2019年に東京・日本武道館で行われた「オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー」が即完し、今年1月に行われた配信イベント「佐久間宣行のオールナイトニッポン0 リスナー小感謝祭2021 〜Believe〜」のチケット売り上げが17,000枚を超えたほか、アリーナ会場で実施の事例もあるなどラジオイベントが人気拡大中だ。なぜここまで人気なのか、理由を探るべく、ニッポン放送の「オールナイトニッポン」プロデューサーである冨山雄一氏、イベント事業を手掛ける石井玄氏にインタビュー。リスナーの当事者意識の強さや、“閉じられた場”だからこその面白さもあり、盛り上がりを見せているようだ。

■「ありえないことだった」、オードリー武道館イベント即完により、新たなラジオイベントの姿が確立

――過去にニッポン放送さんはどんなイベントやってきたでしょうか。

冨山:古いところでは、1971年にピンク・フロイドが出た「箱根アフロディーテ」という海外アーティストを招聘した日本初の野外ロック・フェスティバルがありました。1980年代も球場でライブイベントをやったり、1990年以降は「伊集院光のOh!デカナイト」の番組イベントを東京ドームでやったり、「ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポン」の番組イベントを武道館でやったりとか単発でイベントをやっていました。2010年代になると、「オールライブニッポン」という、「オールナイトニッポン」に関連するアーティストたちにご出演いただくライブイベントを毎年やっていました。

ニッポン放送として、複数のパーソナリティやアーティストが出るオムニバス形式のイベントをやっていたんですけど、2014年の東京国際フォーラムホールAでやったオードリーの番組5周年イベント、2015年にはじまった横浜アリーナでの岡村隆史さんの「オールナイトニッポン歌謡祭」が上手くいって、「オムニバス形式よりも、番組個別のイベントの方が熱量があるな」とリスナー向けの番組イベントの方に舵を切る流れができました。オードリーの番組10周年全国ツアーとか、佐久間(宣行)さんやCreepy Nutsの番組イベントとか、オールナイトニッポンの番組イベントが活性化したのは本当にここ2〜3年ぐらいの話です。

石井:それまでは、社内の中でも「大型のイベントはやっぱりアーティストがやるものだ」っていうイメージがあったようです。でも、オードリーの番組5周年イベントや「岡村歌謡祭」のチケットが売れて、「お笑いの番組イベントでもできるんだ」という成功例になりました。さらに2019年に、オードリーの10周年ツアーで武道館が発売後即完売したことも大きかったですね。出演者発表したのがオードリーとビトタケシさんとバーモント秀樹さんだけなのに即完で(笑)。それまでの常識から言うとありえないことだったので。

冨山:やっぱり岡村さんの歌謡祭がずっと1万2000枚完売し続けているのと、オードリーの日本武道館公演が映画館での配信も含めて2万2000枚売れたっていうのは、数字的なインパクトがすごくありました。それまではあまり芸人さんでアリーナクラスのイベントをする感覚はあまりなかったと思うのですが、「ラジオのイベントってすごい人が集まるんだ」という空気感が作られていった感じです。

■「10代のもの」から「社会人層」へ、リスナー層の変化がイベント成功への追い風に

――昔と比べて、ラジオのイベント自体の集客がしやすくなっているのでしょうか。環境面等での変化があればお聞かせください。

冨山:やはりスマホでラジオを聴くことができるradikoの影響が大きいと思います。特に1週間以内なら番組をいつでも聴くことができるタイムフリー機能で、生放送だけでなく相対的にリスナーの数が劇的に増えた気がします。昔は「オールナイトニッポン」の番組イベントをやっても中々、客席が埋まらなかったこともあったりしたので、やはりタイムフリーも含めて、番組がより盛り上がるようになったことがあると思います。

石井:「オールナイトニッポン」といえば昔は「若者向け、10代向け」だったのが、タイムフリーのおかげで大人も聴くようになっています。学生だけを相手にしていたら、1万席を埋めるのはなかなか難しいと思うので、やっぱり大人で社会人のリスナーが増えたことも大きいんじゃないかなと。あとは続いてる番組が増えたということですね。少し前までは1年だけで終わったりした番組も少なくかったですが、今は3年とか5年とか、10年以上続いている番組もあります。長く続いていれば続いているほど、リスナーとしても「イベントに行こう」と思うのは当然の流れですので。

■ リスナーは一緒に番組を作る“仲間”、当事者意識から生まれる熱量が参加型イベントと好相性

――ラジオリスナーは、イベントに行ったりグッズを買ったりと、かなり熱量が高いと感じます。ラジオとイベントの相性が良い理由をお聞かせください。

石井:番組をずっと聴いているから、「ストーリーが見える」「番組を応援したい」ということはどこかにあると思います。三四郎も1部から2部になっての、4月のイベントでしたし、1月の佐久間さんの配信イベントも、「イベントが中止になって、急遽配信イベントやるから助けてほしい」っていうような流れがあって、多くのリスナーに見ていただきました。佐久間さんの配信イベントはものすごくたくさんの方に見ていただいたのですが、常識的に考えたら普通のサラリーマンだった佐久間さんがそこまでたくさんの人に見てもらえるわけがないので(笑)。やっぱりリスナーの力をすごく感じましたよね。やっぱり「応援するサポーター」という気持ちは、すごくリスナーから感じますね。好きな番組を終わらせたくないという思いは、他の媒体のファンよりも強い気がしますし、それが「応援しよう」ということにつながっているのではないでしょうか。

冨山:テレビの方が絶対に見てる人数が多いのに、SNSではラジオのハッシュタグがよくトレンド上位になっています。テレビの視聴者は100万人以上いるかもしれませんが、ラジオリスナーはたとえ数万人であっても、熱量を持って当事者として番組に参加してくれる人は多いですね。なので、イベントやグッズなどに対しても、非常に親和性が高い気がします。

石井:古くはハガキやFAX、今はメールで参加してくれるリスナーをはじめとして、「番組を応援してるし、一緒に番組を作っている」という当事者意識が強いので当然、イベントにも参加してくれるんだと思います。こういったことは、昔からいろんなラジオ番組がやってきた作り方なんですが、今はテレビやYouTubeも、同じような作り方をしてるものが増えてきたなっていう。佐久間さんの「あちこちオードリー」もラジオ的な良さをうまく取り入れながら、テレビ的な面白さも兼ね備えて、すごい人気ですよね。

■“密室”により一層輝くパーソナリティーの面白さ

――最近ではコロナの影響もあり、なかなかリアルイベントができない状況かと思いますが、改めて配信イベントの可能性についてお聞かせください。

石井:佐久間さんの配信が成功したことで、「配信イベントってこんなにうまくいくんだ」っていうニッポン放送にとっては、初めての経験となりました。

冨山:「オールナイトニッポン0(ZERO)」や「オールナイトニッポンX(クロス)」では、ミクチャやsmash.といった動画配信アプリでスタジオの様子を生配信しているので、もしかしたら映像的な新鮮さはそこまでないかも知れません。ただ、「あちこちオードリー」が参考になるのですが、SNSに拡散禁止で見てる人だけしか知り得ないというか、クローズドな場に参加しているという形が密室というか刺さるのかなって感じますね。

石井:リアルイベントもそうですけど、有料配信イベントのいいところですよね。番組を知らない人は見ないし、聴かないっていう。「チケットを買う」というのがフィルターになっていて、“敵”が見てないってのはありますね。だからパーソナリティも安心していろんな話ができるんじゃないかなと。

――9月4日に行われる配信イベント「星野源のオールナイトニッポン リスナー大感謝パーティー」も話題ですね。

石井:配信イベントでは、「星野ブロードウェイ」というラジオドラマ企画をやるんですが、星野さんと以外の出演者は全員番組スタッフです。ゲストの佐久間さんも一応スタッフですし(笑)
それが楽しいって思えるのはリスナーである証拠ですし、「これ、知らない人は分からないよね」と思いながら見られるってすごい楽しいんじゃないですかね。やっぱり内輪であることがラジオの良いところですし、有料のイベントでは、いつもよりさらに濃いリスナーに届ける気持ちが強くなる気がします。

冨山:星野さんの配信イベントはグッズも番組の色が濃く出てますよね(笑)。(番組ディレクターの)野上のアクリルスタンドって、全く知らない人だったら買わないじゃないですか。でも最初に用意してたものは、即完していて、いろんな人から買えなかったと連絡をもらいました。それが成立する関係性というか、そういったノリをわかって頂けるのってすごくありがたいことだなと思います。