エンタメ好きとしてチェックしておきたい話題の本やマンガ・アニメ情報を「ダ・ヴィンチニュース」の協力を得てお届け。今回取り上げるのは、『機動戦士ガンダム バンディエラ』。『機動戦士ガンダム』本編では描かれていない一年戦争の一部が描かれ、ガンダムファンにはおなじみのキャラクターやモビルスーツも登場する。

宇宙世紀0079、ジオン公国と地球連邦の戦争「一年戦争」でジオンの英雄の一人が“左利きのユーリー・コーベル”だ。

彼の数奇な運命を描いた作品が『機動戦士ガンダム バンディエラ』(加納梨衣:作、矢立肇、富野由悠季:原作/小学館)である。

ユーリーは、地球と各コロニーのチームが戦うサッカーリーグのスーパースターだった。そんな彼が、戦いの場をピッチから戦場に変え、巨大人型兵器・モビルスーツ(以下、MS)に乗って戦うことに。

多くの若者たちが翻弄された「一年戦争」、本作の登場人物たちは、生きのびることはできるか――。

■“左利き”のMSを駆る元サッカー選手、好敵手と戦場で再会
宇宙世紀でも、サッカーは世界的な人気スポーツだった。各コロニーと地球連邦政府のチームは、「ギャラクシーリーグ」で、サイド3のサッカー選手・ユーリー・コーベルは、その“左足”でスペースノイドだけでなく、地球のファンたちも魅了するスター選手だった。だが一年戦争により、彼の運命は大きく変わってしまう。彼以外のチームメイトが皆死亡してしまうのだ。

失意のユーリーに、軍はMSに乗ることを強いる。彼の部隊には報道クルーが常駐し、国内では彼の戦う映像が流された。悲劇のヒーローの活躍で戦意を高揚させるのが目的だった。

皮肉なことに、ユーリーはMSの操縦も天才的で、装備が左右逆な彼の愛機“左利きのザク”を戦場で止められる者はいなかった。

敵を墜とし続けるユーリーの頭にあるのは、「何も考えず、期待に応え続けなければ」という思いのみ。そんな彼を変えたのが、ある敵パイロットとの邂逅である。

彼の部隊は、地球連邦の補給物資の保管所で戦闘になった。そこで一機のジムが“左利きのザク”にサッカーのスライディングをくらわせる。そのジムを操縦するシモン・バラは、以前、ユーリーとピッチで戦った、地球連邦側の元サッカー選手だった。

一対一のつばぜり合いの中で、ユーリーはサッカーの試合で相まみえたディフェンダーのことを思い出し、笑みを浮かべていた。2人の決着がつかないうちに、地球連邦の守備隊は撤退。戦場での彼らの初試合はドロー決着に。

そのころ地球連邦が「オデッサ作戦」で勝利を収め、一年戦争は転換期を迎えるのだった。

■オデッサの敗軍の将、ガンダムの生みの親も登場。悩めるジオンのバンディエラの運命は…
シモンとユーリーは初対決のあと、各々の運命に影響を及ぼす出会いを果たす。ユーリーはオデッサから宇宙へ戻っていたマ・クベに呼ばれた。文化を愛する彼は「サッカーという文化を継承している君は、自身が後世へ続く文化になりえる。体を大切に」と告げる。ユーリーは彼に言われたことの意味を考え、悩む。

そしてシモンはサイド6で要人の監視業務につく。その人物こそガンダムの開発者であるテム・レイだった。彼と交流をもち、ある新型MSのデータを手に入れる。

なお作品名のバンディエラとは、イタリア語で「旗」の意味。サッカーでは同一チームに所属し続ける選手への敬称で、イタリア・ASローマのフランチェスコ・トッティや、川崎フロンターレの中村憲剛選手がそう呼ばれ、チームへの忠誠心をリスペクトされていた。

ユーリーはジオンへ忠誠を誓い命がけのプレーを続ける、文字通り「旗」だ。彼の部隊は地球へ降下し、北米・キャリフォルニアベースで軍事パレードに参加。ユーリーが「旗」として陣頭に立つその模様は、ジオン国内に向けて大々的に放送された。そのプロパガンダ映像を見たシモンは、闘志を燃やす。元サッカー選手たちに二度目の対決の刻(とき)が迫る。

本作はアニメ『機動戦士ガンダム』本編で描かれていない一年戦争の一部だ。ガンダムファンにはおなじみのキャラクターやMSも登場し、「ニュータイプ」についても描かれる。ますます盛り上がりを見せる『機動戦士ガンダム バンディエラ』から目が離せない。

文=古林恭

左利きのサッカー選手だったユーリーが、ジオン軍の国威高揚のプロパガンダとして左利きのザクで戦う姿を描く『機動戦士ガンダム バンディエラ』は現在、最新刊の5巻が発売中。一年戦争でジオンの英雄の一人となった“バンディエラ”に注目だ。