10/22(金)配信のシングル「風来」はドラマ「顔だけ先生」(フジテレビほか)の主題歌。いきものがかりの水野良樹との共作によって作り上げられた、とても華やかなストリングスアレンジとキャッチ―なメロディーが印象的なミドルバラードだ。

「水野さんが主宰されているHIROBAというプロジェクトのOTOGIBANASHIという企画内の『透明稼業』っていう曲で僕が歌唱で参加させていただいたんです。そのつながりもあって水野さんと共作することになりました。それで、『顔だけ先生』のテーマや話を受けて、僕が先に歌詞を書いて水野さんがサビを付けてくださって、やりとりをしていきました。いきものがかりさんは小学校の頃から聴いてきたグループですし、合唱の曲として歌ったことも何回かあって。そういう方と一緒にやるのはすごくありがたかったです。
その後、ドラマの台本も読んで、すごく面白くて。神尾楓珠さん演じる遠藤先生はすごく不思議な人で。勤めている高校でうまくいかないこともある中で飄々としてる印象を受けましたし、わがままにも思えるんですけど、純粋で周りの人たちに影響を与えて高校の空気を変えていく。今までのタイアップ曲は、主人公の気持ちに寄り添ったり、物語を第三者の視点で見て思ったことを書くことが多かったんですけど、今回は周りの人が遠藤先生に惹かれていく様を歌詞に書きました。遠藤先生の好きなところをやるっていうところは僕と通じるのかなと思いました。でも僕は結構周りが気になったりするので、周りを気にしない遠藤先生のことは『強えー!』って思いました(笑)」

「風来」はこれまでの楽曲の中でも随一の華やかさを持つポップソングだが、崎山ならではの“違和感”も絶妙に入り混じっている。

「水野さんのソングライティングはものすごくて。普遍性の中に水野さん節があって。『あ、ここで止まるんだ』とか『ここで繰り返すんだ』って思う和音進行があったり。やっぱりメロディーを強く意識されてるのかなと思いました。今回僕はギターも弾いたんですけど、サビの水野さんのコード進行とかも自分にはないものなのですごく勉強になりました。僕は違和感が入っているものがすごく好きなので、華やかなアレンジの中でもノイズを入れて欲しいってリクエストして。よく聴くと、『ギー』っていう音が入っているんです。あと、サビで盛り上がってくるところのドラムのフィルも変な感じで。自分の声にも不思議さがあったりすると思うんですけど、そういう違和感にはこだわりました」

これまでもさまざまなミュージシャンと一緒に楽曲を作ってきたが、その度に刺激を受けてきたそう。

「音楽の捉え方や向き合い方が全然違うので毎回すごく勉強になります。自分一人で作る曲は、『あまり華やかにならないように』とか、バランスを結構意識してるのですが、他の方と一緒にやる曲はもっと自由なんです。『風来』も自分一人だったらこういう方向性は違うかなって思ってたかもしれないですけど、水野さんがいたからこそ自然と味が出ました。

他にも、君島(青空)さんとか長谷川(白紙)さんとか諭吉(佳作/men)さんとかリーガルリリーさんとか、僕がリスナーとしてめちゃくちゃファンの方たちと一緒に曲を作ってきましたが、やっぱり一緒にやるからこそできたアレンジだって毎回思います。今はそのコラボレーションによる影響が土壌みたいにたまっていってる状態。その影響が滑らかに出てくるのがいいと思うのですが、まだその段階には至ってないのかもしれません。だから今後、自分が意識せずとも『もしかしてこれは…』というようなものが出てくる気もしています」

今年1月にアルバム『find fuse in youth』でメジャーデビュー。以降、「風来」を含めて5作ものタイアップ曲をリリースするというスピード感。

「ものすごくありがたいですし、すごいことだと思います。やっぱりその作品を思い出したときに、一緒に曲も思い浮かぶようなものになっていたらいいなって思います。自分も好きな映画作品のことを曲と一緒に思い出すこともあるので。その作品の一部として記憶に残るかもしれないって思うと何とも言えないありがたさがあります。『嘘じゃない』という曲がアニメの『僕のヒーローアカデミア』第5期(2クール目)のエンディングテーマだったんですけど、第5期が終わった後にTwitterに『アニメを思い出すために聴いてる』という海外の方の書き込みがあって。『自分もその気持ちわかります』って思いました(笑)」 


小学6年生から曲作りを始めた﨑山だが、制作スペースについて聞いてみた。

「中学校のときはもうめちゃくちゃ曲を作るペースが早くて、ワーッって作って『完成!』みたいな感じでした。スーパーマリオでいうとスターの状態というか(笑)。最近は考え過ぎちゃうことが多いんですよね。
面白い音楽があり過ぎて。すごいミュージシャンが多過ぎるんです(笑)。いろんな音楽に興味があるし。でも考え過ぎると、『あっ、違う』と思うことが多くなってきたので、ギターを弾いててするっと出てくるものを形にする書き方が合ってるのかなって。
その出てきたものを補強して作りこんでいくのが個人的にはめちゃくちゃ難しいんです。だからもっと音楽の勉強がしたいんです。そういう知識を持っているミュージシャンの方はそこからの展開が滑らかなんですよ。

水野さんもそうだと思いますし、長谷川さんもヤバかったです。水野さんとの『透明稼業』は編曲が長谷川さんなんですけど、あの曲ってドラムのキックとスネアの音がすごく揺れている感じを受けるんですけど、動物の呼吸に合わせているそうなんです。『そういうことをするのが今生きてる中での楽しみなんです』みたいなこともおっしゃっていて。『うわ、やっべー!』って思いました(笑)。音楽のことを理論的にも分かってらっしゃるし、だからやっぱり僕もしっかり勉強したいですね」

曲作りの現在地についてもこう話を続ける。

「最近思ったのは、自然物や風景にインスピレーションを受けることも多いので、それと自分の土壌にある音楽から生まれる曲や最近刺激を受けて作ったものとか、全部がどんどんくっ付いていけばいいなって。文章からインスピレーションを受けることも多いです。好きな作家さんの本とか。中村文則さんの本に衝撃を受けて文学が好きになったんです。母親が読んでて『これちょっと難しいと思う』と言われてイラッとして読んでみたら(笑)、『すごい!』って思って。
あと、やっぱり引き続き驚いてほしいという気持ちも強いです。割と飽き性なので、『この流れで突然変なのがきたら面白いのに』って思うようなこともどんどんやりたいですね。振り幅のメーターがスカウターが壊れてるくらいのアルバムが作りたくて。その中に口ずさんでもらえたり優しい曲をうまく盛り込めるのが理想です」

ミュージシャンであると同時に、熱心な音楽ファンでもある彼は、音楽を聴いているとあっという間に時間が過ぎるという。

「休みの日に音楽聴いているとすぐ1日が終わりますね。たまにこの曲ってどうやって作ってるのかなって振り返ってみたり。でもあまり器用じゃないので、そこで確認したことを自分の曲にまだうまく取り入れられてなくて。だからこそ今の自分の糧になっているのは昔聴いていた音楽で。混乱したときとかも、昔聴いていた曲を聴くと落ち着きます。あとは好きな本を読んだり。ただ、本を読んでるときは音楽が近過ぎちゃうとそっちに気を取られちゃうので、アロマ焚いてるみたいな感じで(笑)遠くで音楽を流したりします」

取材・文=小松香里