていた。

司会者から「沢田さん演じるゴウから宮本さん演じる淑子へのメッセージは、監督から亡き奥さまへのラブレターなのでは?」と問われた山田監督は、「まさにそうです、とはなかなか言いにくいですが、そういう気持ちは当然あります」と回答。

また、「映画監督という仕事は、特に奥さんに迷惑をかけるものなのでしょうか?」と聞かれ「どんな職業の人にとっても、どんな夫婦にとってもあることだと思う」と言いつつも、「僕個人に限れば、表面に妻の名前は出ないけど、僕の仕事の陰には必ず妻がいた。今度の映画も彼女がいたから作れたんだろうなと思う」と語り、亡き妻への思いを明かした。

■「東京物語」のオマージュに北川『冷や汗でした』

北川は、同作で銀幕女優の園子を演じたことについて「私は直接その時代を知らないので、当時の作品や女優さんのヘアメイクの写真集などを拝見して研究したのですが、なんだかずっと雲を掴むようで…。その中で助けていただいたのは、監督の撮影所時代のお話でした。その話を聞きながら、ピースを一つずつ集めた感じですね」と役柄を研究するうえでのエピソードを明かした。

また、「東京物語」を再演したシーンについては「世界中にファンがいる映画のオマージュなので、冷や汗でした(笑)」とコメント。「原節子さんを超えることはできないけれど、なるべくお芝居は近づけたい。だけど、真似するだけではなく自分らしい部分もどこかで残したい。そうやって頭ではいろいろ考えるけれど、どうしたらいいのか…とパニックになりながら終えた感じでした」と話した。

山田監督は「カメラポジションもエキストラの配置も北川さんの服もそのまま再現し、カメラのレンズをのぞいてみたら、『小津安二郎が近くにいる!』とゾクっとしました。小津さんにお会いしたことはありませんが、ちょっと会えたような気がしました」と撮影時の感動を告白した。

■「僕からできるこの映画への僕なりの貢献をしたかった」

同作で、俳優としてはもちろん、主題歌も担当した野田。「山田組を緊張しながらも楽しんでいましたが、自分が体験していることがどこか絵空事のようで…。その中でもテラシンとゴウと淑子ちゃんと園子さんと過ごした空気や匂い、感覚をやっぱり僕は音楽として残しておきたいと思ったんです。なので、台本の横にメモを書き足して過ごしていました」と当時を振り返った。

さらに、「その後コロナで撮影がストップし、『あんなに素敵な思い出がなかったことにされてしまうのかな』と恐怖心を抱きながら自粛期間を過ごしました。だったら、この間に音楽にするしかないと、誰に言われるでもなくデモを作ってプロデューサーにお送りしました。山田監督にも、『僕からの手紙と思ってよかったら』と伝えてもらい、菅田くんにも送ったんですよね。主題歌どうこう以前に、僕からできるこの映画への僕なりの貢献をしたかったことが、曲を作ったきっかけでした」と明かした。

司会から、曲を受け取り、そして自分が歌うとなった時はどうだったかと問われた菅田は、「最初は自分が歌うとか関係なく、感動しましたね。組全体、世の中全体が動けない中で、なんとか動き出そうと気持ちにさせてもらいました。曲を聞くと、確実にあの現場の空気が思い出されて。自分が出ている映画のエンディングで歌うのは抵抗感があったのですが、すごく自然な流れで気づいたらレコーディングが終わっていました」

宮本も「本当にピュアで、すがすがしい印象を受けました。淑子ちゃんに対するラブソングだと感じましたね」と、北川も「エンディングはいつも、役ではなく自分に戻って見ることが多いですが、あの曲を聞くとまた自分が園子に戻ったような感じがしました」と曲の感想を語った。

最後に山田監督が「少しでも早くこの状況が回復してほしいという必死の思いの中での興行。ぜひ映画館へ足を運び、スクリーンでこの映画を味わってもらいたい」、菅田が「皆さんのおかげでやっと公開できました」と感謝を伝えつつ、「映画は公開するとお客さんのものという感覚があるので、公開までにどれだけ携われるかが毎回楽しみでもあります。そういう意味だと今回は公開まで最長の期間一緒にいられた、十分愛でる時間をいただけたと思うと感謝だなと思います」とコメントし、イベントを締めくくった。