モーニング娘。やBerryz工房、℃-uteなど、数々のアイドルグル―プを輩出してきたハロー!プロジェクト、通称“ハロプロ”。その卒業メンバーを中心に構成される「M-line Club(以下M-line)」のコンサートが、ファンの間で大きな話題を呼んでいる。今年1月に幕を開けた全国ツアーは、チケット完売公演が続出し追加公演が行われるなど、現役メンバーのコンサートに引けを取らない人気ぶりに。SNSでは、「M-line special豪華すぎん?目が足りん」「各グループのレジェンド級が再集結して、これが本物のアベンジャーズか…ってなった」など絶賛の声が上がった。そして、アイドルのセカンドキャリアに新しい道筋を付けるこのM-lineの活動に注目が集まっている。

■レジェンド級OGたちによる夢のステージにファン熱狂

そもそも、「ハロプロは知っているが、“M-line”は初めて聞いた」という人も多いだろう。前述した通り、ハロー!プロジェクトを卒業したメンバーの公式ファンクラブであり、中澤裕子や矢口真里、辻希美らモーニング娘。OGを始め、全22名(2021年8月時点)が所属している。そして、高橋愛、道重さゆみ、田中れいな、夏焼雅、鈴木愛理、工藤遥、宮本佳林ら、かつてはエースとしてグループを牽引したレジェンド級OGたちによる、夢のステージを堪能できると好評なのが、現在開催中のツアー「M-line Special 2021〜Make a Wish!〜」だ。同ツアーでは、各公演ごとに、ゲストを含め4〜7名ほどが登場。現役メンバーよりも遥かに少ない人数で、中野サンプラザやNHK大阪ホールといった現役と同じキャパシティを埋めていることからも、OGたちの偉大さや人気の高さがうかがえる。

では、一体なぜ、「M-line」のコンサートがそこまでファンを熱くさせるのか。それは、ハロプロの看板を背負ってきたエースたちによる磨き抜かれたパフォーマンス、卒業後の活動を経てさらに進化したステージ表現、現役時代には見られなかったメンバー同士のケミストリー、ファンの懐古心をくすぐる歴史再現を、一挙に目撃できることが大きな理由だろう。ハロプロ屈指の名曲や各メンバーの最新曲を披露するだけでなく、道重・田中によるモーニング娘。6期コンビや夏焼・鈴木によるBuono!のステージ、さらには、田中・夏焼・鈴木からなるユニット・あぁ!の17年ぶりの復活など、新しさとノスタルジーが共存した“エモすぎる”その内容に、ファンたちは熱狂しているのだ。

■卒業した女性アイドルの約40%は芸能以外の道に

特に女性アイドルは、若さゆえのフレッシュなエネルギーやキラキラ感を求められるものであり、“アイドルには賞味期限がある”と揶揄されることも少なくない。また、アイドル活動を終えた後、俳優やYouTuber、アパレルブランドのディレクターといったセカンドキャリアで成功する例もあるが、さまざまな理由から芸能界を離れ、一般社会で生活している元アイドルも多い。実際に、2020年4月に日経エンタテインメント!が発表した調査記事によると、女性アイドルの場合は、20歳〜22歳で卒業するメンバーが多く、56.5%が芸能活動の継続(意向も含む)を、40.7%が芸能以外の道を選択。一方で、男性アイドルの場合は、芸能活動の継続率が72.2%となり、これには女性アイドルと比べて卒業年齢が高いことが関係していると考えられる。

■M-lineが示したアイドルのセカンドキャリアの可能性と、新しいファンクラブのカタチ

そんな、アイドルビジネスにおいて、卒業メンバーの受け皿を作り、現役でなくても活躍できる場を用意するというM-lineの仕組みは、業界内では特異なものと言えるだろう。例えばAKB48は、メンバーの所属事務所がバラバラなことで知られているが、これは個人として活動の幅を広げ、グループ卒業後も理想の芸能活動を行えるというメリットがある。しかし、大手事務所に移籍できるのは人気メンバーに限った話であり、全員に確約されたものではない。また、乃木坂46をはじめとした坂道グループは、現役時と同じ事務所に卒業後もそのまま在籍するため、卒業メンバーの受け皿が用意されているという点ではM-lineと同じだが、活動内容やファンクラブ設立は個々のメンバーによる。そのため、個人ではなく集団でファンクラブを形成していること、卒業メンバーへ一律に活躍の場を提供していることから、M-lineの方がより実効性のある仕組みと言えるかもしれない。

メンバーの卒業と加入による新陳代謝を繰り返し、今やモーニング娘。には、アイドルグループとしては異例の20年以上にもおよぶ歴史と伝統がある。元プロデューサー・つんく♂イズムを受け継ぎ、積み重ねてきた育成力、アイドルビジネスのノウハウ、何よりもメンバーとファン、事務所とファンとの間に強い信頼関係があるからこそ実現した、新しいファンクラブの形だろう。

■「アイドル賞味期限」問題から解き放つ、結婚・卒業後にもファンとの絆を紡ぐステージ

昨今では、新潟を拠点に活動するアイドルグループ・Negiccoのメンバー全員や、でんぱ組.incの古川未鈴が結婚を発表し、結婚後もそのまま活動を続けるなど、アイドルの在り方やファンの価値観も多様化し始めている。また、AKB48の柏木由紀が昨年、自身の29歳の誕生日に「女性アイドルの賞味期限という概念がいつかなくなりますように」とツイートしたことも話題になった。30歳を迎えた今も変わらず、アイドルとして活躍の幅を広げる彼女の姿は、後輩たちに勇気と希望を与えているに違いない。

そして、アイドルとしての活動の延長線上に新たな価値を生み出せる、M-lineのような取り組みが広まれば、アイドルのセカンドキャリアはより自由でポジティブなものになるはずだ。今後も、現役で活躍中のメンバーがハロプロを卒業後M-lineに加入することで、さらに人気と勢いが増せば、ハロー!プロジェクトに続くブランド化に成功し、アイドル卒業後のセカンドキャリアとして芸能活動を持続可能にするモデルケースとなりえるかもしれない。今後もM-lineの展開に注目していきたい。